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モノトーンでのときめき

ときめかなくなって久しいことに気づいた私は、ときめきの探検を始める。

サルビア・アズレア(Salvia azurea)の花

2009-09-23 09:27:09 | セージ&サルビア
(写真)サルビア・アズレアの花


「サルビア・アズレア」は、
アメリカ南東部が原産で、草原・道端などに咲いているという。この地域は“プレーリー”とも呼ばれる大草原であり、そこに咲くので「プレーリーセージ(Prairie sage)」とも呼ばれている。

丈は、150~200cm程度まで伸び、葉が細長く小さいので筋肉質のスラッとしたスタイルをしている。大草原でブッシュを形成するとあらゆる隙間から茎を伸ばす自在な成長をし、茎は柔らかい記憶合金の針金のように過去の履歴を残しブッシュを形作る。

その枝の先に花序を延ばし、アズレア色といわれる空色をした素晴らしい花をつける。

乾燥した冷涼な空気感でのアズレア色の花は、人の足跡の無いアメリカ中部の原野“プレーリー”にいざなわれ、何をすることもなく、何を考えることもなく無の時間に浸れそうだ。
こんな時間に出会うと実に気持ちが良い。

このアズレア色は、美しいブルーの代名詞でもあり、イタリア代表サッカーチームのユニフォームの色でもあり、この代表チームの愛称はAzzurri(アズーリ)とも呼ばれている。

これほどのサルビアなので、人気になっているポピュラーなサルビアのはずだが、原産地アメリカでも意外なほど情報量が少なく、また適切なものも数少ない。
ということは、まだポピュラーではないということなのだろうか?

推定:サルビア・アズレア(Salvia azurea)の発見者
「サルビア・アズレア」の初期の発見者は良くわからない。
基本種の学名は、Salvia azurea Michx. ex Lam(1805)であり、1805年に登録されているのでこの年代の前に発見されていることは間違いない。

また、命名者には“Michx”が記載されていて、フランスの植物学者・プラントハンターのミッショー(Michaux, André 1746-1803)をさす。
ミッショーは、1785年11月にニューヨクに到着し1796年にフランスに戻るためにアメリカを去った。この間に、ミシシッピー川流域を初めとしたプレーリー地帯を探索している。
ミッショーがアズレア・ブルーセージを採取したという記録にはぶつかっていないが、彼が採取したという可能性は否定できない。

※ミッショーに興味があれば下記を参考
その57:マリー・アントワネットのプラントハンター:アンドレ・ミッショー①
その61:マリー・アントワネットのプラントハンター:アンドレ・ミッショー②
その62:マリー・アントワネットのプラントハンター:アンドレ・ミッショー③
その63:マリー・アントワネットのプラントハンター:アンドレ・ミッショー④
その64:マリー・アントワネットのプラントハンター:アンドレ・ミッショー⑤Final

その67:マッソンとミッショー 二人の関係 ①マッソン編
その68:マッソンとミッショー 二人の関係 ②ミッショーと二人の関係

(写真)サルビア・アズレアの葉と花
        

サルビア・アズレア(Salvia azurea)
・ シソ科アキギリ属の耐寒性がある多年草。
・ 基本種の学名は、Salvia azurea Michx. ex Lam(1805)。英名はアズレア・ブルーセージ(azure blue sage)、別名は、スカイブルーセイジ(Sky blue sage)、ブルーセージ(Blue sage)。
・ アズレアには2種類があり、この花はどうもPrairie sage(プレーリーセージ)と呼ばれるもので、学名がSalvia azurea Michx. ex Lam. var. grandiflora Benth. (1848)のようだ。
・ 原産地は、アメリカ合衆国、ミズリー州などの中央部、ルイジアナ州などの南東部とテキサス。プレーリーと呼ばれる大草原はこの広大な地域にある。
・ 摘心をすると開花期は遅れ、9月~10月になり青い花を多数つける。
・ 草丈は1.5m。枝は柔らかく丈夫で風などにゆれ癖がつき直立しない。
・ 2回ほど摘心が必要。1回だけにしたら2mぐらいになり強風で枝は東西に奔走する。

命名者
「Michx」:Michaux, André 1746-1803、フランスの植物学者、プラントハンター
「Lam.」:Lamarck, Jean Baptiste Antoine Pierre de Monnet de 1744-1829、フランスの植物学者ラマルク
「Benth.」:Bentham, George 1800-1884、イギリスの植物学者ベンサム

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サルビア・レウカンサ(Salvia leucantha)の花

2009-09-22 07:02:48 | セージ&サルビア
(写真)赤紫の萼と白い花が美しいサルビア・レウカンサ


メキシコ原産で秋を代表するサルビア。
英名では、 「メキシカンブッシュセージ(Mexican Bush Sage)」と呼ばれるが、日本でも普及していて結構見かけるようになって来た。

「サルビア・レウカンサ」には、4種ほど有名な品種がある。区別をわかりやすくするために学名でかくと、
1.基本種でこれから紹介する「Salvia leucantha」
2.萼・花とも濃い赤紫色の「Salvia leucantha 'Midnight'」
3.この「サルビア・レウカンサ‘ミッドナイト’」とパイナップルセージとも呼ばれる「サルビア・エレガンス」との交雑種である「Salvia 'Anthony Parker'」
4.1999年にサンタバーバラでKathiann Brownによって発見された新種「Salvia leucantha 'Santa Barbara'」

1-3までは育てているので花が咲いた順に紹介していくが、ないものは欲しいという心情があり、草丈が短い「S.レウカンサ‘サンタバーバラ’」はいずれ手に入れたい。


「サルビア・レウカンサ」は、草丈150㎝で幅100㎝の大株に育つので初秋からの花として見栄えがある。葉は濃い目の緑色で細長くこの葉も魅力的だ。

メキシコ原産のサルビアの中では、耐寒性もあるので関東以西では根元を腐葉土などでマルチングすると戸外でも育てることが出来る。

「サルビア・レウカンサ」の発見者
この植物を発見したのは、キュー植物園のデータでは、プリングル(Pringle, Cyrus Guernsey 1838-1911)が1900年10月にメキシコで発見したとなっているが、
ミズリー植物園のデータでは、1847年4月にメキシコでJosiah Gregg (1806 -1850)が発見している。
グレッグは、チェリーセージと呼ばれている「サルビア・グレッギー」などを発見したプラントハンターであり、メキシコから太平洋沿岸をとおりサンフランシスコまで探検をした西部開拓史を飾る人物でもある。

やはりグレッグが発見していたかと感心もしたが、1900年に発見したプリングルも面白い人物なので、下記に彼の紹介も掲載した。

(写真)サルビア・レウカンサの葉と花
        

サルビア・レウカンサ、(メキシカンブッシュセージ)
・シソ科アキギリ属の多年草。-5℃までの半耐寒性だが、霜が降りないところでは
 根元をマルチングすると戸外でも栽培できる。
・ 学名は、サルビア・レウカンサ(Salvia leucantha Cav.(1791))、種名のleucanthaは、“白い花の”からきている。
・ 英名は、メキシカンブッシュセージ(Mexican Bush Sage)。別名が紫水晶のような色合いからアメジストセージ(Amethyst sage)、花がビロード状の柔らかい毛で覆われているのでベルベットセージ(velvet sage)という素晴らしい名がある。
・ 原産地はメキシコ。
・ 開花期は9月から11月と秋の代表的なセージ。赤紫のビロードのような萼(がく)につつまれ白い花が次々と咲く。
・ 草丈100-150㎝ぐらい。8月までに2回ぐらい摘心で丈を詰めるとよい。
・ 花後は、株元で切り詰め腐葉土・ワラなどでマルチングし越冬させる。

学名の命名者 Cav. は、
18世紀スペインの植物学の権威 カバニレス(Cavanilles, Antonio José 1745 - 1804)
カバニレスは、メキシコからの新植物の栽培も行い、ダリアをヨーロッパで初めて開花させたことでも知られる。
1801年からは、マドリッド王立植物園の園長を彼が死亡する1804年まで務めた。
メキシコの宗主国スペインの代表的な植物学者カバニレスに献じられた植物は多い。

        

サルビア・レウカンサの発見者:プリングル
こんなアンビバレントな素晴らしいサルビアが発見されたのは、1900年10月と意外と遅い。
発見場所が、メキシコシティの真下にあるモレロス州の2000mを越えるテポトラン山中の崖というから発見が遅れた理由が何となく理解できる。

        
        (緑のマークがサルビア・レウカンサの新種が採取された場所)

限界を超えたその時に、発見されるべくしてそこで待っていたのだろう。
そして発見者は、限界を超えた男の一人であるプリングル(Pringle, Cyrus Guernsey 1838-1911)

プリングルは、アメリカの植物学者というよりは数多くの新種を採取したプラントハンターであり、メキシコ・アメリカ・カナダなどの植物相の探索と収集に力を入れ、特にメキシコの植物の採取とその標本の作成には35年をかけたという。

彼が収集した新種の数は1200以上もあり、プラントハンターとしても素晴らしい実績を残している。

しかしプリングルは、順調にボタニストとしての道を歩んだわけではない。
兄の死により、大学を中退し家業の農場経営に戻り、25歳で結婚したが、その直後に南北戦争(1861-1865)の兵役召集があったが、クエーカー教徒としてこれを拒否し牢に入り、過酷な待遇に歩けないほどに衰弱した。

リンカーン大統領の恩赦で病気治療のために出獄したが、健康が回復するのは彼が30歳の頃のようだ。

30歳半ば頃から好きな植物採集の道に入るようになり、1874年に最初の採取旅行をバーモント州のキャメル山脈で行い、バーモンド州中で集めた標本を1878年の第三回パリ万博で展示発表した。
プリングル40歳の時で、パリ万博のカタログを見たが、確かに小さくプリングルの名前が載っていた。

ここから第一線のプラントハンター兼植物学者プリングルの道を歩むことになるが、
若い時は決して順調な人生ではなく、回り道をしながら好きこそモノの始まりを生涯で達成した人でもある。

そして何よりも気に入ったのは、プリングルを評して
『 His species are beautiful 』
といわれたことだ。彼が見つけた「サルビア・レウカンサ」も確かに美しい。

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サルビア・スプレンデンス‘サングリア’の花

2009-08-04 08:46:54 | セージ&サルビア
(写真) サルビア・スプレンデンス‘サングリア’の花


「サルビア・スプレンデンス」には、流通で“サルビア”として販売されている一年草の燃えるような緋色の花色をした植物が代表的だが、パープル色の「サルビア・スプレンデンス‘ヘレンディロン’」など花色が豊富だ。
「サルビア・スプレンデンス」に関してはここを参照のこと。

「サルビア・サングリア」とも称されているこの花は、1855年に英国で創業され、いまでは世界的な育種会社に成長した『Thompson & Morgan(T&M)』が作出した園芸品種のようだ。

朱色の花とこの花を包むクリーム色をした顎(がく)とのバイカラーが珍しく、上品で落ち着いた印象を作り出している。

草丈は15-20㎝程度で決して高くないが、柔らかい黄緑の葉と大き目の花とがマッチしていて、花壇の縁取りに使うと結構様になりそうだ。
咲き終わった花穂を切りもどしておくと、次々と新しい花穂が伸びてきて長期間楽しめる。

なお日本のタキイからまったく似たような花姿の「サルビア・スプレンデンス・トーチライト(Salvia splendens ‘Torchlight’)」という花のタネが販売されている。

(写真) サルビア・スプレンデンス‘サングリア’の立ち姿
        

サルビア・スプレンデンス‘サングリア’(Salvia Splendens 'Sangria')
・シソ科アキギリ属の耐寒性がない多年草だが、越冬が難しいため1年草として扱う。
・学名は、Salvia Splendens 'Sangria'
・Salvia Splendensの園芸品種。タネは『Thompson & Morgan(T&M)』から販売されている。
・原種S.スプレンデンスの原産地はブラジルで、2000-3000mの高地で気温が温暖なところ。
・草丈20cm程度。
・開花期は6~10月で朱色の花とクリームホワイトの顎とのツートンが美しい。花が散っても顎だけが残りこれだけでも様になる。
・花が咲き終わったら切り戻しておくと秋に2度目の花が咲く。


育種会社『Thompson & Morgan(T&M)』
『T&M』は「サルビア・パテンス‘ケンブリッジ・ブルー’」も作出したようであり、会社の由来はここで多少説明している。

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サルビア・インディゴスパイヤー(Salvia 'Indigo Spires')の花

2009-07-29 11:00:00 | セージ&サルビア
(写真)サルビア・インディゴスパイヤーの花


初夏から霜が降りる頃まで美しい青紫の花が咲き続ける「サルビア・インディゴスパイヤー」は、偶然に誕生した自然交雑のハイブリッド種で、日本では「ラベンダーセージ」と呼ばれている。

草丈1.5mで上方だけでなく横にも広がる勢いがすごく、地植えすると木質化し木のようになる。耐寒性が弱いようだが関東以西では地植えが可能で、剪定をしないと四方八方に成長する。

初夏に花穂を伸ばしこの花穂は30cmも伸び、時に渦巻き状になり、青紫の美しい小花を多数咲かせる。この咲きそろった姿は壮観でもある。

        

偶然に発見されたインディゴ・スパイヤー
S.インディゴ・スパイヤーは、カルフォルニアにある「ハンティングトン植物園」で、1970年代に偶然発見され、1979年には普通に栽培できるようになった。

発見者は、ハンティングトン植物園の学芸員マグレアー(John MacGregor)で、“ミツバチの好意でつくられた”自然交雑のハイブリッド種であり、その花姿から、“Indigo Spires(=藍色のせん塔)”と名付けた。

まさに、次から次と咲く花穂は30cm以上もあり、教会などの尖塔に似ている。
ただ、直立ではなく無鉄砲なところがチョッと違う。

S.インディゴ・スパイヤーが発見された場所では、
“Sslvia farinacea” と “Salvia longispicata”が咲いており、両方ともメキシコ原産のサルビアだが、この両種が交配して出来たのが“Salvia Indigo Spires”だといわれている。

インディゴ・スパイヤーの親元の履歴
それでは、親元を確認してみると、 “S.ファリナケア”は、日本でもなじみの花でブルーサルビアとも呼ばれ、初夏から晩秋まで紫色の花を咲かせるが、耐寒性がないため1年草扱いされる。
かつて栽培していたが、1年草は手間がかかるためいまは手を出していない。

もう一方の、 “S.ロンギスピカタ”は、日本ではまだなじみがなく私も初めてだ。

この花は、1840年にメキシコの南西地域でベルギーの植物学者ガレオッティ(Galeotti, Henri Guillaume 1814-1858)によって発見・採取された。
彼は、1835年から5年間メキシコの植物相調査を行っており、このときに発見したようだ。

なかなか良さそうな花と思うがどうだろう。

このように確認してみると、草丈は短いが、花姿は“S.ファリナケアから受け継ぎ、
S.ロンギスピカタからは、無鉄砲に発育するところを受け継いだのであろうか?
ハイブリッド品種を作り出す交配に手を出すと面白いが、一年に一回のチャンスの蓄積で出来上がるのできっと人生の短さをも味わうのだろう!

「ハンティングトンボタニカルガーデン」について
ハイブリッド種が作出された『ハンティングトン植物園』は、ロスアンゼルス・サンマリノ市にあり、25万坪の庭園に美術館・図書館・植物園などがある観光名所となっているが、元は鉄道王といわれたヘンリー・ハンティングトン(Henry Edwards Huntington 1850–1927)の邸宅であり、晩年の1919年に土地・建物・コレクションなどを財団に寄贈し今日に至っている。

(写真)ハンティングトン植物園にある日本庭園

(出典)ハンティングトン植物園

美術品などの収集は、叔父コリス・ハンティングトン(Collis Potter Huntington 1821 – 1900)の妻アラベラ(Arabella Huntington)が貢献しているが、叔父の死後の1913年にヘンリー・ハンティングトンと再婚している。

このコリス・ハンティングトンは、初代の鉄道王といっても良いが、フェルメールの『リュートを調弦する女』を所有していた人物でもある。

(写真)サルビア・インディゴスパイヤーの立ち姿
        

サルビア・インディゴスパイヤー(Salvia 'Indigo Spires')
・シソ科アキギリ属の半耐寒性の多年草。関東以西では戸外でも越冬できる。
・学名は、Salvia cv Indigo Spires。 ブルーサルビア(S.farinacea)とS.ロンギスピカタ(S.longispicata)との交配で作られたといわれる。
・英名は Indigo spires sage、園芸店では、ラベンダーセージ(Lavender Sage)で流通する。
・草丈は、50~150cm、横にも同じぐらい広がる。支柱を立て風対策をする。
・春先に剪定し草丈を低くして花を咲かせることが出来る。
・開花期は、6~10月と長期間咲く。咲き終わった花序をカットすると次から次へと花穂を伸ばし長期間咲き続ける。
・さし芽で殖やす。10月頃に剪定をかねて切った枝をさし芽する。
・冬場は、地上部を10cm程度残しカットし、腐葉土などでマルチングする。

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サルビア・ウリギノーサ(Salvia uliginosa)の花

2009-07-26 09:06:26 | セージ&サルビア
(写真)サルビア・ウリギノーサの花


「ボッグセージ(Bog Sage)」とも呼ばれるサルビアは、ブラジル、パラナ州の800-1000mの高地の湿地帯で自生しているのを発見され、1833年にイギリスの植物学者ベンサム(George Bentham 1800-1884)によって「サルビア・ウリギノーサ(Salvia uliginosa)」と命名された。

この花は、南米ブラジルからアルゼンチンまでの湿地帯で自生し、次から次へと花穂を伸ばし、淡い空色の花を初夏から晩秋まで咲かせる。湿地(ボッグBog)で咲くので、ボッグセージという英名がついた。

この淡い空色の花色は、アルゼンチンのスカイブルーの色合いであり、冷涼感があり、夏日には気持ちの良い涼をもたらす。
が、陽の光がない真っ暗な肌寒い時は、何ともいえないもの寂しさをもたらす。

湿った土壌が適地だが、いつのまにか乾燥にも強くなり適応力があるようになった。

(写真)サルビア・ウリギノーサの葉と花
        

サルビア・ウリギノーサ(Salvia uliginosa)又はボックセージ(Bog Sage)
・シソ科アキギリ属の多年草。耐寒性・耐暑性強い。
・学名、サルビア・ウリギノーサ(Salvia uliginosa Benth.)。英名ボッグセージ(Bog sage)
・原産地はブラジル、ウルグアイ、アルゼンチンなどの南米
・ボック(湿地、沼地)に生息。
・開花期は、6月~11月と長く、ソライロの美しい花が次から次へと咲く。
・夏場は水切れしないように腐葉土・ワラなどで根元をマルチングする。
・冬場は、花後に根元から10cm程度を残しカットし、霜対策で根元をマルチングする。
・草丈50~80cm。台風の時期は支柱を立てる必要あり。
・地下茎で繁殖し、繁殖力旺盛なので枝を整理する。鉢植えの場合は根づまりに注意。
・株分け、さし芽で増やせる。花後の10月にさし芽をつくったが関東以西ならば比較的容易に栽培できる。

        

ボッグセージの発見と命名
このボッグセージは、1830年にブラジルで発見されたが、採取者はわかっていない。
この頃には、民間の栽培業者(ナーセリー)がプラントハンターを派遣するようになってきたので、記録に残らない無名のハンターであったのかもわからない。

或いは、
南アフリカでガザニアを発見したバーチェル・ウイリアム(Burchell, William John 1781-1863)かもわからない。

彼は1825~1830年にブラジルを旅行し、20,000以上の昆虫を含む多数の標本を集めた。
これらは全て紛失しているようだが、時期的にはピッタリであり可能性がありそうだ。

珍しい、美しいに価値を見つけた新種の花の発見は、薬用とか経済的に有益である価値観から外れており、経験と蓄積が必要な時代であり、ガザニアを発見したバーチェルなら、ボッグセージの素晴らしさも理解出来たろう。

種の発見者はわかっていないが、命名者は明確であり、学名 サルビア・ウリギノーサ(Salvia uliginosa Benth.)は、英国の植物学者ベンサム(George Bentham 1800-1884)によって命名された。

彼は、カール・フォン・リンネ(Carl von Linné 1707-1778)が提唱した生物界全体の体系に対して、リンネの体系の人為的に分類しすぎている問題を解決するために、
進化のプロセスを取り入れた系統的な分類法を提唱し、一部では、19世紀最大の植物学者とも評価されているようだ。
現在では、さらにDNA鑑定などを取り入れ、系統的な分類体系が検証されている。

このようなことは、日常の園芸ではあまり関係がないが、園芸業者にとっては、品種改良などで気にしておかなければならないことだろう。

また、ベンサムの活動に敬意を払い、ヤマボウシの属名に彼の名前がつけられているが、
このことには驚いた。ヤマボウシの学名は、Benthamidia japonica (Sieb.et Zucc.) Haraだが、なんだか盗まれた感が否めない。

西洋から見れば発見だが、原産国から見れば盗用、無断利用、権利侵害であり、ここを我慢して記録・歴史を学習する必要がある。
また、世界の美しい花の恩恵を享受している現実を否定してかかる必要もないだろう。
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サルビア・インボルクラタ(Salvia involucrata)の花

2009-07-21 08:00:37 | セージ&サルビア
(写真)サルビア・インボルクラタの花


メキシコ原産の「サルビア・インボルクラタ」は、
半日陰の森の片隅で木々に邪魔されても斜めに傾斜して伸び大株に育つ。
その最大の特色は、絵本から抜け出したような桃色といっても良い球状のつぼみのようなものをつけるが、これは、花を包むように覆っている苞(ほう)で、この中から筒状の桃色をした花が登場する。

英名では“ローズリーフセージ(Rosy-leaf sage)”と呼ばれ、もう一つの特色であるバラのような葉を持ったセージと名付けられている。
確かに、赤紫の茎と黄色が入った鮮やかな緑の葉は、なかなか新鮮な緑色でもある。


1793年にスペインの植物学者カバニレス(Cavanilles, Antonio José(Joseph) 1745-1804)によって発見され命名される。
彼のことは、サルビア・パテンスで紹介しているので、参照していただきたい。

この「サルビア・インボルクラタ」は、耐寒性が弱いが関東以西では戸外でも栽培できる。草丈が100㎝以上と大株になるので、春先に摘心してつめるか株間を取る。

(写真)サルビア・インボルクラタの立ち姿
        

サルビア・インボルクラタ(Salvia involucrata)
・シソ科アキギリ属の半耐寒性がある多年草。強い霜に当てなければ、戸外で越冬可能。
・学名は Salvia involucrata Cav.。種小名のインボルクラタは、花を包み込む苞葉を意味する。英名がローズリーフセージ( Rose-leaf sage)。
・原産地は、メキシコから中央アメリカ。森の半日陰に生育。
・草丈100-150㎝、カブ張り1.5mと大株に成長する。摘心で草丈を調整する。
・開花期は、夏から晩秋。桃色の苞(ホウ)につつまれた蕾の中から鮮やかな桃色の花が咲く。
・耐寒性はやや弱いが暖地なら越冬可能。性質は強健。枝が斜上しやすい。繁殖は挿し木。

命名者Cavは、スペインの植物学者・マドリッド王立植物園の園長のカバニレス(Cavanilles, Antonio José(Joseph) 1745-1804)で1793年に命名する。サルビア・パテンス、ジャーマンダーセージ、ルッコラなどの命名者でもある。

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サルビア・シナロエンシス(Salvia sinaloensis)の花

2009-07-20 08:56:39 | セージ&サルビア
(写真)サルビア・シナロエンシスの花


学名が「サルビア・シナロエンシス」、流通では「コスミック・ブルーセージ」で通っている。

赤紫の茎と緑の中に赤紫が入った葉は、原産地メキシコのシナロアの山麓の地肌にあわせて目立たない存在となっているが、そこから茎が伸び、最初は倒れ気味に、そして徐々に直立する。

その茎の周りに輪状につぼみがつき、陽の当たる方向から開花する。

花は、5~10㎜程度と小さいが、濃いブルーが陽に当たりさらに青を増す。
花びらの中央に白い線が二本入り、遠くから見た飛行機の着陸誘導線のようでもあり、蜂たちに蜜のありかに誘っているかのようだ。

サルビア・シナロエンシスは、草丈15~20㎝程度で横に広がる。
グランドカバーとしても利用され、秋ごろから赤紫に染まった葉にも魅力がある。

この花は、1897年にアメリカのボタニスト、ローズによって発見採取されたが、英国・フランスの庭にお目見えしたのが1980年代からのようであり、日本での普及はこれよりも遅れてつい最近のことのようだ。

(写真)サルビア・シナロエンシスの葉と花
        

サルビア・シナロエンシス(Salvia sinaloensis)
・シソ科アキギリ属の半耐寒性名多年草。
・学名は、Salvia sinaloensis Fernald。英名がシナロアセージ(Sinaloa sage)、シナロアブルーセージ(Sinaloan Blue Sage)、流通名が、コスミックブルーセージ(Cosmic blue sage)。
・原産地はメキシコのシナロア州。それで、シナロエンシスといわれる。
・花の時期は6月~10月。夏休みがあり秋にまた咲き始める。
・草丈 30cm ~ 50cm でほふく性がある。グランドカバーとしても美しい。
・半耐寒性の多年草だが、関東では戸外で越冬する。ただし、マルチングする。
・日あたり、水はけがよく、軽い乾燥した酸性土壌を好むのでピーとモスを混ぜるとよい。
・葉は、秋には紫色を帯びる。

命名者:
Fernald, Merritt Lyndon (1873-1950)
アメリカの植物学者、17歳でハーバードの植物学教授A・グレイのアシスタントを務め、1897年の卒業語は教師として大学に残る。北東部アメリカの植物相の権威となりハーバード大学のグレイ植物園の責任者を務める。

        

サルビア・シナロエンシス発見にまつわる人々
メキシコのシナロアで発見されたので、シナロアセージとも呼ばれるが、発見者はローズ(Rose, Joseph Nelson 1862-1928)で、この花が最盛期の1897年7月Sierra Madreの山麓にあるシナロアで採取した。

彼は、米国の植物学者で、米国農務省で働き1896年にはスミソニアン博物館の副館長になる。また、国立博物館に雇用されている頃には、サボテン、パセリなどを含む領域でのアメリカでの権威となり、メキシコ探索をたびたび行い、採取した標本をスミソニアン博物館、ニューヨーク植物園に提供した。
この中にS.シナロエンシスが入っていた。

わき道にそれるが、
ローズは,サボテンに関して、最初のニューヨーク植物園長であるブリトン(Nathaniel Lord Britton 1875-1934)との共同研究を行い、その植物画を描いたのは、英国生まれのMary Emily Eaton (1873-1961)だった。

彼女は、イングランドのサマーセットにある美術学校を卒業し、1911年~1932年までニューヨーク植物園にアーティストとして採用される。
彼女が描いたサボテンの植物画はサボテンの魅力を高める素晴らしい絵となっている。
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ロシアンセージ(Russian sage)の花

2009-07-13 07:58:52 | セージ&サルビア
(写真)ロシアンセージの花


「ロシアンセージ」の原産地は、山岳地帯でもあるアフガニスタンの北東部。
山と山の間を絹の道(シルクロード)が通り、いにしえは隊商が行きかう繁栄したところで、この路傍に咲いていたという。

谷間といっても標高3千メートル以上もあるところであり、苛酷な自然環境に磨かれたたくましさがあり、乾燥に強く耐寒性も強いが、日本の高温多湿には弱い。

だが、丈夫なことは間違いない。
ほおっておくと大株になるので、春に新芽が出たところで摘心をする。

梅雨時になると、透きとおった青紫の花が咲きはじめ、茎の頂上を目指して駆け上がる。

灰緑色の切れ込みのある葉と茎。そこにわずか10㎜に満たない盾と矛を思わせるような小花が咲き、薄青く霞んだような情景を作り出る。

セージの名がついているが、セージが属するアキギリ属ではない。
セージに似た薬臭い香りを発するので、(ロシアン)セージと名付けられた。

(写真)ロシアンセージの立ち姿
        

ロシアンセージ(Russian sage)
・シソ科ペロフスキア属の耐寒性がある落葉性の低木。アキギリ属ではないのでサルビアではない。
・学名は、Perovskia atriplicifolia Benth.。英名がRussian sage(ロシアンセージ)
・原産地は、アフガニスタン、イランなどの陽が当たる茂みに生育。
・草丈は、1~1.5mだが、摘心をすると50~60㎝に出来る。
・透きとおった青紫の小花が7月~10月頃まで咲く。
・葉は灰緑色の切り込みがある。花壇の奥とか縁取りに適している。
・乾燥に強いが多湿には弱い。
・毎春根元から刈り込む。

名前の由来
属名のperovskiaは、ロシアの将軍で政治家ペロフスキ、V. A. Perovski (1794-1857). または、BA Perovskiの名前に因む。
種小名のatriplicifoliaは、ラテン語ハマアカザに似た葉atriplici+folia。(folia葉leaf)

命名者:Bentham, George (1800-1884)は、英国の植物学者
コレクター:Grey-Wilson, Christopher (1944-) 以下に紹介。

        

発見者グレイ=ウイルソンとラピス・ラズリ
ロシアンセージは、アフガニスタン北東部にあるBadakhshan州で、1971年に英国人のグレイ=ウイルソン(Grey-Wilson, Christopher 1944- )などによって発見された。

クリストファー・グレイ=ウイルソンは、ヒマラヤを中心としたアジア、ヨーロッパの山岳の植物相を調査した探険家で、カーティスのボタニカルマガジンの編集者、キュー王立植物園の科学主任、カメラマン、ライター、園芸家、探検家でもあり、科学的な思考も有し、これらを統合したビジュアル化された植物図鑑を出版している。
クレマチスの分類体系の提案者としても知られている。

20世紀にはいると、植物相探索のフロンティアは、さらに極限に向かい、ヒマラヤ・アルプスなどの高山植物になった様子が伺える。

グレイ=ウイルソンたちがロシアンセージを発見したアフガニスタン北東部にあるBadakhshanは、古代からシルク交易で重要な道が交差するところで、ラピス・ラズリ(Lapis lazuli)の産地としても知られている。
このラピス・ラズリは、フェルメールが愛したブルーの原料であり大変高価でもあった。

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ブラジリアンセージ、サルビア・ブルースカイの花

2009-07-06 07:46:31 | セージ&サルビア
(写真)サルビア・ガラニチカ‘ブルースカイ’の花


ブラジルのセージ、サルビア・ガラニチカのシリーズ三弾目は「ブルースカイ」。
この花は、同じ「ガラニチカ」の園芸品種の中で「アルゼンチンスカイ」に良く似ている。

花の色が違っていて、「ブルースカイ」の花色は、紫が入ったような或いはネズミ色っぽい薄いブルーであるのに対して、「アルゼンチンスカイ」の花色は、アルゼンチン国旗の薄いブルーの色であり、サッカーチームのユニフォームの色でもある。

だが、「ブルースカイ」に関する園芸情報はほとんど無く、わずかに日本語サイトに数件あるぐらいで国内で作られた園芸品種のようだ。

原種の「ガラニチカ」より耐寒性が弱く冬場の管理には注意が必要だ。また、5月までに摘心をして丈を詰め花穂を増やすようにしたほうが良いが、摘心を忘れるとさびしい株となる。

しかし、ちょっと顔をだしたダークブルーのつぼみが、朝に開花したときには淡いネズミ色のようなブルーに変わってしまう。

いつ変わるのだろうかと疑問に思い追っかけてみた。
夕方18:28分には濃いブルーであったのが、20:49分には大分薄い色となっている。
朝には普段どおりの花色になっていた。

(写真)花色の変化 18時28分(0703)
    

(写真)花色の変化 20時49分(0703)
    

ブラジリアンセージ、サルビア・ブルースカイ(Salvia guaranitica. ‘Blue Skies’)
・シソ科アキギリ属の耐寒性がある常緑低木。但し、冬場は、地上部から切り戻しを行う。
・学名は、Salvia guaranitica. ‘Blue Skies’。英名はBrazilian sage、anise scented sage、流通名がメドーセージ。
・原産地は、ブラジル、アルゼンチンを含む南米。
・花弁が4cm級の淡いブルーの花を初夏から秋まで多数咲かせる。
・咲き終わった花穂は切り戻す。
・草丈50cmで葉からはセージの独特の香りがする。
・5月までに摘心を行い丈を調節し、花穂を増やす。
・夏場に乾燥させないように根元を腐葉土でマルチングすると良い。
・さし芽、株分けで増やす。

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ブラジリアンセージ、サルビア・ガラニチカ‘パープルスカイ’の花

2009-07-05 08:24:51 | セージ&サルビア
昨日の「サルビア・スプレンデンス」に続いてブラジル原産のサルビアが続く!

(写真)サルビア・ガラニチカ‘パープルスカイ’の花


「パープルスカイ」は、ブラジルを原産地とする「サルビア・ガラニチカ」の園芸品種で、上品なパープルの花色が美しい。
特に雨の日にはその美しさが際立つ。

栽培はさほど難しくはない。耐寒性があるので注意するのは夏場の水切れだけといっても良い。それで毎年美しい花が咲くので“ガラニチカ”だけを集めた庭があってもおかしくはないがまだ見たことが無いので気づいていないのだろう。

        

メキシコ原産の「サルビア・パテンス」も花は美しくガラニチカと甲乙つけがたい。
しかし「サルビア・パテンス」の葉はちょっと魅力に欠け、総合力で「サルビア・ガラニチカ」が上回る気がする。

「サルビア・ガラニチカ」「サルビア・パテンス」とも、発見されヨーロッパに導入された時期がちょうど1830年代であり、イギリスに代表されるヨーロッパ社会が新大陸の植物に“新奇性(珍しい)”“審美性(美しい)”という価値を求めるようになったから同じ時期に同じようなタイプの花が発見されたともいえそうだ。

産業革命で豊かになった市民の出現、スモッグでの環境汚染、自然を求める価値観の高まりなどを背景に、世界の珍しい植物を収集し・栽培し・販売する園芸企業(ナーサリー)がこの時期に台頭する。

「サルビア・スプレンデンス」でも紹介した“リーアンドケネディ商会”などがこの代表であり、裕福な個人の欲望にピンポイントを絞った組織的な活動をする企業が出現した。

国家的な視点での植物探索では、薬用植物、輸入超過となる香辛料の代替、コーヒーなどの嗜好性の強い植物、木材資源となる樹木への関心が強かったが、1800年代からは有用な価値は無いが、“珍しい”“美しい”が新しい価値を持つ社会が出現したとも言い換えられる。

いろんなものの見方ができるということは素晴らしい。
テアル、ベキという切羽詰った見方は不幸を招くということだろう。

(写真)S.ガラニチカ‘パープルスカイ’の葉と花
        

ブラジリアンセージ‘パープルスカイ’(Brazilian sage ‘Purple Skies’)
・シソ科アキギリ属の耐寒性がある常緑低木。但し、冬場は、地上部から切り戻しを行う。
・学名は確認できなかったので親元の園芸品種で仮おきしておく、サルビア・ガラニチカ‘パープルスカイ’(Salvia guaranitica ‘Purple Skies’)
・英名はBlue anise sage, Brazilian sage、anise scented sage、流通名がメドーセージ。
・原産地は、ブラジル、アルゼンチンを含む南米。
・花弁が3cm級のパープルの花を6月から秋まで多数咲かせる。
・咲き終わった花穂は切り戻す。
・草丈50~70cmで増殖力が強い。
・夏場に乾燥させないように根元を腐葉土でマルチングすると良い。
・さし芽、株分けで増やす。

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