彦四郎の中国生活

中国滞在記

中国の大学統一試験「高考」が今年も6月7・8日に行われた—過去最高の1342万人が受験、そのうち再受験者が413万にものぼった

2024-06-15 12:26:40 | 滞在記

 6月7日(金)・8日(土)、今年も中国全土で大学統一入学試験「高考(ガオカオ)」が行われた。今年の受験生は前年比51万人増の1342万人と、5年連続で過去最多を更新した。(22年は1193万人、23年は1291万人)  特にここ2~3年は、「➀意図的な高校留年や➁浪人、そして、➂昨年に高考を受験して大学に進学したが、よりレベルの高い大学への進学を目指して高考の受験をしなおすなどの再受験者」が、1342万人のうち413万人に上ると、香港紙「明報」は伝えていた。実に受験生の3人に1人が「再受験者」だ。

 このような「再受験者」という現象は、2019年頃まではあまりなかったことなのだが‥。(※特に大学に一度入学していて、再度受験をするということはほとんどなかった。また、浪人をすることは恥ずかしいことだという社会風潮が強くあったので、浪人生もとても少なかったのだが‥。)

 中国社会はとても変化が激しい社会だが、たった1回の試験の点数で入学できる大学が決まるという"究極の一発勝負"とも言われる「高考」の受験者にも急激な変化がここ2~3年で起きているようだ。とにかく、「よりレベルの高い大学へ」の進学熱だ。(※「より高いレベルの大学」志向の急激な高まりは、中国経済の不況による若者の就職難時代が心理的に影響しているとも指摘されている。)

 6月7日(金)、この日は大学の授業がない曜日だったので、アパートを午前7時40分頃に出て、15分ほど歩いたところにある「高考」の受験会場の一つになっている福建師範大学付属高校に向かった。団地アパート入口付近の交差点、信号待ちするチャイナドレス風の母親と受験生らしき娘の姿。受験会場に向かう道を、電動バイクの後部に座って参考書を見続ける受験生たちの姿が何台も見かけられた。

 午前8時頃、福建師範大学付属高校付近の道、騒音防止のため乗用車は通行止めとなっている。高校の正門前にはたくさんの受験生の父母たちの姿。縁起担ぎの赤い服装の人たちも多い。

 警備にあたる警察官の姿や装甲車両、報道記者たちの姿も。「高考必勝」と書かれた赤いTシャツを着ている女性。

 チャイナ服姿の色は赤が多いが、他の色の人もけっこう多い。男性も赤い色のTシャツを着ている人もけっこういる。

 午前8時30分までに受験生たちは、正門の入り口に入ることになっているようだが、少し遅れても8時40分くらいまでは入場が認められているようで、8時40分頃に急ぎ入場していく受験生も毎年見られる。午前9時から試験が開始される。

■6月10日付けの「福州日報」によれば、今年、福建省福州市内の会場で「高考」を受験したのは約3万9000人。福建省全体では235箇所の試験会場で「高考」が実施され、約5万人の要員が配置されたと報じられていた。6月7日の午前中は「中国文(国語)」、午後は「数学」、8日の午前中は「総合文系」又は「総合理系」、午後は「外国語」の試験が行われた。(※「国語」「数学」「外国語」は各150点満点、「総合文系」又は「総合理系」は各300点。総合計満点は750点となる。

■①世界最大の「受験工場」とも呼ばれる中国の高校。2018年の5月上旬に、閩江大学の学生に福建省泉州市にある、その学生の母校(高校)に行ったことがある。「ここが私が3年生の時の教室です」と案内された。教室の黒板横には大きな画用紙で「高考まであと36日!大家加油!(みんな頑張ろう!)」書かれた日めくり。生徒たちの机の上には、うず高く積まれた参考書や教科書という光景には驚かされた。高校内を歩いていると、「あの先生が3年の学年主任です。学校内で一番厳しくて怖いと思われている先生が、3年の学年主任(生徒指導部長兼務)をするのです」と耳打ちされた。

■②全受験者の8割余りが、点数によってどこかの大学への合格が決まり割り振られる。2割余りは大学に不合格となる。中国には約2800余りの大学(4年制と3年制の短大)がある。昨年で言えば、約1291万人の受験生のうち、約8割の約1032万人がどこかの大学に合格、約258万人が不合格となった。不合格者のほとんどは、専門学校などに進む場合が多かったが、最近では「高考の再受験」をする人が急増しているのかもしれない。

■③中国では2020年の高校入試より、50%は「普通高校」に合格、50%は「職業系高校」に合格というようになった。「職業系高校」を卒業しても大学入試「高考」を受験することができなくなった。このため、「高校入学試験」結果は、人生でのとても大きな意味をもつこととなり、「高校入試」に向けての中学校生活もまた受験工場化という面を持ちつつあるようだ。(※昨年2023年「高考」受験生から、全員がこの「普通高校卒業生」となった。)

■④6月7・8日の「高考」の試験を終えた受験生たちは、各試験問題の正答を自分なりにチェックし、総獲得点数を予測する。そして、第一希望から第三希望までの大学・学部・学科名(省によっては第五希望まで)を教育局に提出する。レベルの高い大学に合格した者ほど早く(※7月上・中旬頃)に大学名と学部・学科が書かれた合格通知が届くこととなる。8月上旬までには、合格者や不合格者全員の通知が家庭に届くようだ。

■⑤大学卒業生の就職難という時代になり、大学院への進学を希望する学生が「雨後の竹の子」のように激増してきているのも、ここ2~3年の現象。昨年2023年の大学卒業生は約1100万人だが、そのうちの40%に当たる約450万人が大学院入試を受験した。そのうち、どこかの大学院への受け入れ(合格者)は約125万人。合格率は27%となった。(※就職難と、それにともなう高学歴化志向の高まり。)

■⑥チャイナドレスは中国語で「旗袍(チーパオ)」と発音され、同じく「旗」の字から始まる「旗を上げたとたんに勝利を収める」という意味の熟語にかけた"げん担ぎ"のために、受験会場に来ている母親はチャイナドレスを着ている人が多い。また、赤色は中国では伝統的に「縁起の良い色」とされている。