彦四郎の中国生活

中国滞在記

月桃(げつとう)、中国と沖縄のそれぞれ—中国の「端午節」、龍舟と粽(ちまき)の季節

2024-06-10 10:20:32 | 滞在記

 6月5日から二十四節気での「芒種(ぼうしゅ)」の季節に入った。日本では、カマキリや蛍が見られるようになり、梅の実が熟し始め、梅雨のじめじめした空模様がこの頃から始まる。そして、6月21日からは夏至(げし)の季節となる。

 私が暮らす亜熱帯地方の中国福建省福州では、例年、5月上旬頃から梅雨の季節が始まり、5月下旬には梅雨明けとなり、6月上旬からは本格的な夏の季節となり連日30度〜35度の日々が続く。福州と同じ緯度の亜熱帯地方の沖縄県那覇市では、例年5月中旬から梅雨入り、6月中旬には梅雨明けとなる。

 しかし、今年の福州も那覇も梅雨入りが10日ほど遅れたようで、福州はこの6月15日頃になってようやく梅雨明けかと思える。一昨日の6月8日、今年初めて福州で蝉(セミ)の鳴き声を聞いた。 この芒種の季節、中国では世界最大の大学統一入学試験である「高考」があり、「端午節」がある。「端午節」では、「粽(ちまき)」が作られて食べられ、「龍舟(りゅうぶね)」競技が全国各地津々浦々で行われる。いわゆる、日本でも行われているドラゴンボート競技である。私が勤める閩江大学でも龍舟の競技が行われていた。

 6月1日(土)に、5艘の龍舟による競技が行われ、優勝した龍舟チームは、さらに10日(月)の「端午節」の日に行われる福州大会に出場することとなる。このような龍舟の地区予選は全国各地で繰り広げられる。

 龍舟の競技やパレードは河川だけでなく、海でも行われる。

 「端午節」は、今年の中国では6月10日(月)。(※昨年は6月22日)  祝祭日なので、8日(土)・9日(日)・10日(月)は三連休。「端午節」には、3週間ほど前から各家庭で「粽(ちまき)」が作られたり、いろいろなところで「粽」が販売されるようになる。この中国の「粽」は、味付けしたもち米を三角形などにして、さらに中に鶏肉や大豆などの具をいれて、笹(ささ)などの葉で何重かにして包み、葉ごと蒸して過熱し、食べるときはその葉を剥いで食べる。

 5月26日(日)にこの粽を閩江大学卒業生の王文重さんが、「実家のおばあちゃんが作りました」と4個持ってきてくれた。また、31日(金)にはアパートの大家さんが10個余り持ってきてくれた。10日間余りは、毎日の夕食には「粽」を食べ続けることとなった。特に王さんからもらった粽はとても美味しかった。

 いつも朝食用の食パンを買っている店でも粽が売られている。

 また、アパート近くの食堂でも粽が売られているし、路上の露店でも粽が売られている。

 5月下旬から6月上旬のこの季節、亜熱帯地方の植物の花である「月桃(げっとう)」が、大学構内の鐘楼や、研究室のある福万楼の付近に群生している。この植物の花は沖縄地方でも各地で咲いていて、沖縄県民にとっては夏の訪れを告げる花でもある。蕾は白く、開花すると黄色い花弁が見られる。花は少し甘く高貴な香りがする。(※この植物の葉は抗菌性があり、花はハーブ性の香りがある。)

  日本の「端午の節句」は5月5日の子供の日となっていて、「粽」が売られている。でも日本の粽はもち米を蒸して笹の葉で包まれて蒸されて作られるのは同じだが、中国や沖縄の粽とは違っている。味の甘さも薄い上品な細長く白い餅という感じ。(※京都では粽師「川端屋」の粽が有名か。中世時代からの創業のようだ。)四国では五色の「粽」も作られている。

 日本の沖縄の粽は中国の粽とほぼ同じような粽だ。笹の葉で包まれている粽が多いようだが、「月桃」の葉で作られる粽は、特に沖縄県南東部の八重山諸島では多いようだ。

 2022年6月は、沖縄日本本土復帰「50周年」。沖縄戦は1945年3月26日から始まり、6月23日までの約3カ月間続いた。(※6月23日に日本軍の組織的な戦闘が終わったようだ。しかし、8月15日の終戦日まで、戦闘は散発的に続いていた。) この沖縄戦により、沖縄の人たちの「4人に1人」が犠牲となった。

 戦後、沖縄はアメリカの統治下におかれ続けたが1972年に日本本土復帰。それから10年後の1982年に、沖縄県のシンガーソングライターだった海勢頭豊さんによって作詞・作曲され歌われ始めたのが「月桃の花」。

 毎年、6月23日の「沖縄慰霊の日」に向けて、沖縄県の小中学校では全校合唱の練習が行われ続けている「月桃の花」。沖縄戦全戦没者を追悼し、平和を願う歌として沖縄県内では広く親しまれる歌となり現在に至っている。
 歌詞は1番から6番まであり、各番の冒頭歌詞は次のようになっている。

一、月桃ゆれて花咲けば 夏のたよりは南風 緑は萌えるうりずんの ふるさとの夏

二、月桃白い花のかんざし‥ 三、摩文仁(まぶに)の丘の祈りの歌に‥ 四、海はまぶしい喜屋武(キャン)の岬に‥

五、六月二十三日待たずに‥ 六、香れよ香れ月桃の花‥

 そして、「沖縄本土復帰50周年」の2022年6月、「沖縄戦終結から77周年」の6月23日、「月桃の歌」の歌碑がこの日に公開され、地元の小学生たちの歌声が歌碑の前に響いた。

■沖縄の唄では、「サトウキビ畑」や「島唄」などでも、この沖縄戦のことがさりげなく歌詞でつづられている。「月桃」の唄のメロディはやさしく、歌いやすい歌だと思う。毎年、中国福建省でこの「月桃」の花を見ると、夏の訪れと夏休み開始の近さ、そして沖縄のことを思います。

 今日6月10日、中国では「端午節」となった。