浪漫亭随想録「SPレコードの60年」

主に20世紀前半に活躍した演奏家の名演等を掘り起こし、現代に伝える

ベックリンの「死の島」をラフマニノフ自作自演のBGMで鑑賞しませう

2008年03月02日 | 自作自演
ラフマニノフは作曲をする洋琴家であり、指揮者としての仕事は友人のヨーゼフ・ホフマンに控えるやうに忠告されてゐたといふ。本来あるべき尊敬すべき音楽家の姿である。演奏しかできない音楽家といふのは有り得ないのである。

さて、ラフマニノフはベックリンの1枚の絵画を見て「死の島」を作曲した。その絵には静かな海に棺を運ぶ小さな舟と白い守人が描かれてゐるといふ。5拍子は2拍子と3拍子が交互に入れ替わる複合拍子だが、この作品は冒頭から5拍子の揺れの連続する中、暗い旋律が不安定に奏される。安定したトニカを置かないことで、永遠に続くとも思はれる不安定を創り出してゐる。世紀末思想、終末観の趣をたたえたベックリンの絵は数種類存在してゐるやうだが、一つの構図と構想からいくつかのバリエイションが生まれるのは音楽と同じである。

ラフマニノフは1曲で終わってしまったが、時間ができれば、僕がベックリンの手掛けた絵画の世界での展開へのこだわりを受け継いで、それぞれの絵画作品に曲を付けて交響組曲「死の島」として完成させてみたいと思ふ。

この作品の決定盤、作者自らフィラデルフィア管絃團を指揮した1929年4月20日の録音を聴いてゐる。当時のフィラデルフィア管の水準はかなりの高さであり、ラフマニノフの指揮者としての統率力も大したものだと感心させられる。

盤は、国内RCAによるSP復刻CD BVCC-38249。


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1 コメント

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Unknown (GTO)
2008-04-16 15:04:38
こんにちは。お邪魔いたします。
演奏しかできない音楽家といふのは有り得ないのである、というのは全く同感するところであります(大きな声では言えないですが)。
さて、死の島ですがラフマニノフが霊感を受けたのはベックリンのオリジナルではなく、マックス・クリンガーによる銅板の複製画だったそうです(それも白黒)。
http://tetsuwanco.exblog.jp/3005696
その他ラフマニノフはベックリンの絵画に触発された作品をピアノ曲にいくつか残しているようです(手元の資料「RACHMANINOFF his life and times,Robert Walker」による)。
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