こちらは、マジック作品です。
油性のマジックインキは、重ね塗りすると下地が透けて見え、
セロファンを重ねたような効果が出ます。
緑に見えるところは、オレンジや黄色が、
紫に見えるところは、ピンクが塗られています。
案山子でも描いているの?と思ってしまいますが、これは飛行機です。
武内の絵を何年も毎日見ていますと、
視覚に形が擦り込まれていますので、
描かれていませんが、尾っぽの部分“水平尾翼”があるのです。
このバッテン、+の形があるものは飛行機なのです。
雪の振る人家のある街並みを浮遊しているような感じがします。
ところで、雪が降ったら、飛行機って飛べただろうか?
こんな疑問もありながら、絵を見ています。
台所でこんな会話をしていました。
ヒロクニさんは、「最近、ご飯が美味しくってね。毎日、ありがとう。」と言い、わたしに握手を求める。
握手した後、「こういってはなんだけど、わたしも自分で作りながら、美味しく食べてる。」
「楽しみがご飯しかないというか、一日の終わりにあれこれ美味しく食べると、充足するよね。」
「あ、こういうの“一日の労苦は、一日で足れり”っていうのかな。」
「他の欲望が減るよね。」と、何か発見でもしたような気持ちになって話す。
ヒロクニさんは、「確かに、無駄使いが減るねぇ。」
「満たされてしまってもて・・・。」と、冗談っぽく、笑いながら言う。
我々は、こんなことで満たされてしまっていいのか?
もっと崇高なものがあったのではなかったのか?
というものが、ヒロクニさんにはあるので、
こんなことで満たされてもて・・・ということで、変な笑いが出てきているようです。
普段、「精神の不良」なはずが、
“晩飯”で満たされて幸せになってしまった。
「満たされてもて・・・。」と言う表情は苦笑顔なので、可笑しく楽しい気分になった。
若い時は、厳しかったようで、現代美術の団体にいた頃は、団体で話し合いをした時のことを語るのですが、
特に印象的だった言葉があります。
「この大事な話し合いをする時に、グラタンを食べる奴がいたんだよ。
俺は、“こいつ許せん”と思ったねぇ。
腹一杯にして、何が芸術だ。
腹がすいていてもやるのが芸術じゃないか。
俺らがどんな思いをして芸術をやろうと思っているか、分ってない。
こいつとは、口聞きたくないと思ったねぇ。」と、いうもの。
グラタンを食べただけで、ここまで思われるって、可哀想にと思うと同時に
ヒロクニさんの言い分もわかるような。
飯より情熱が大事なんだ!こっちが先だ!なのでしょう。
確かに、ストイックで、暮らし始めた頃、
食事を出しても、食べないで見ているだけで、驚いたことがあるのです。
「見ているだけで、お腹が一杯になっているから。」とか、言われて・・・。
わたしにしたら、それはありえないなので、とても困りました。
かといって、まったく食べないではなく、急に食欲が出るときがあって、
変な時間(普通はあまり食事をしない時間帯)に食べだす時があって、
武内の友人の目の前で、急に食事を注文したり。
わたしは、「食べたり食べなかったりなので、好きにさせてる。」と、皆の前でポツリ。
皆、大変やねぇ~という目で、ヒロクニさんを見る。
だけど、皆寛大です。
美術関系の集まりでも、パーティでも本当に食べない人。
家に帰ってから、「何か簡単なもの作って。」と言われます。
(わたしは一緒に行って、アルコールやら料理を頂いていて、ちょっとめんどうである)
こういうことを思い出すと、今は食べるようになってくれて、ありがたい。
そんなヒロクニさんですが、夜中に起きて制作していたり、朝早くから制作していたり、
昼間制作していたり、昼間寝ていたり、夕方寝ていたり、遅くに寝ていたり、
わたしから見るとこんな風に映ります。
“不規則な生活”つまり、制作に一番いい生活らしい・・・。
受ける雰囲気は、活動的な感じ。特に表情がです。
それが、急に“休息”に入ったらしく、熊みたいに冬眠しています。
「ちょっと、今から休憩するよ。
今から、幼児期のあのくる日もくる日も海を見ていた記憶を。
あの生まれた時から、海があった環境の中で育まれていたものを探し当てたいかな。
新しい今までにないものを発見してみたい気も。
才能とかじゃなくって、努力したら努力した分、解ることがあって、
解ったら、また努力を続けて、その努力が出来るのが才能。」
「努力できるのが才能」改めて、うん、なるほどと思う。
そして、ヒロクニさんのいう「解る」とは、何か?
ここが明快になりにくく、解りにくいところでもあるが、
ここがポイントなのかもしれないと思うのでした。
哲学みたい・・・。
では、晩御飯の話から、はじめて挑戦した、タラのコロッケのお味を。
昨年から、考えていたコロッケを作ってみました。
↑丸い形をしたものが、パルメチザンチーズ入り。
長めの形は、プレーンな味。分けています。
これだけでは、ただのコロッケの見かけ。
↑こちらが、コロッケの中身。
左の透明のボールには、マッシュしたじゃが芋と
すきみたらを塩抜きのため戻したものをフードプロフェッサーで細かくしたタラの身。
右は、炒めた玉ねぎ。
イタリアンパセリは刻んで一緒に混ぜる。
味は塩、胡椒。ナツメグ。牛乳も混ぜるあわせる時に入れました。
お味の方は、あっさりしたコロッケで塩味が残っているタラの身とナツメグがよく合います。
ケチャップをつけて食べるのがいい。
洋風な感じの味になります。
個人的には、パルメチザンチーズが入ったものの方が、ケチャップに合うような気がします。
ヒロクニさんには、いまいちだったようで、塩をかけて食べていました。
普通のコロッケのほうがいいみたい。
このコロッケは、ちょっとポルトガル風なのです。
↑庭では、あまり花は咲いていません。
手前から、ムスカリとチューリップを植えている鉢。
ルピナス、ビオラ。
ポットには、ビオラを育苗中。
やっと蕾をつけたものが1つ。紫色でした。
これからの楽しみ。
不規則な生活が板に付いている武内ですが、制作と関係あるように思います。
「規則正しい生活をしようよ。」というと、
「嫌だ。」と即答で返ってきたときは、え~!!!と驚いたのですが、もう、好きなようにと。
「満たされてもて・・・・。」と言う言葉を聞いた時、夫も随分変わったのか?
時々、「腹が減っては戦は出来ぬ。」「ご飯、食べて!」と食べるように仕向けていたこともあり、
わたしの啓蒙も脳に浸透しているに違いない。
制作を戦に見立てたのが、功を奏したとのだと思います。
今日も最後まで、お読み頂いた方、ありがとうございます。