梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

腰元、といえど…

2007年10月10日 | 芝居
歌舞伎の多くの演目で登場する<腰元>。
皆様にとりましては、すっかりお馴染みの役柄と存じますが、腰元と聞いてパッと思いつくビジュアルイメージはどうでしょう?
衣裳は矢絣? 鴇色? 矢の字の帯? 役に応じたコスチュームが、おそらく<定番>として皆様のご記憶にあるかと思います。


これは今月の『平家女護島・清盛館の場』での腰元(六波羅おどりを踊るのとは別)です。おそらく一番ポピュラーな腰元の扮装で、鴇色の着付、黒繻子の帯を<左矢の字>に結び、鬘は<文金高島田>です。
このような扮装は、時代物、時代世話、世話物でも格式の高い屋敷内でのこしらえとなります。着付が矢絣になったり、納戸色や縫い(刺繍)の入った振袖になることもございますが、いずれにしましても、多分に様式的な雰囲気となります。

さて、やはり今月上演の『うぐいす塚』でも腰元が多数登場いたしますが、こちらは時代物でもなければ、武士ではない“長者”の家に仕えているという設定。「清盛館」にくらべて、写実的に表現しなくてはなりません。そこで今回は…。



帯を<文庫>結びにいたしまして、鬘は<潰し島田>。先ほどのにくらべればこじんまりとなりまして、大仰にならないぶん、世話物っぽい雰囲気となっております。
着付の色は<鶸(ひわ)色>。これは序幕の天神様詣での外出着で、二幕目屋敷内では細かい矢絣と変わります。
いかがですか? 両者の扮装がうむ雰囲気、確かに違いますよね。

これから御覧になる方は、ちょっとご注目してみて下さい!