梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

久々落語

2007年10月22日 | 芝居
池袋演芸場での『林家正雀の会』に行ってきました。
<忠臣蔵にちなみ>の副題通り、『仮名手本忠臣蔵』の五、七段目が噺に出てくる『権助芝居』(彦丸さん)、五段目の『中村仲蔵』、題名通りの『七段目』(ともに正雀師匠)の三作品。間には、正雀師匠と瀧口雅仁氏(ポニーキャニオンの方だそう)との『対談』や、やはり忠臣蔵の名場面を唄った『小唄』(扇 よし和師匠)もございまして、盛りだくさんの2時間半でした。

とりわけ『中村仲蔵』は、高座では初めて聴きましたが、定九郎役の工夫に悩む仲蔵の苦心、蕎麦屋で見かけた浪人の姿から発想を得ての、初日の迫真の演技、それが観客に受け入れられなかったと思い込んでの落胆から一転師匠に誉められての喜び…。正雀師匠の歯切れのよい語り口で繰り広げられ、グングン引き込まれました。初日の晩、もう江戸にはいられないと夜逃げのように家を飛び出し、通りかかった日本橋。魚河岸の親方が今日見た<仲蔵定九郎>の上手さを熱っぽく語り、それを立ち聞いた仲蔵が感激して大坂行きを思いとどまる場面があるのですが、そのくだりが本当に素晴らしかった。魚河岸の親方の饒舌な語り口から、彼が見た舞台がクッキリと浮かび上がってまいりましたが、その熱っぽさ、興奮度。こんなテンションで誉められたら、役者冥利に尽きるというものですよ。

小唄の『定九郎』の一節に、「…貧すりゃドンと二つ玉」という歌詞がございまして、定九郎の落ちぶれぶりとその最期を、うまくよみこんでいるなあと思いました。