梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

梅之京都日記・3

2005年11月29日 | 芝居
本日は午前十一時から、六演目の<舞台稽古>。最後の『引窓』が終わりましたのは午後九時過ぎ。やはり演目ごとの大道具の建て替え、芝居を始める前の<居所合わせ>などがありますので、時間はかかってしまいます。
私は『五斗三番叟』と『京人形』。どちらも立ち回りの出演です。『五斗三番叟』では、花四天よりも重い“奴”の衣裳、そして頭に編み笠をかぶった上での演技となるのですが、この編み笠がなかなか曲者で、顔を隠すようにかぶるわけですから、視界は遮られますし、首から上の感覚(重さ)が変わってきますので、なんともイヤなものです。今回はこの格好でトンボを返ることになりまして、奴の衣裳でトンボを返るのは久しぶりということもあり、始まる前は大変不安だったのですが、なんとか今日の稽古では無事に勤まりました。しかしながら、ここ南座の舞台は歌舞伎座に比べて小さく、とりわけ奥行きがございませんで、いざトンボを返るときになって、すぐ目の前が所作舞台の切れ目、(狭いよ~)と心の中で悲鳴を上げてしまいました。さらにいえば、踊りの足さばきをよくするための所作舞台に、足袋はだしで出ておりますので、ツルツルツルツル滑ってしまうのです。踏ん張りをきかせたいところ、ピタッと止まりたいところも、ともすれば浮ついてしまいます。濡れ雑巾で少し足袋を湿らせて滑りにくくいたしますが、まず<腰を入れる>ということを気をつけて、地に足の着いた動きをしてゆきたいものです!
次の『京人形』こちらも所作舞台に足袋という組み合わせ。やはり出の前はみんなで足袋を湿らします。『五斗三番叟』が形をきっちり見せる<時代の立ち回り>なら、こちらはきびきびと軽快な動きを見せる<世話の立ち回り>。気持ちも切り替えて臨みます。昨日も申し上げましたが、常磐津節に合わせながらもあくまで「戦っている」ように見せなくてはならないところが難しいところです。ただでさえ昨日の<附総>一回しか稽古をしないでむかえた今日の舞台ですから、うまくできるか心配でしたが、仲間同士で何度もおさらいをいたしましたので、それほど慌てることなくできたのは有り難いことでした。

どちらの演目でも、立師さんからのダメ出しはもちろんのこと、舞台を映した楽屋のテレビモニターの映像を録画しておき、後から皆で見て反省したりいたしました。もう明日は初日なのです! お客様にきちんとしたものをお見せできるように、我々一同チームワークで頑張りますので、応援よろしくお願いいたします!