梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

トンボはデリケート

2005年11月11日 | 芝居
今日から三日間は、都合により夜に更新することができません。午前中に書き込みますが、短文になってしまうことをご了承下さい。

『鞍馬山誉鷹』の立ち回りも、だいぶまとまってきたように思います。私ごときが申し上げるのも生意気なことかもしれませんが、全体的に、やはり最初はさぐりさぐりやってしまうところが多々あったのですが、動きにしても間合いにしても、今はキッパリと、余裕が感じられるように思われます。余裕がでてきてこそ周りと合わせる意識も持てるわけですから、これからはさらにしっかりと、協調性のある立ち回りができたらと思います。

時間としては十分もない立ち回りなのですが、意外とトンボを返る箇所は多く、私はじめ三回、四回返っている人がほとんどです。トンボは覚えるまでも大変ですが、つねにいいコンディションで返るということも、より難しいことでございます。何かの拍子で、うまく返れなくなるということもありまして、こういうことを我々は『トンボが壊れる』と言い習わしております。
公演中に『壊れ』てしまうと大変です。腰とか背中から落っこちてしまい身体を痛めたり、ひどい時にはねん挫や骨折という事態にもつながりかねません。精神的なプレッシャー、恐怖感も当然おこるものですし、つくづく<心技体>を充実させて臨むことの大変さ、大切さを思い知らされます。

私も一度そういう時期がありました。その時は、トンボを返るパートだけ、他の人に代わってもらいました。そしてその後の三ヶ月間はあえてトンボの稽古をしないで頭をリセットし、それから改めて、研修時代のようなお稽古からはじめて、元通りになりました。それからは何事もなく今に至りますが、そのときの精神的な辛さはいまでも思い出します。

今日の写真は文章とは関係ないのですが、やはり昨年の京都、夜の清水寺の紅葉です。