梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

さて来月は

2005年11月18日 | 芝居
ただいま昭和通り沿いの「SEATTLE′S BEST」から書き込んでおります。
昼の部の『熊谷陣屋』を終えてから、新橋演舞場にお邪魔しまして、『児雷也豪傑譚話』の三幕目大詰、「地獄谷の場」の立ち回りを拝見させていただきました。正面の紗幕越しに、鳴り物さん、細棹、太棹の三味線さんの演奏する姿を見せ、迫力ある演奏とともに<火の粉四天>が大活躍です。普段の立ち回りでは使わないような小道具も使い、動きも見た目も一工夫もふた工夫もされた鮮やかな立ち回りに、驚くやら感動するやら。お出になっている方達はさぞ大変だろうと思いましたが、立ち見も出てている満員の客席も大盛り上がりで、さかんな拍手が送られていおりました。…こちらの<楓四天>も、負けずに頑張りましょう。

さて本日、来月の京都の顔見世での自分の役がわかりました。昼の部の『五斗三番叟』の<雀躍りの奴>と、『京人形』の<大工>。両方とも立ち回りのカラミです。
写真を見ていただけるとおわかりかと思いますが、地方公演での名題下の役は、「葉紙(はがみ)」という短冊状の和紙に書かれて配布されます。上に役名、下に芸名が筆で書かれております。興行の総配役が決定した時点で、まず<附帳(つけちょう)>という大福帳のような冊子に書き記し、それから個別に<葉紙>に書き分けて参ります。<附帳><葉紙>、ともに書くのは狂言作者さんの仕事です。
地方公演でない場合、つまり歌舞伎座や国立劇場などでは、各演目ごとの名題下の配役を、一枚の巻き紙に書き連ねた<はり出し>が、稽古初日から稽古場に張り出されますし、国立では、これとは別に、便箋に役名を書いたものが、送られてきます。
どちらにしましても、<はり出し>や<葉紙>を見るまで、自分の役は正式にはわからないものなのです。
さて、このところ立ち回りにでる機会が多く、責任を感じるとともに体調管理もしっかりとせなばならず、気を抜けません。皆様に楽しんでいただける、きれいでまとまりのある立ち回りになりますよう、先輩方の教えを請いながら、気を付けて取り組みたいと思います。