梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

残念…!

2005年11月23日 | 芝居
今日は合間の自由時間を利用して、前にご紹介しました『北斎展』を観ようと、東京国立博物館まで行ったのですが、あまりの盛況で入場制限されており、待ち時間が一時間とのこと。そうなると、歌舞伎座に戻れるのが『鞍馬山誉若鷹』の出番ぎりぎりになってしまいますので、泣く泣く断念いたしました。祝日で人出も多かったのでしょう。
久しぶりの写真は、夕まぐれの不忍池の枯れ蓮です。

さて…。
この前、浮世絵では歌川国芳が好きなことはお話しさせていただきましたが、他のジャンルの絵画では、日本画では上村松園、福田平八郎、現代絵画では鶴田一郎、金子國義、西洋画では<英国ロマン派>の作品、そしてアール・ヌーボーの旗手アルフォンス・ミュシャがお気に入りです。
どちらかというと、色使いが華やかで、美しい描線の作品に心引かれる傾向があるようです。上村松園さんの作品は、繊細で緊張感漂う輪郭線が作り出す美しい着物のポーズ、たおやかな女性の顔に引き込まれてしまいますし、福田平八郎さんは、男性らしいのびのびとした筆致と、明るく清々しい色使いが面白く、鶴田一郎さんの作品は、かつてCMでもつかわれておりましたけれど、現代の美人画といってもよく、グラフィカルな構図と無機質でいて艶のある美の世界がとても魅力的です。<英国ロマン派>はルネッサンスへの回帰ととらえられておりますが、神話、伝説にテーマを求めた、幻想的で官能的な作品たちには、観ているこちらの想像力を広げさせる力があります。アルフォンス・ミュシャの作品は非常に装飾的、様式的で、追求されつくした<美>があり、ポスター、広告のジャンルで活躍したというのもうなずけます。
金子國義さん、この方の作風はどちらかというと荒めのタッチで硬質な印象ですが、モチーフにはセクシャルで過激なものを選びながらも、表現方法としてはとても禁欲的で、抑制された作風には、ある種のお洒落、オトナの遊び心が感じられます。
そうそう忘れてはいけません、母国から移住した日本で日本画を学び、独特の画風を作り上げ、後に南国、大陸の風俗を鮮やかに描いた、ポール・ジャクレーも、大好きな画家の一人です。

…このごろは展覧会や個展に伺うことも減ってしまっておりますが、まだまだ新たな作家、作品との出会いを求めてゆきたいものです!