瀬崎祐の本棚

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詩集「曳舟」  原田道子  (2009/07)  砂小屋書房

2009-07-24 19:36:18 | 詩集
 103頁に23編を収める。「覚書」に「にほひ」と「におい」についての言及があり、作者の微妙な感性へのこだわりがうかがわれる。
 「子宮(こみや)」、「まみどり」、「イクサ」、「うふじゅふ」、「むおん」、「青人草」など、これまでの原田の作品にしばしば用いられてきた言葉たちがここでも絡み合いながら作品を形成している。しかし、この言葉たちが何を意味しているのかはいくら読み返しても曖昧なままだ。だから、個々の作品が孤立しているのではなく、詩集総体として立ち上がってくるものを感じるべきだろう。それに説明されてしまう言葉なんて、言葉として独立していないではないか。

   ごらん ほんのちょっとのか。ぜ。だ
   こうやってしらないうちに秘やかにいくつもの都市が滅びるのだが

   でもおかえりなさい。そろそろ
   高天原(たかまのはら)のさらなるたかみに 衝きでる 風木(ちぎ)
   国つくりには美しすぎる氷椂(ひぎ)についてもとりかからねば
                       (「おかえり」最終2連)

 言葉は意味を伝えるのではない。意味は読む者の脳細胞で形成される。言葉は各自の脳細胞に何事かを伝える伝達物質なのだ。その伝達物質が伝えた刺激によって各自の脳細胞が意味を形成する。わたしたちは言葉たちの周りを踊っているのだ。
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