第2詩集。93頁、決して華やかなところはないのだが、しっかりとした視点がある作品20編を収める。
「猫」は、「猫のように首根っこをぶら下げて」「母を捨てにいく」作品である。あまりの比喩に驚くが、実際には母を追悼する作品である。母を捨てに行こうとした私が歩き疲れると、長い脚の私を母は「仕方ないね」と背中におぶってくれるのだ。
むかしこうして
よく駄菓子屋まで行ったよ
泣き止まなくてね
幼かった私が成長して、守る者と守られる者の立場が逆転した今でも、やはり私は母に守られたがっているのだ。「今度会いに行くから」と言って、
だが訪ねると部屋は空っぽである
引き出しを開けてみるが
出てくるのは診察券と空き瓶ばかりで
猫の声もしない
お茶をいれる
湯気が立ちのぼる
その湯気の消えぬ間に一年が流れ
それでもまだ
母の出かけた先を考えている
(最終連)
いるはずの人がいないという空虚感が巧みに伝わってくる。いないことは理屈ではわかっているはずなのに、感情が未だ受け入れていない。共感を呼ぶ作品。
「ハナフブキ」という作品には、「親の捨てたものばかり/子供はなぜ 拾うのか」という一節があった。自転車に咳きこむこどもを乗せているのだが、ここでも、理屈ではない親子のつながりが感じ取れる。
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