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詩集「やがて、図書館へ」  金子忠政  (2014/09)  快晴出版

2014-10-22 22:03:55 | 詩集
83頁に17編を収める。
 書かなくてすませられるようなものは、どこにもない。とにかく書かずにはいられないことばかりが、整然と立ち並んでいる。一読すると感情のままに発語されているようにも見えるのだが、おそらくは非常に理知的に整理された上で表出されているのだろうと思える。
 「投石」。石を投げる行為には、関係が行き着いてしまった憎悪があるのだろう。心の中にも「つきることのない石が生じる」のだろう。ここにはそんな関係性にいたった物事の説明も、経緯も、理由も、なにもなく、ただたどり着いてしまった者が抱えるものだけが表出されている。石を投げるためには「選り取りの投石機がいる」し、「猛毒のカンフル」もいるのだ。最終連は、

   向き合う二つのからだのように
   石で石を呼ぶため
   受諾すべき孤独への威嚇を縛りつけ
   石を投げよ!

 「眼球」は、見えているものの意味がどんよりと濁ってくる様を描いているようだ。見えるものは「軋りつつ乾いて/底に暗くよろけ/だんまり遅滞し/眼球に溜まる」のだ。ここにあるのも怒りなのだろう。それは、自分の存在そのものに苛立っているところから来ているようにも思える。

   苦いため息をしたなら
   あとは強引に
   抗する傷口を開くため
   ありもしない顔を
   荒れ狂うように
   引き剥がした

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