瀬崎祐の本棚

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くり屋  50号  (2011/08)  広島

2011-08-05 21:07:24 | 「か行」で始まる詩誌
 「おむすび」木村恭子
(N・Sさんの思い出のために)という副題が付いている。亡くなられた方についての作品で、その方は年配の女性だったようだ。見舞いに行った病室でとりとめもない話をして、あなたは「時々 手を口元にやって小刻みに笑い 細く白い指の間から 透き通った小さな粒を ほろほろと置いてゆ」くのだ。”小さな粒”という表現に、おにぎりのご飯粒を連想させて巧みだ。おそらくその方は、あの佐藤初女がおにぎりを握っている写真に、偶然に写っていたのだろう。
 次に会いに行くとき(それは永遠に訪れないときなのだが)、

   あなたは淡い柄の浴衣をきちんと着て ベッドの上に正座しておら
   れ 私を迎えるとどこかへ出かけられる ちょっと待っていてね

   やがて やさしい形の小さなものを載せた皿をかかげて戻ってこら
   れると 次は私が話し始める番なのでした
                              (最終部分)

 この”やさしい気持ちの小さなもの”になにを思い浮かべればよいのだろうか。タイトルからは”おにぎり”ということになるが、それは伝えたいものを包みこんだおにぎりなのだろう。だから、今度は私がおにぎりを握るのだろう。哀惜の気持ちがそのままに伝わってくる作品。
 追記:あなたと交わす会話にでてくる”北欧で食堂を開く映画”とは、フィンランドを舞台にした「かもめ食堂」(萩上直子:監督)のことか。あの映画でもヒロイン達がおにぎりを握っていた。
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