瀬崎祐の本棚

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詩集「遠い日の夢のかたちは」 崔龍源 (2017/12) コールサック社

2018-03-01 22:47:05 | 詩集
 第5詩集。143頁に31編を収める。
「遠い日の夢のかたちは」では、野原で妻と心同士の会話をしている。すると遠くの空の雲がとてもなつかしく思えたのだ。おそらく、そのとき時の流れを越えた地点に心が彷徨っていたのだろう。そんなものに、

   妻とぼくは 空を回遊する
   魚のようになって こころを
   泳がせている それは
   引き寄せられたからにちがいない

 四十億年前からつづく人間のいのちの先にある自分の存在を感じている。それは大変に崇高なことだ。

 略歴に附されたことによれば、ペンネームの”崔”は韓国人の父の性とのこと。当然のこととして、作品にはその出自に関わったものもある。「無人の詩」では二つの祖国を思い、「ユクサあるいは囚人番号263」、「チェ・リサン」では彼の国で闘い、生きた人を詩っている。

 3章からなる「夢記」では、眼前の事象の奥に広がるものを見つめようとしている。「Ⅰ水分(みくまり)で」では水霊たちの思念を感じており、「Ⅱ個体」ではうつし身を越えたところにある命を考えている。「Ⅲだれか」では、人類や動植物の命さえも超越したものを詩っている。

   億年を水の中に住み暮らし
   すべてを見知っているだれか
   見者のかなしみを
   せせらぎにして聞かせている
   だれか 沈黙の
   深い声を持つものよ

 「虹色ペンギン」については詩誌発表時に感想を書いている。
コメント
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