高校時代の文集に掲載されていた「ぼくが北海道に行ったお話」という紀行文を読んだのが、北海道にはまる原点の原点であることは以前書いた。その中で、礼文島から利尻島に渡るフェリーから眺めた利尻山を次のように表現している。
「ぼくは今まで、こんなすばらしい所をみたことがなかった……まず船中から雄大な利尻富士が一歩、また一歩と近づいてくる。……青い空に白い雲が浮かび、そこを鳥が飛んでいた。……前には遠く澄んだ海が見え、そこにせり出した山状の岬に見える灯台に鳥たちが飛んでいる。そして後方には、鳥と同色の白をいただいた山が青い空の下にある。」
利尻島の姿はテレビや本などで見て知っていたが、冬の雪を頂いた利尻山はそれほどまでに美しいのか、という思いを抱かせた。
そして2回目の北海道旅行で利尻島を訪れ、快晴の一日を、ずっと利尻山を眺めながら島を車で一周し、利尻山の様々な姿を見て楽しんだ。その翌日も快晴で、礼文島に渡り、桃岩から元地灯台まで、正面にずっと利尻山を眺めながらのんびり歩いた。
3回目、4回目、5回目、6回目の北海道旅行ではいずれも礼文島に渡り、礼文岳から、ゴロタ岬から、トド島から、利尻山を何度も眺めた。
急行利尻号で朝を迎え、抜海周辺で徐行してくれる車窓から眺めた利尻山、稚咲内から眺めた夕陽の利尻山。そして稚内から礼文島へ渡る時にだんだん近づいてくる利尻山を、これから始まる旅へ胸躍らせながら眺める時、さらに、旅を終えて、心を残しつつ後ろ髪引かれる思いで眺める時。私の北海道の旅の多くの思い出に、利尻山の姿は繰り返し鮮明に刻まれている。