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桑の海 光る雲

桑の海の旅行記・エッセー・書作品と旅の写真

登山の記11・利尻山①

2006-03-07 21:04:17 | 旅行記

高校時代の文集に掲載されていた「ぼくが北海道に行ったお話」という紀行文を読んだのが、北海道にはまる原点の原点であることは以前書いた。その中で、礼文島から利尻島に渡るフェリーから眺めた利尻山を次のように表現している。

「ぼくは今まで、こんなすばらしい所をみたことがなかった……まず船中から雄大な利尻富士が一歩、また一歩と近づいてくる。……青い空に白い雲が浮かび、そこを鳥が飛んでいた。……前には遠く澄んだ海が見え、そこにせり出した山状の岬に見える灯台に鳥たちが飛んでいる。そして後方には、鳥と同色の白をいただいた山が青い空の下にある。」

利尻島の姿はテレビや本などで見て知っていたが、冬の雪を頂いた利尻山はそれほどまでに美しいのか、という思いを抱かせた。

そして2回目の北海道旅行で利尻島を訪れ、快晴の一日を、ずっと利尻山を眺めながら島を車で一周し、利尻山の様々な姿を見て楽しんだ。その翌日も快晴で、礼文島に渡り、桃岩から元地灯台まで、正面にずっと利尻山を眺めながらのんびり歩いた。

3回目、4回目、5回目、6回目の北海道旅行ではいずれも礼文島に渡り、礼文岳から、ゴロタ岬から、トド島から、利尻山を何度も眺めた。

急行利尻号で朝を迎え、抜海周辺で徐行してくれる車窓から眺めた利尻山、稚咲内から眺めた夕陽の利尻山。そして稚内から礼文島へ渡る時にだんだん近づいてくる利尻山を、これから始まる旅へ胸躍らせながら眺める時、さらに、旅を終えて、心を残しつつ後ろ髪引かれる思いで眺める時。私の北海道の旅の多くの思い出に、利尻山の姿は繰り返し鮮明に刻まれている。


登山の記10・羅臼岳②

2006-03-04 21:47:40 | 旅行記

羅臼平を山頂に向かって西に進んでいく。斜度がきつくなりかけた頃、崖の岩の間から、水が幾筋もしたたり落ちるところがある。ここが岩清水である。この水は煮沸せずに飲めるので、皆で代わる代わる飲んだ。これが大変冷たくて美味しかった。北海道ではエキノコックスの関係で、やたらと生水が飲めない。だから、こうした稀にある清水でのどを潤すことができるのは、実にありがたいものである。そこから先は、大きな岩がごろごろする斜面を、岩を飛び越えながら、そして岩をよじ登っていく。そして岩だらけの山頂に着く。

山頂からの眺めは素晴らしかった。山の西側は雲一つ無い青空である。しかし、山の東側には、雲が浮かんでいる。硫黄山は雲の間からかろうじて山頂を覗かせているばかりである。国後島も同様である。しかし、山頂は風もなく、実に気持ちよかった。

一休みの後、恒例の写真撮影タイムとなり、30人が代わる代わるカメラを交換して写真を撮り合った。1時間ほど山頂に滞在して下山した。帰りはひたすら下りなので、軽快に下っていった。山頂ではちょっと涼しすぎるくらいだった気温が、高度が下がっていくにつれて上がっていくのがよくわかった。

YHに戻ると、大住所交換会となった。後日、山頂で撮した同じ写真が何枚も送られてきたのは嬉しい悲鳴だった。そして、その中の意気投合した何人かは、翌日も一緒に行動した。カムイワッカの滝(I本さんだけが水着無しで入浴したのが忘れられない)の滝壺の湯に浸かったり、、知床大橋の奥の無名滝を眺めたり、自然センターの裏の海岸に出て乙女の涙を見たりしたのを覚えている。

今手元にある写真を見ると、レナちゃんとHさんに加え、現在でも交流のある人が3人写っている。H比野さんとI本さんである。翌日も行動を共にしたことによるのであるが、この時はまさかずっと交流が続くとは思いもしなかった。そしてもう一人のT中さんはこの時少し話をしたのだが、ずっと後になってゆわんと村で再会したのだった。私はその時はあまりよく覚えていなかったのだが、T中さんの方が覚えてくれていた。

念願の山に登れたことに加え、親しい人と登ることができ、しかも、人との出逢いをもたらしてくれたこの山行は、数ある山行の中でも特に印象深いものである。


登山の記9・羅臼岳①

2006-03-02 21:42:39 | 旅行記

前の年に眺めた山々に登る時が、早くも翌年やって来た。就職した最初の年の8月上旬、私は礼文で最高の1週間を過ごした。数え切れないくらい訪れた星観荘で、あの時が一番楽しかった。

その余韻に浸りつつ、お盆過ぎに私は旅先で知り合ったHさんと一緒に、夏の終わりの道東を車でまわることになった。北海道歴の長いHさんによれば、8月後半の道東は天候も安定しますよ、と話していたので、念願の羅臼岳に登ることに決めたのである。Hさんもまだ登ったことがないと言うので、一緒に登ってもらえるとありがたい、と言ってくれた。

お盆過ぎなので、岩尾別YHには1ヶ月前に予約を入れておいた。到着してみるとやはりほぼ満館である。その8月上旬に星観荘で一緒だったレナちゃんも、前もって約束しておいたとおりやって来た。一緒に羅臼岳に登るためである。

翌日は素晴らしい天気だった。羅臼岳には30人近い人が登ることになった。私は車にHさんとレナちゃんを乗せてホテル地の果てに向かった。

大人数であるが、最年長のライダーの男性が音頭取り(これが実に上手かった)をしてくれ、30人がほぼ一団となって登っていった。

初めはずっと樹林帯が続く。この後皇太子が登る予定なので、登山道はきれいに整備されている。樹林帯が切れると、登山道は谷沿いに続く。これをしばらく歩き続けると大きな樹木が消え、ハイマツが目立つようになる。ハイマツと言っても日本アルプスにあるようなその名の通りのハイマツではなく、知床名物、樹高が2メートルほどもあるような巨大なものである。

登山道は谷を外れ、ひょっこりと平らな場所に出る。羅臼岳と三ツ峰に挟まれた羅臼平である。ハイマツ(ここは風が強いためか、普通のハイマツである)に覆われた平地に、石敷きの平地が広がる。ここで一休みする。天気は素晴らしいが、三ツ峰方面の山には、北側から雲がかかり始めている。今日はかなり気温が高いので、雲が発生しやすいのかも知れない。でも、羅臼岳には雲がかかる気配はないので、山頂からの素晴らしい眺めが期待された。