桑の海 光る雲

桑の海の旅行記・エッセー・書作品と旅の写真

雲ノ平周遊③

2018-08-11 09:49:54 | 旅行記
3日目の8/3は2つの山に登頂します。三俣山荘からいきなりの急登、それでも1時間で山頂に着きました。この日は残念ながら雲が多く、鷲羽池の向こうにも、山頂の向こうにも、本来見えるはずの槍ヶ岳は見ることができませんでした。また風も強く、稜線歩きの際は今回の山行で唯一、合羽の下を穿きました。

ワリモ岳を通って水晶岳に近づいていきます。次第に雲が晴れ、槍ヶ岳方面が見えてきました。大天井岳や常念岳も見えてきました。西には黒部五郎岳も少しずつ姿を現し始めました。水晶小屋に近づくと、これまでと植生が変わりました。タカネシオガマとチョウノスケソウ、ミネウスユキソウとイワギキョウが目に付くようになりました。特にこの辺りにしか見られなかったチョウノスケソウは既に散っていたものの大群落を作っており、これまたあと10日ほど早く来ていたら、見事な群落を見ることができたのにと思うと残念でした。

水晶小屋を過ぎて、水晶岳への登りにかかります。ここでも前々日に薬師岳山荘でご一緒した若い男性とすれ違いました。この人は私と全く反対のルートでこの4つの山を登頂するとのことでしたが、彼から前夜の雲ノ平山荘の混雑ぶりを耳にして、ちょっと不安になってきました。

山頂手前の登りはなかなかハードで、はしご場もあり、岩を乗り越え乗り越えして何とかたどり着きました。山頂はごつごつした岩場で狭く、幸い人も少なかったので、ガスが晴れるのを待っていると、30分ほどして次第に晴れてきました。遠くに以前登頂した槍ヶ岳、手前に先ほど登頂した鷲羽岳、南西の方角には前日登頂した黒部五郎岳が次第に見えてきました。北アルプス最奥部の山に登頂できた感激は一入でした。

水晶小屋に戻りお昼にしました。実は三俣小屋で作ってもらった弁当を忘れてくるという失態を演じてしまい、代わりに水晶小屋名物だという力汁を、小屋の前のデッキで、水晶岳を眺めながらいただきました。大振りに切った野菜がたくさん入った味噌汁に焼き餅が2個入っています。思いがけず美味しいものにありつけたのは幸いでした。横にいた年配の女性からいきなり「ねぇ、何で山に登ってるの?」と聞かれたのには面食らいましたが。ちなみにこの方とは後で雲ノ平山荘で再会しました。

水晶小屋を後にし、ワリモ北分岐から祖父岳に向かいます。祖父岳は北アルプスには珍しい火山ということで、足下には溶岩がゴロゴロ転がっていて、大雪山旭岳や十勝岳を思い出しました。祖父岳山頂は広々とした場所で、四方には北アルプスの山々がぐるりと聳えています。赤牛岳と三俣蓮華岳以外の、槍ヶ岳、鷲羽岳、ワリモ岳、水晶岳、立山、薬師岳、黒部五郎岳、笠ヶ岳には登頂したことがあるのは感慨深いものがありました。中でも特に印象深いのは黒部五郎岳の姿でした。三俣山荘への登りの時に振り返って見たどっしりした姿とは異なり、形良くすらりと聳えています。前日目にした、北ノ股岳から黒部五郎岳までの稜線からの眺め以上に、祖父岳山頂からの眺めは素晴らしいもので、恐らく私が今まで登山の時に見た光景の中で最も感動的なものだったと言って良いと思います。山頂で出会った2人の別々の男性といろいろな話をし、写真を撮ってもらったりしてしばらく時間を過ごしました。

名残を惜しみつつ祖父岳を後にし、雲ノ平へ下りました。残念ながら雨が少なく高温のために、池塘はほとんど干上がっていました。しかし、雲ノ平の向こうに聳える水晶岳の姿は、これまで見たことがないほど力強く印象的なものでした。

雲ノ平山荘では、祖父岳で写真を撮ってくれた男性の他、初日の宿泊地以外はずっと同じルートをたどっている埼玉の年配の男性2人組、三俣山荘でご一緒した福島からの男性3人組、水晶小屋で声を掛けられた女性2人組と一緒になりました。前夜隣で寝た若い男性も一緒になりましたが、彼は何と道を間違って高天原山荘まで下ってしまったとのこと、温泉は気持ちよかったそうですが、ちょっと気の毒でした。

雲ノ平山荘の夕食はこれまた名物の石狩鍋。大振りに切った野菜がたくさん入り、塩分不足の体には味噌の優しい塩味が浸みます。私の座ったテーブルは女性ばかりだったので、一人で3杯もおかわりし、お腹いっぱいになりました。山小屋の食事でお腹いっぱいになったのは初めてでした。

夕食後、山荘の北にある丘に登り、夕日を見ました。夕日に染まった水晶岳の姿は昼間とはまた違った美しさがありました。祖父岳山頂からは見えなかった立山も見えました。
また、ここではスマホが通じました。3日ぶりにスマホを使いましたが、使わなくても十分やっていけるし、使えなかった分、山小屋や山頂で一緒になった人達といろいろ話すことができたのだと思います。

小屋は満員(私のところは7人で5枚の布団でした)でかなり暑く、寝付けないと思われたのと、この夜が最後の晩ということもあり、高天原まで行ってしまった男性と、福島からの3人組と、山行の思い出や、今まで登った山のことを話しながら、一杯やって寝ました。やはり大変な暑さで、室内の気温は30度近くあったのではないでしょうか。申し訳程度に着いている小窓を開けてもらい、布団も掛けないで何とか3時間ほど寝ることができました。(歩行距離10.4㎞、歩行時間7時間45分)


水晶岳山頂部分

野口五郎岳

薬師岳と水晶岳

水晶岳から槍ヶ岳・鷲羽岳方向を望む

祖父岳より薬師岳

祖父岳より黒部五郎岳

祖父岳より鷲羽岳と槍ヶ岳

雲ノ平より赤牛岳と水晶岳

雲ノ平より夕焼けの水晶岳

雲ノ平より夕焼けの赤牛岳

雲ノ平からの夕焼け

雲ノ平山荘からの夕焼けの黒部五郎岳
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 雲ノ平周遊② | トップ | 雲ノ平周遊④ »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

旅行記」カテゴリの最新記事