「とばとばしとる」とは地元の方言で、まあ、おっちょこちょいというか、あわてん坊というか、そういう類の言葉である。しかしキヨちゃんの場合、少しニュアンスが違うのである。慌てて何かを「あ、やっちゃった。」なんて感じではなく、ごくごく自然にやってのける、いわゆる「天然」である。
テーブルの上にうっかりペットの餌など置こうものなら、食べられそうになる。デカデカと犬の絵が描いてあってもである。おしゃれな一輪挿しを買って帰った時、くわえてみようとしたこともある。
ある日、悲鳴と共に顔面白塗りのキヨちゃんが飛んできて、父と私は腰を抜かしそうになった。何でも父の車の塗装が剥げかかったところを修繕しようと、スプレーのペンキを使ったらしいが、それを顔に受けたらしい。
「何でそんなことになったん?」
私の質問に、キヨちゃんの説明はこうだった。
「目が悪いもんやから、スプレーの穴がどっちにむいとるか分からん。注意しないととんでもないところに吹き付けるぞ・・・と思って、目を近づけて見たん。で、こっちが穴かなあ?と思いながらスプレーを押したん。」
残念なことに目の方に穴が開いていたものだから、白塗りとなったのである。
幸い大事には到らなかったが、怒りながら顔を拭いてやる父の手が、笑いで震えているのを私は見逃さなかった。
こんなキヨちゃんにふりまわされている私たちこそ「とばとばした」人間に見えることだろう。
テーブルの上にうっかりペットの餌など置こうものなら、食べられそうになる。デカデカと犬の絵が描いてあってもである。おしゃれな一輪挿しを買って帰った時、くわえてみようとしたこともある。
ある日、悲鳴と共に顔面白塗りのキヨちゃんが飛んできて、父と私は腰を抜かしそうになった。何でも父の車の塗装が剥げかかったところを修繕しようと、スプレーのペンキを使ったらしいが、それを顔に受けたらしい。
「何でそんなことになったん?」
私の質問に、キヨちゃんの説明はこうだった。
「目が悪いもんやから、スプレーの穴がどっちにむいとるか分からん。注意しないととんでもないところに吹き付けるぞ・・・と思って、目を近づけて見たん。で、こっちが穴かなあ?と思いながらスプレーを押したん。」
残念なことに目の方に穴が開いていたものだから、白塗りとなったのである。
幸い大事には到らなかったが、怒りながら顔を拭いてやる父の手が、笑いで震えているのを私は見逃さなかった。
こんなキヨちゃんにふりまわされている私たちこそ「とばとばした」人間に見えることだろう。