みちのくの山野草

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『本統の賢治と本当の露』(160~163p)

2021-01-14 12:00:00 | 本統の賢治と本当の露
〈『本統の賢治と本当の露』(鈴木守著、ツーワンライフ出版、定価(本体価格1,500円+税)〉




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〈註七67p〉《表7 昭和2年稻作期間豊凶氣溫》は盛岡測候所が、昭和2年9月7日付『岩手日報』に発表したものであり、「繁殖期間(つゞき)」においても、「出穂期間」においても偏差平均が高いから、昭和2年の夏は例年よりも気温が高かったことになる。したがって、「昭和二年はまた非常な寒い氣候が續いて」とは言えそうにない。
 当時福井規矩三は盛岡測候所の所長だったのだから、なおさらのこと間違うわけはないと私は思うのだが、福井は《表7 昭和2年稻作期間豊凶氣溫》等を確認せぬままに、「昭和二年はまた非常な寒い氣候が續いて、ひどい凶作であつた」と「測候所と宮澤君」に書いてしまったことになりそうだ。
〈註八70p〉例えば『岩手県の百年』によれば、
 大正末期から「早生大野」と「陸羽一三二号」が台頭し、昭和期にはいって「陸羽一三二号」が過半数から昭和十年代の七割前後と、完全に首位の座を奪ったかたちとなった。これは収量の安定性、品質良好によるもので、おりしも硫安などの化学肥料の導入にも対応していた。しかし、肥料に適合する品種改良という、逆転した対応をせまられることになって、農業生産の独占資本への従属のステップともなった。反面、耐冷性・耐病性が弱く、またもや冷害・大凶作をよぶことになった。(『岩手県農業史』、『岩手県近代百年史』) <『岩手県の百年』(長江好道等著、山川出版)124p>
〈註九70p〉大島丈志氏によれば、
 陸羽一三二号は、近代化学肥料によって育成されたため、多肥性の品種であり、多くの購入肥料=金肥の投下が必要であった。…(筆者略)…これらの肥料の購入は自給自足的であった農村を急速に商品経済に組み込むこととなった。しかし、肥料商から金肥を買い、金肥を投下して豊作となっても、米価の下落で、豊作貧乏となり、肥料購入費が負債となることによって小作などの貧しい農家は困窮することになった。<『宮沢賢治の農業と文学』(大島丈志著、蒼丘書林)223p>
ということで、殆どこの指摘のとおりだと私も思う。 ただし、最後の「小作などの貧しい農家は困窮することになった」についてははたして如何なものだろうか。それは、私には次のように考えられるからだ。
 もともと、お金がなければ購入できない金肥を必要とする賢治の稲作指導法は、困窮していた貧しい自小作や小作等のいわば小農にとってはそもそもふさわしいものではなかっただけでなく、出来高の半分以上も「搾取されるような」当時の小作料であれば、

小作する農家はこの農法に意欲が湧かなかったことは当然であろう。そして注意すべきは、当時米価は年々急激に下がっていったから、金肥を購入して陸羽一三二号に頼って増産を図ろうとした中農がシェーレ現象に見舞われたであろうということである。そのせいで、その頃に中農から自小作あるいは小作になっていった例も少なくないはずだ。実際上掲の《図3》から、年々「自作」の割合は漸減し、逆に「自小作+小作」の割合が漸増していることが読み取れるので、そのことが裏付けられる。
 したがって、この稲作方法によって最も困窮することになったのはもともとそうだった「小作などの貧しい農家」ではなく、それまで比較的恵まれていた中農ともいえる自作農家だったのではなかろうか。
〈註十79p〉昭和七年419 六月一日〔森佐一あて〕書簡下書には、
 いままで三年玄米食(七分搗)をうちぢゅうやり

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           〒025-0068 岩手県花巻市下幅21-11 鈴木守
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