みちのくの山野草

みちのく花巻の野面から発信。

座談(「252a」「252b」についての疑問)

2019-01-25 16:00:00 | 濡れ衣を着せられた高瀬露
《『宮澤賢治と高瀬露』(上田哲・鈴木守共著、友藍書房)の表紙》

 書簡下書「252a」「252b」についての疑問
鈴木 それでは、とは言っても〝一連の「書簡下書」〟が露宛のものだという可能性はあまりなさそうだが検討してみるか。
吉田 まずは「252a」についてだ。
鈴木 この「252a」、またの名「不5」は以前も話題にしたように、その中には「法華をご信仰なさうですがいまの時勢ではまことにできがたいことだと存じます」という一文があり、この「法華をご信仰なさうですが」という一言から、果たしてこれは賢治が実際に露に宛てて書こうとした「書簡下書」であるかどうかについては疑問に思っている人がいるだろう。
吉田 確かにそのとおりで、実際、 
 ひょっとするとこの手紙の相手は、高瀬としたのは全集の誤りで、別の女性か。(愛について語っているのだから男性ということはない。当時男は愛などは口にしなかった。)それに高瀬はクリスチャンなのに、ここは<法華をご信仰>とある。以上疑問として提示しておく。<『宮沢賢治の手紙』(米田利昭著、大修館書店)223pより>
という疑問を米田利昭は投げかけている。
鈴木 それから今のこと程は重大な問題でないのだが、前掲の「新発見」の書簡下書「252b」についても私は多少疑問がある。もしこれが露宛であるとすれば、賢治は少なくとも「南部様と仰るのはどの南部様が招(ママ)介くだすった先がどなたか判りませんが」などというようなつっけんどんな書き方はしないと思うからだ。
荒木 それはなんでまた?
鈴木 というのは、羅須地人協会員の一人伊藤與蔵の、
 ただ先生が病気で休んでいる時、お見舞いに行ったことがありますが、何の話をされた時でしたか覚えていませんが「法華経について知りたかったなら高瀬露子さんが良い本を持っていますからお借りして読んでみなさい」と言われたことがあります。その本の名前は忘れましたが「日蓮宗の何とか」というような気がします。私は高瀬さんへ行ってその本をお借りして読み、先生に言われた農学校前の南部さんのお寺へ返しました。<『賢治とモリスの環境芸術』(大内秀明編著、時潮社)42pより>
という証言からは、賢治は「法華経に関するある本」を露に又貸しし、與蔵はさらにそれを露から又借りし、結局最終的には與蔵が本来の持ち主の「農学校前の南部さんのお寺」に返したということがわかるからだ。
荒木 そうか、賢治と露との間には少なくとも共通に認識していた「南部」が一つはあったと考えられるから、そんなつっけんどんな言い方をする訳はない、ということになるのか。それにしても、ということはやはりある時期賢治と露は案外良好な関係にあったんだ。
鈴木 あっそういうことか。賢治が「南部さんのお寺」から借りた本を露に又貸しするくらいだから、二人の間にはかなり信頼関係があったと確かに言えるからな。
吉田 しかしさ、つっけんどんだったのは露を拒絶するためにわざとそう言い放ち、とぼけたということかもしれんぞ。
荒木 でも賢治はそんなとぼけ方をするか。がもしそうであったするならば、少なくともある時期までは露と親密で良好な関係にあった賢治が、その相手露に対してこんな言い方をしていたということになるので正直がっかりだな。俺の尊敬する賢治がそんなことをするはずはない…。
 そうだわかった。もしかすっと、この「書簡下書」はだれかが偽造したものかもしれんぞ。そもそも前から感じてたのだが、「252c」を読んでみるとその文章表現の仕方はとてもじゃないが賢治のイメージからはほど遠い、と。
吉田 おいおい物騒なことを言うなよ。確かに賢治のイメージからはほど遠いが、よりによって偽造はないだろう。
鈴木 いずれ、「252a」にせよ、はたまた「252b」にせよ、それらが露宛のものであると断定するためにはまだまだ乗り越えなければならないハードルがあるということだ。とりわけ、米田も指摘しているところの「ここは<法華をご信仰>とある」という疑問は必ず解消せねばならないそれだ。それができなければ、いくら「露宛書簡下書」だと断定したところで客観的な説得力は持ち得ないだろう。
荒木 それじゃ、俺もそれに異議がないから現時点での俺たちの結論は
 あやふやな点が少なからずある書簡下書「252a」及び「252b」については「露宛書簡下書」とは断定できない。
ということで決まりだべ。

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      〒025-0068 岩手県花巻市下幅21-11 鈴木守
               電話 0198-24-9813

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