みちのくの山野草

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帰花後の賢治

2021-02-24 12:00:00 | 賢治の「稲作と石灰」
〈『宮澤賢治と東北砕石工場の人々』(伊藤良治著、国文社)〉

 では、ここからは『宮澤賢治と東北砕石工場の人びと』に戻って、その中の項「二 帰花後の賢治と工場の関わり」からである。
 この項は次のようにして始まっていた。
 花巻にもどってからの賢治の病状は重く、石灰のセールスに動き回る状態に戻るどころか、しばらくは床に臥したまま、東蔵宛の書簡連絡も家族による代筆が三度続いたことは前述のとおり。…投稿者略…その後既述の十一月一日、十一月二十七日、十二月三日と、引き続く三回の書簡が代筆によらねばならないという病態のまま、昭和六年は暮れていく。
             〈『宮澤賢治と東北砕石工場の人びと』(伊藤良治著、国文社)188p〉
 念のため『新校本 宮沢賢治全集〈第15巻〉書簡・本文篇』で確認してみると、
 397 十一月一日 鈴木 東蔵あて 私製葉書〔代筆〕
 398 十一月二十七日 鈴木 東蔵あて 私製葉書〔代筆〕
 400 十二月三日 鈴木 東蔵あて 私製葉書〔代筆〕 
となっている。たしかにこの時期、賢治は代筆で東藏宛書簡を出しているということになるだろうから、「しばらくは床に臥したまま」と言えるだろうし、それもかなり重病なものであったと。
 それから、これらの書簡の前後のものを確認してみると、397の前のものとしては、
 396 〔十月末〕八木源次郎あて 下書
 …投稿者略…唯私事先月末仙台水戸を工場の用にて巡歴致し東京着と共に直ちに発熱致し流感より気管支炎肺炎と変じ約一ヶ月間三十八度前后の熱に苦しみ近日漸く恢復の兆相見え候へ共尚未だ起床に至らずご多忙の処御手伝も致し兼ぬる次第何とも御申訳なく存候…投稿者略…
があり、400の後のものとしては、
〔402〕昭和七年 一月二十九日 高橋久之丞あて 封書
拝復 貴簡拝誦 早速御面談致度候へ共何分にも咽喉気管支の疾患にて少しく強く物言へば、数日の間病状逆行し尚茲一ヶ月は病室を離れ兼ね候間、肥料設計は先づ手紙にて御送り申上べく候
就て特に左記の事項御詳記御郵送被成下度候
 一、昨年の設計書及実際施用表。
 二、右による反当収量概算及米質。
 三、成育状況その他に付て御気づきの点。
 四、本年の大体方針(昨年より多くとか少くとか。)及反当金肥使用価格。
右によって充分慎重に御設計可申上候
             〈以上、共に『新校本 宮沢賢治全集〈第15巻〉書簡・本文篇』〉
があった。
 ということからは、前者に従えば、帰花後の賢治は〔十月末〕になっても、「未だ起床に至らず」と言えるだろう。そして、後者〔402〕からは「咽喉気管支の疾患にて少しく強く物言へば、数日の間病状逆行」ということではあるが、代筆ではないことからは、「昭和七年 一月二十九日」頃になったならば、以前に比べると病状は幾分回復していたと言えるだろう。

 そしてこの〔402〕の1週間後に出した同じく高橋久之丞宛の書簡からは、賢治の大きな心境の変化が読み取れるというのだが、それは次回へ。

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           〒025-0068 岩手県花巻市下幅21-11 鈴木守
                      電話 0198-24-9813
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