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〝「宮澤賢治と髙瀨露」出版〟(盛岡タイムス社)

2021-01-15 10:00:00 | 濡れ衣を着せられた高瀬露
 人物像に迫る  「宮澤賢治と髙瀨露」出版
 森義真さんら研究者 講演、論文を冊子に
 
 宮澤賢治(1896―1933)と交流のあった元小学校教員の髙瀨露(1901ー70)の関係を考察した「宮澤賢治と髙瀨露―露は〈聖女〉だった―」(露草協会編・発行)が出版された。
 髙瀨露は、賢治が農民たちに農業技術や農業芸術論を講義していた羅須地人協会(らすちじんきょうかい)に強引に出入りし、賢治に一方的な恋愛感情を寄せていたとされる女性。この説に疑問を持ったのが研究者の上田哲(あきら)さんで、上田さんの研究を引き継ぐ形で「露―悪女」説の根拠を探り、賢治の著作や関連資料、関係者の証言を基に考察した。
 近代文学研究者の森義真さん(盛岡市)が今年3月に矢巾町で行った講演「賢治をめぐる女性たち―髙瀨露について―」(露草協会主催)の講演録を収録。故上田哲さんの論文「宮澤賢治伝」の再検証(二) ―〈悪女〉にされた髙瀨露―」、鈴木守さん(花巻市)の「私たちは問われていないか―賢治と〈悪女〉にされた露―」を収めた。A5版、59㌻、ツーワンライフ社。県内の主な書店で扱っている。

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 去る2020年12月28日の『盛岡タイムス』紙上に、「露草協会」が編集した〝「宮澤賢治と髙瀨露」〟の出版に関する上掲のような記事を載せてもらいました。まことにありがとうございます。
 同書の後書きに、
     おわりに 
『露草協会』会長 高橋征穂
 私は上田哲さんとは昔から懇意であった。妻が上田さんと小学校の同窓であったことが切っ掛けであったのだが、爾来、東京在住の頃はしばしば一献傾けたものである。その後私は岩手県に帰郷して古書店を経営していた。そこで、当時石川啄木の研究もしていた上田さんから、参考文献等の調達依頼等を受け、貴重な資料も発掘できたこともあったりして、付き合いはずっと続いた。
 一方私は、関徳弥が昭和五年に書いたとみられる『短歌日記』を発見したので、平成15年7月28日に牧野立雄氏と一緒に記者会見を行ってこのことを公にした。それはとりわけ、その日記には、生涯独身を通した賢治だが、羅須地人協会の唯一の女性会員で小学校教諭の高瀬露との結婚話の記述があったからだ。
 その後、高瀬露のことを調べていたならば、上田さんが当時勤務していた七尾短期大学の論文集『七尾論叢 第11号』(平成8年)に、「「宮沢賢治伝」の再検証㈡―<悪女>にされた高瀬露―」と題して論文を発表していたことを知った。それは、巷間流布している高瀬露に関する悪女伝説を上田さんが再検証をしてみたところ、実はそれは冤罪的伝説であった、ということを実証できたという内容の論文であった。私は何かの縁を感じたものだった。しかしながら残念なことに、実はこの論文は未完であり、上田さんは完成せぬまま急逝してしまった。
 その後、前掲の記者会見等を知った鈴木守君が、この「伝説」が気になっているということで私のところにしばしば訪ねて来るようになり、私は上田さんや露に関する資料等を教えてきた。その結果、鈴木君は上田さんの論文を基に、高瀬露は〈悪女〉とは言えないということを、仮説検証型研究という手法によって実証し、それを『本統の賢治と本当の露』(ツーワンライフ、平成30年年4月)等で公にした。
 さらに、森義真君には以前から続けてきた「イーハトーブ本の森文化サロン」で何度か講演をしてもらってきたこともあり、今年3月20日にも講演をしてもらったが、それがこの『賢治をめぐる女性たち―高瀬露について―』である。森君は「はじめに」で述べているように、「露は「悪女」ではない、という確信を持つに至り、多くの関係者の証言からは、むしろ「聖女」というイメージが浮かんできた」ということであり、本講演を、
 「高瀬露=〈悪女〉」というこれは本当に濡れ衣だと私は言いたい。それについては上田哲さんがまず問題提起をし、それを踏まえて鈴木守さんが主張している。それに私は大いに賛同します、ということです。
と締め括った。
 これで、露は「悪女」ではないということの太鼓判を森君に押してもらえたので、私はとても安堵している。というのは、私もこの「悪女伝説」は濡れ衣だということを早くから確信し、しかもこれは人権問題だからその濡れ衣を晴らさんと決意して、そのための組織『露草協会』を設立し、ここまで取り組んできたのだが、それはとても長い道のりだった。しかしこれで、やっとその辿り着く先がかなり見えてきたからだ。
 さりながら、これで高瀬露は「悪女」ではないということは理論的にはほぼ完璧なものとなったものの、もっと大切なことは、この濡れ衣の流布によって奪われた高瀬露の尊厳と貶められた人格を取り戻すことである。そのためにはまず、この理不尽な実態を広く世に知ってもらうことが必要だと判断し、本書『宮沢賢治と高瀬露―露は〈聖女〉だった―』を『露草協会』からこの度出版した次第である。併せて、
 生前賢治が、血縁以外の女性の中で一番世話になったのが露だ。ところが、その露がとんでもない〈悪女〉にされているという実態があるので、このままでは、賢治はいわば「恩を仇で返した」ということになり、「歴史」から誹られる虞がある。 
と鈴木君は憂慮しているが、この書を世に広く読んでもらうことにより、そうならないことを願いつつ、本書が、賢治と露そして上田さんへの手向けとなることを願っている。
 最後になりましたが、本書発刊に当たり、「髙瀬露と伊藤チヱのこと」を寄せて下さいました、宮沢賢治学会イーハトーブセンター元代表理事 萩原昌好氏に心から感謝申し上げます。
令和2年8月5日
と述べましたように、本書によって、高瀬露は「悪女」ではないということは理論的にはほぼ完璧なものとなったものの、もっと大切なことは、この濡れ衣の流布によって奪われた高瀬露の尊厳と貶められた人格を取り戻すことです。そのためにはまず、この理不尽な実態を広く世に知ってもらうことが必要だと判断して『露草協会』は本書を出版いたしました。
 つきましては、多くの方々に本書をぜひ御覧になっていただきたいです。
『露草協会』会長 高橋征穂

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《新刊案内》
 『宮沢賢治と高瀬露―露は〈聖女〉だった―』(「露草協会」、ツーワンライフ出版、価格(本体価格1,000円+税))

は、岩手県内の書店で店頭販売されておりますし、アマゾンでも取り扱われております
 あるいは、葉書か電話にて、入手したい旨のお申し込みを下記宛にしていただければ、まず本書を郵送いたします。到着後、その代金として当該金額分の切手を送って下さい(送料は無料)。
            〒025-0068 岩手県花巻市下幅21-11 鈴木守
            ☎ 0198-24-9813
 なお、目次は次の通りです。

 そして、後書きである「おわりに」は下掲の通りです。



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