ども、砂川です。
カズオ・イシグロの2冊目、「私を離さないで」を読み終わりました。
先に読んだ「日の名残り」がとても爽やかな読後感だったので、似たカンジを想像してました。
イングランドのある施設出身の「介護人」キャシーは「提供者」と呼ばれる人たちの世話をしています。
かつて同じ施設で同級生だった友人ともその関係で再会し、施設での思い出を回想します。
主人公が回想録というカタチで語りかけてくる文体は「日の名残り」と同じで、これがイシグロの手法なんでしょうね。
学校のようなその施設で、先生や同級生たちとのとりとめもない思い出はやや冗長で、小説の前半部分は退屈な感があります。
ところが、あるトコロで話が急展開!
え”---っっっ!!! そんな内容だったのーーーっっっ???
予備知識がないまま読み始めたので、その驚きは凄まじかったです。
「提供者」たちは臓器提供のために造られたクローンで、施設の卒業後も職業の自由はなく、住む場所も制限され、もちろん提供を拒絶するコトもできない存在だったのです。
主人公とその友人たちが、クローン細胞を提供した「オリジナル」に会いに旅に出る場面など、本来ならばとても感情的になりそうなのですケド、抑制された文体で淡々と描いてます。
世間での評価は、イシグロの最高傑作と絶賛、あるいは問題外のワースト作品、と両極端のようですケド、私はコレほど驚いた作品はかつてなかったように思います。
あと、前半と後半で読むスピードが全然違ったのも・・・。(笑)