ども、砂川です。
本屋さんへ行っても新潮文庫か文春文庫の棚に行くのが常で、普段は中公文庫などめったに見ないのに、なぜか吸い寄せられるようにこの小説を買いました。
いやぁ、参った。(笑)
さすが浅田次郎さん、言葉にするのがなかなか難しいくらい面白かったです。
代々、参勤交代道中の御伴頭を務める父親の突然の死によって、その後任をいきなり任された小野寺一路。
子供の頃から江戸詰であり、お国へ帰るコトさえ初めて、ノウハウなどなにもわからないまま、実家の焼け跡から出てきたマニュアル本「行軍録」を頼りに無理難題に挑みます。
粗相があればお家取りつぶし、その重圧の中での悪戦苦闘ぶりや人間的成長がテーマなのですケド、実は主家転覆を謀ったお家騒動が背景にあるコトを知り・・・。
ドラマ化もされたようですケド、テンポのいい物語の展開がいかにも映像化にもってこいな気がします。
武士としての矜持、忠義、「一所懸命」という生き様を背景に、あるいは長年続いた武家社会の矛盾なども浮き彫りにしながらも、思わず「クスッ」と笑ってしまうエッセンスにあふれています。
しかし、さすがは浅田次郎さん、決して軽くは感じない文章力、表現力でグイグイ引き込みますね。
「たとえ揺るがざる巌戸であろうと力の限り押さねばならぬ」
「おのが分限をわきまえ、過ぎたるも及ばざるも罪と心得ねばならぬ。全き武士とはさなるもの」
「武士の面目は他聞他目にあらず、常に自聞自目に恥ずことなきように生きよ」
私の生涯の範とさせていただきます。