鈴木すみよしブログ

身近な県政にするために。

浜岡原子力発電所 地震津波対策工事の視察

2012年03月14日 | 議会活動

平成24年3月14日(水) 

 浜岡原子力発電所の地震津波対策について現地視察してきました。

 

 (浜岡原発の全景、内部はテロ対策などのため写真撮影は厳禁)

 

 昨年3.11東日本大震災による福島第一原発事故は、原子力の安全神話の崩壊とエネルギー政策の全面見直し、それに関連して日本経済のあり方に大きな転換期を与えました。

 原子炉の永久停止や廃炉などを求め、原子力発電所のある周辺自治体や議会などの他、各方面から声が上がっています。

 静岡県としては、知事も議会も永久停止とか廃炉について結論は出ていませんが、重要なことは「安全第一」のエネルギー確保と経済活動への最小限の影響を配慮することではないでしょうか。

 

(中部電力浜岡原子力発電所 水谷所長から概要報告)

 

(自民改革会議 大石代表から訪問受け入れに対するお礼と要望

 

 現在、浜岡原発は1号機から5号機まであり、1、2号機は廃炉、3、4号機は定期点検中で停止、5号機は昨年5月14日に菅元総理の要請で停止中であり、全ての原子力発電が行われていません(使用済み核燃料は残されたままです)。この機会を捉え発電所内で施されているのが、東海・東南海・南海地震の三連動を想定した地震・津波対策です。

 今まで浜岡原発は、1707年宝永地震や1854年安政東海地震(東海・東南海の二連動)を上回る600ガルへの耐震性を確保してきましたが、様々な安全に対する指摘と三連動地震を考慮し、3号機から5号機までは目標地震動(岩盤上で1,000ガル)に耐えられるよう耐震化を向上させています。これは3.11前の平成20年3月に工事は完了していました。しかし、3.11では津波の問題が大きく影響し、それに対応する工事が平成24年12月末を目標に進んでいます。この工事を含め、休止中の発電所の保守管理のために、平成24年2月1日現在で中部電力従業員789人、協力会社従業員2,990人が働いています。

 今現在、休止中の施設にこれだけの人が張り付かなければ安全が確保できないともいえることで、仮に廃炉に向かうことになったとしても、安全確保のための要員が何人、どのくらいの期間必要なのか、その数は膨大で国などの支援方針を示さなければ、実現が不可能な状態といえるでしょう。民間企業の範疇を大きく超えています。

  

(配布された説明資料)

 

今回の視察は次のような内容で実施しました。

(1)        緊急事態対策訓練(視察のために開催されたのではなく偶然の機会)

(2)        防波壁工事現場

(3)        3号機海水系ポンプ防水壁

(4)        3号機緊急時海水取り組み設備

(5)        高台造成工事現場

(6)        質疑応答

 

 なお、発電所内はテロ対策などにより、カメラ、携帯電話の持ち込みは厳禁で、厳重なセキュリティチェックのもと視察しましたので、皆さんに提供できる現場の写真はありません。しかし、会社側から提供された資料があり、それを参考に検証しました。なお、下記のホームページに提供された情報が地震・津波対策ですので参考として下さい。

http://www.chuden.co.jp/energy/hamaoka/hama_info/hinf_jiko/index.html?cid=ul_me )

 

1.緊急事態対策訓練

 発電所内にある緊急事態対処施設にて、万が一の原子力事故の発生をくい止める訓練です。免振構造施設で放射性物質の進入を防ぐなど「最後の砦」として機能を発揮しそうです。現在、ここから2km離れたところにある国が設置した事故時における対処施設浜岡原子力防災センター(オフサイトセンター

http://www.nisa.meti.go.jp/genshiryoku/bousai/ofusaito.html )は、福島第一原発事故の影響で5km以上離れたところに移転が求められていますが、静岡県では富士山静岡空港隣接地を要望しています。

 原子炉が制御不能で身の危険がある場合は、できるだけ近いところで情報収集し対処することになりますが、発電所内に設けられたこの施設が、本当の意味での最悪の事態を回避する「最後の砦」であり、そこに従事する人たちの訓練状況は真剣そのもので、原発が稼働中であろうが休止中であろうがここに関わる人たちの存在を忘れてはいけないと思います(福島第一原発も事故後施設内で復旧作業する人たちと同じ)。この訓練に550名余の職員が参加していました。

 危機管理では「万が一、最悪のシナリオ」を想定することが重要で、「想定すること事態、このような状況があるから100%安全ではない」という意見がありますが、理解はしますが、身近なところでは車や飛行機の事故でも様々な場面で「万が一」対策が講じられ、社会を危機から守っています。

 

以下に当日の訓練の流れを説明します。

・       地震発生(御前崎市震度7)

・       津波襲来

・       全交流電源喪失

・       津波収束、復旧作業開始

・       5号機注水機能喪失、原子炉水位低下

・       5号機急速減圧、注水機能確保

 

2.防波壁工事現場

 防波壁本体工事は基礎部掘削および地中壁の工事が行われています。防波壁は津波対策の施設で、海岸側から砂丘(海抜10~15m)があり、防波壁(海抜18m)、発電所敷地と続きます。防波壁の総延長は1.6kmで敷地西側にある新野川から背後に回り込む津波対策も考慮されています。津波の力に対する構造物の耐力についても国のガイドラインに基づく説明を受けました。また、東日本大震災での津波破壊力におけるスーパー堤防の構造上の課題も考慮に入れ、その経験が随所に活かされていました。

 

3.3号機海水系ポンプ防水壁

 現状のポンプ周囲を1mほどの壁で囲み、海水に浸かる対策を講じています。しかし、これで完全だとは感じませんでした。

 

4.3号機緊急時海水取り組み設備

 冷却ポンプ(3.)が破壊された場合、約1,000tの冷却水を確保して、かつポンプは密閉型の施設に収め、万が一の場合ほかの原子炉へも給水できる多重化を図る施設です。工事は基礎工事の段階でした。

 

5.高台造成工事現場

 標高40mの高台に、非常発電用のガスタービン発電機、地下貯水槽、原子炉維持部品など格納する施設が建設中でした。非常時、電源喪失による原子炉の暴走をくい止めるためのものです。

 

6.質疑

・       原子力発電所の耐震上の配慮

・       建物との共振を避ける機器や配管の設計

・       耐震裕度向上工事

・       取水槽からあふれ出た海水対策

・       冷却機能の維持と多重化

・       原子力建屋とタービン建屋をつなぐ配管の維持

・       福島第一原発の水素爆発の原因となった配管の課題

・       原子力格納容器のベント

・       想定される活断層について

・       浜岡原発の仮想津波モデル(M9地震)の根拠

・       防波壁設置の構造と根拠

・       沖合600mの設置された取水口の課題と対応

・       今後の電力供給の見通し

・       電気料金の値上げについて

 

 回答は、最後の2問を除き、専門的な見地から様々な資料を用いて説明をいただきました。その正当性について疑うものは特にありませんでしたが、確定するために専門家の判断にゆだねるべき内容が多く感じられました。

 電力供給の見直しについては、新しく設置している新潟県内の中部電力火力発電所への期待が高まるものの、愛知県内の既存火力発電所は老朽化による故障の発生もあり、不安定な状態が続くと思われます。この4月には全国の原子力発電が全てが休止状態となり、稼働しませんので電気を融通し合うことの重要性に鑑み、全国規模での課題として考えていかなければなりません。

 電気料金の値上げは、現在は考えていないようですが、火力発電所へ依存度が高まるにつれ、化石燃料、液化天然ガスなどの需要が増え中東産油国の情勢不安もあり、燃料相場がかなり上昇していますから、値上げなしで企業運営は困難だと感じます。

 

 今回の視察では原発の安全対策について、様々な角度から情報を得ることができました。その取り組みに大きな期待を抱くものですが、最後の質問にあるような事故が無くても今後社会に及ぼす影響をどう払拭するか、改めてエネルギー政策全体の中で最善の方向性を見極めていきたいと思います。さらに、最重要課題として県民と共有できる判断を是非模索したいと思いました。

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