鈴木すみよしブログ

身近な県政にするために。

フェイルセーフの見本が後退

2024年08月25日 | 議会活動
令和6年8月25日(日)

 2011年3月に発生した東日本大震災でメルトダウンした、福島第1原発2号機のデブリ(溶融核燃料)の取り出しに向け動き出した矢先に、「人為的かつ初歩的なトラブルにより中断した。」との報道がありました。

 この事故は、原子力の安全性に大きな問題を投げかけ、信頼を失墜させた大きな出来事でした。その後、同年12月から始まった廃炉工程は、3段階に分かれおり、デブリの試験的取り出しが最後の工程に位置するものだそうです。
 震災から13年経ってようやくその試行的な実作業が始まり、今後の見通しも立つのではと期待していただけに、残念な出来事となりました。

 報道によると、福島第1原発では1号機から3号機までが事故により核燃料が溶け出し、放射線量が極めて高いデブリが880トン発生したと推定されます。
 今回の試験的取り出しでは、原子炉格納容器横の小さな穴に、釣りざお式の装置を差し込み、先端の爪でデブリの採取を試みるというものでした。約3週間の工程を計画していたようです。
 中止となった理由は、装置を押し込むパイプの接続が誤った順序で接続したことに気付き中止になったということで、明らかな人為的、初歩的なミスと考えられます。

 原子力基本用語の中に、「フェイルセーフ」という用語があります。その意味は、「機械や装置の一部に故障があったり、人間が操作を間違えたりした場合でも、常に安全状態に向かうという考え方に基づき設計されたシステムのことをフェイルセーフといいます。
 原子力発電では、例えば、制御棒駆動装置用の電源が失われた場合でも、制御棒そのものの重さにより制御棒が炉内に落下し、安全に停止できるようになっています。」と説明しています。

 フェイルセーフの考え方は、飛行機や自動車など、私たちが利用する機器などにも取り入れられ、「万が一でも、重大な事故にならない」状況を維持しています。
 原子力神話は、フェイルセーフが完璧な状態で導入されたはずの原子力施設において、重大な事故や人為的ミスなどの軽微な事故が発生していることから、崩れ去ってしまったといえます。「完全はないが何かあった時には最悪の状況は免れる」ことの保証が失われています。これを「想定外」という言葉で済ませるわけにはいきません。

 私が問いたいのは、あまりにも初歩的な、人為的なミスが多く感じられることで、この軽微なミスこそが、フェイル-セーフの根幹を揺るがしかねないということです。
 「人はミスを犯すもの」が前提に、安全を考える必要があります。初めて取り組む場合には、事前にシミュレーションを実施し、経験を積むとともに課題の確認をしているはずですが、そのような基本的な取り組みはどうだったのでしょうか。

 今後、東電からは詳細な説明があろうかと思いますが、その内容について注視しています。
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