簾 満月「バスの助手席」

歩き旅や鉄道旅行のこと
そして遊び、生活のこと
見たまま、聞いたまま、
食べたまま、書いてます。

鉄ちゃんの御用達(JR乗り潰しの旅・吾妻線)

2020-01-22 | Weblog



 『大前駅は無人駅。駅の周辺の自然環境も昔ながらのひなびた姿を
そのまま残し、駅前にある浴場嬬恋温泉も鹿沢連峰のふもとに包まれ
て文字通り素朴な里であるが、大前からは、上信越国境方面への観光
ルートが大きく開けている。』



 昭和50年に刊行された「ローカル線風土記 終着駅」(毎日新聞社)
では終着駅大前をこのように紹介しているが、それから半世紀以上経
た今では、駅前の温泉は閉館していた。
更にここからは上信越国境方面に向かう手立てもなく、文字通りここは
行き止まりの終着駅である。

 周辺には嬬恋温泉郷と呼ばれる小さな温泉地が点在しているが、それ
らは何れも鉄道の利便が良い万座・鹿沢口駅を玄関口としている。



 折り返し時間の間に、持参した駅弁をホームで食べていると、研修
中だと言う女性車掌と目が合った。
そこで話を聞くと、「この駅まで来られるお客さんは殆どいません。
たまに見かけるのは鉄道好きの方でしょうか。
写真を撮ってすぐに折り返して行かれます」と言う。



そりゃそうだ。
折り返しの便を逃すと何もないところで、何時間も待つことになる。
この日も5名ほどの乗客は、思い思いに写真を撮ると、そのまま乗っ
てきた電車に再び乗り込んで、折り返していった。



 終点の駅は、吾妻郡嬬恋村にある。
ヤマトタケルが東征中、足柄坂の神を蒜(ひる)で打ち殺し、平定した
東国を望ながら、亡くした妻を想い「アヅマハヤ(わが妻よ)」と三度
嘆いた神話から呼ばれるようになったのが、この「吾妻・東(あずま)」
である。



 そんなホームの中程には、故事に因んだものなのか、駅名標と並んで
「道中安全」を願う仲良く寄り添う二体の道祖神が据えられていた。
(JR乗り潰しの旅・吾妻線 完)

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