簾 満月「バスの助手席」

歩き旅や鉄道旅行のこと
そして遊び、生活のこと
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食べたまま、書いてます。

壊れた万華鏡

2013-09-30 | Weblog
 不思議と緊張感も恐怖心もない。
手術前に室内時計で、時刻を確認する余裕さえある。

 手術台に座ると、血圧計や心電計などが体に取り付けられるのは前回
と変わりない。
 想定の手術時間が短いからか、血栓防止の措置は取られていないが、
右手にカスタネットを持たされ、何かあったら鳴らせと言う。



 目の上に顕微鏡が下ろされ、強烈な光が燈ると手術が始まる。
局所麻酔だから、スタッフの声、機器や道具を使う音は良く聞こえる。



 強力な光の輪が幾重にも重なり、その中心に、何か黒い塊のようなものが
浮かび、ぼやけて何重にもずれて見える。
 視界は明るい日差しの中なのに、厚いベールを透かして見ているようだ。
目の前で何かが動いているが、それがメスなのか、針なのか、器械の先端
なのか、余りにも近すぎて、その姿は模糊としてわからない。



 痛みはほとんど感じないが、何かされていると言う感触は強く感じ、その
度に薄ぼんやりと目の前に広がる光景は微妙に崩れ変化する。
なんだか壊れた万華鏡を覗いているような感じだ。



 BGMの流れる手術室に、突然看護師の眼内レンズの仕様を確認する声
が響いた。既に水晶体の核・皮質が砕かれ、吸引が終わり、いよいよ眼内
レンズ挿入の段階に来ていると言う事だ。



 ここまでは自分でも恐ろしいほど冷静だ。
左目を経験していると言う事が、余裕を待たせているのかも知れない。



 眼前が暗くなり、「はい終わりました」と言う医師の声がして手術は終わった。
眼帯を当てられ退室の折り、時計を見ると25分ほど経過していた。

 手術は無事終わった。
明日この眼帯が外されると、輝くように明るい、新しい世界が目に飛びこんで
くる筈だ。(完)
(写真は長野・志賀高原、本文とは無関係)


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