簾 満月「バスの助手席」

歩き旅や鉄道旅行のこと
そして遊び、生活のこと
見たまま、聞いたまま、
食べたまま、書いてます。

伊右エ門・鯉屋 (東海道歩き旅・三河の国)

2021-12-27 | Weblog
 街道の中程に、昔ながらの連子格子が残る、一際大きな建物が見える。
文化年間に建てられたという旅籠旅館「伊右衛門・鯉屋」の建物である。
間口6間1尺、奥行き7間の母屋が現存している。



 嘗ては間口がもう1間6尺程広く、奥行きは今より3.5倍ほども広い
敷地に、母屋、継ぎの間、奥座敷、土蔵などが連なっていたらしい。
しかし残念ながら奥座敷部分は寺への寄進(法雲寺の庫裏として現存
している)や、火災などで失われたという。



 ここは、平成27(2015)年まで現役の旅館として稼働していた。
江戸時代の建物が残っていて、今日まで営業を続けていた貴重な旅館も、
数年前にその業を止めている。
その最終日には、「かつて泊まったことがあるという大阪の男性も泊ま
りに来て、別れを惜しんだ」と案内の男性が話してくれた。



 建物は、広重の描く画を参考に、歴史的な資料を紐解き、2年の歳月
を掛け綿密な時代考証の元、江戸当時の旅籠建築の姿を取り戻した。
古い写真と見比べると、二階窓の連子格子の趣が若干違うことが解る。



 中に入ると右手が土間で、その先にのれんが掛かり、通路が奥に延び
ている。
建物を支える太い柱、黒光りするほど磨き込まれた床板、急勾配で段間
の高い階段などは、ほぼ往時の儘だという。



 関川神社にある句は、芭蕉がこの宿の二階に泊まった折のものらしい。
室内には駕籠や行灯など往時を偲ぶ調度も置かれて居る。
市の文化財の指定を受けた旧旅籠は、ボランティアスタッフも駐在し、
無料で一般に公開されている。(続)





にほんブログ村 旅行ブログへにほんブログ村
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする