筑豊本線の内、若松と折尾の間は“若松線”と呼ばれ、列車の殆どがこの区間で
運転され、その先の直方まで行くものはほんの一部に過ぎない。
明治の中頃筑豊炭田で産出される石炭を、若松港まで輸送するために直方から
若松まで鉄道が開設され、その後鹿児島本線に接続する原田まで伸延され筑豊本
線となった。この路線は言わばルーツの路線である。
鹿児島本線と筑豊本線が複雑に交差する折尾を出ると、暫くは金手川に沿って市
街地を行く。やがて沿線に大小の工場群が増え始め右手に洞海湾の袋状の入江が
近づいてくると終着駅の若松である。
駅左手には高塔山公園の小高い丘が迫り、目の前には洞海湾を跨ぐ深紅の巨大
な吊橋が見える若松は、火野葦平の「花と竜」でも知られた港町で、駅前にはその
資料館もある。駅を出て洞海湾に沿った遊歩道を10分ほど歩くと渡船場がある。
古くから戸畑と若松の間の渡し船として運行されていた若戸渡船は、当時東洋一の
吊橋と謳われた若戸大橋が完成し、一旦は廃止の計画が有ったようだが、市民の強い
運動により存続が決まった。
その後若戸大橋の歩道が廃止された事もあり、戸畑と若松とを結ぶルートとして無く
てはならない足となり残されている。
数百メートル程の狭い湾を、二三十トン程度の小さな渡し船で、青々とした海に白波
を立てながら若戸大橋を真下から仰ぎ見る、ここでは僅か5分ほどのささやかな船旅が
楽しめる。(続)
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