邦画ブラボー

おすすめ邦画(日本映画)のブログ。アイウエオ順(●印)とジャンル分け(★印)の両方で記事検索可能!歌舞伎、ドラマ感想も。

「まばたきで“あいしています”~巻子の言霊(ことだま)~」夏八木勲追悼ドラマ

2013年06月18日 | ●面白かったTVドラマ

去年の秋、BSで放送された

夏八木勲さん主演の、

ある夫婦の愛をテーマにしたドラマ。

追悼番組として

地上波で再放送されたので録画して見る。

 

ある日突然、

交通事故で全身麻痺になってしまった妻(木内みどり)

と夫(夏八木勲)の「会話」・・・

発声はもちろんのこと、指一本動かせない妻が

唯一出来ること「まばたき」を

夫が機械で一文字づつ入力して成り立つ

二人三脚での「会話」は

事故から2年9ヵ月後、始められた。

 

「ゆきおさんをあいしています」

 

 衝撃だったのは

「まみいをころしてください」の文字だ・・・・

(ご夫婦はお互いをまみい だでぃと呼び合っている)

 

「ゆきおさんを とやまけん(富山県)いち せかいいち あいして あいしています」には

我慢の限界!涙が出た。

 

なんという辛く 苦しい しかし美しいドラマなのでしょう。

 

 驚いたことにこのドラマは実話を元にしている。

冒頭に紹介される写真の中には

木内さんに似た美人の巻子さんが元気いっぱいに微笑んでいる。

旦那さまの幸郎さんもお洒落でハンサムだ。

合間には幸郎さんご本人のインタビューがはさまれるという

ドキュメンタリーのような作品だけど、

まるでご本人か?と思うような夏八木さんの自然な演技に

ぐいぐいと引き込まれた。

 

同じく、まばたきでのコミュニケーションを描いていた

マチュー・アマルリック主演の フランス映画

「潜水服は蝶の夢を見る」を見た時は驚いたけど

このようなご夫婦が実際に日本にいらっしゃるのだということを

初めて知りショックだった。

 

夏八木さんは、理不尽な運命への怒り、哀しみを

抑えた演技の中に全部表現していたが

妻への慈しみにあふれたまなざしにはぐっときた。

日記を朗読する声も、

時には震え

時には穏やかに染み入るようで

変化に富んで見事だった。

時折妻からの目線が表現されるので

お二人に感情移入させられてしまった。

 

夏八木さんといえばカッコいい不適な面構えで

若いころは戦国武将とか鉄砲玉とか、

荒々しく男っぽい役が多かったけど

年を重ねて深~い魅力が増してきたように思っていた。

それは夏八木さんの生き様というか

内面の魅力が演技に出てきたからじゃないかと思う。

 

このドラマはこのうえなく優しくて強くてしかもダンディな

夏八木さんの晩年の魅力が詰まった傑作だ。

男の魅力はここにあり!の証明のようなドラマですから

たくさんの方に見ていただきたいと思いました。

人間の尊厳、夫婦の愛についても考えさせられました。

 

幸郎さんと巻子さんは現在も闘病を続けられているという。