邦画ブラボー

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「たそがれ酒場」

2007年07月01日 | ★人生色々な映画
東京の片隅にある大衆酒場の一夜の出来事を描く。

夕暮れが近づくと
従業員が次々と店に現れ、開店準備。
いよいよたそがれ酒場が開くのだ

ステージでは
専属歌手と女給(野添ひとみ)が歌の練習。
「何にしようか」
「『夢見る君』にしましょうか!」
伴奏は優しい音色のアコーディオンである。

店が開くと同時にぱらりぱらりと客が入ってくる。
このタイミングとリズムが抜群!

いつの間にか店は満員になり、がやがやとした喧騒に包まれる。
学生、夫婦連れ、
あちこちで酒が酌み交わされ
バーテン兼司会者の紹介で専属歌手がステージにあがると
その店自慢の歌謡ショーが始まる・・・

常連の絵描き(小杉勇)はカウンターに陣取って
いつもの酒を注文する。
この男、なにやら曰くありげ。

とにかく店のセット、空間的な造形が素晴らしい。
広さは小さめの学校の体育館くらいか。
流れるようなカメラが酒場を写し出す。

才能ある若き歌い手を演じているのは本職のテノール歌手、
またその師のピアニストも本物音楽家であるが故
何を歌っても演奏しても質の高さは申し分なし。
ひとり暮らしの老音楽家の足元には子犬が一匹じゃれついている・・

青年は素晴らしい歌声を見込まれ
著名な作曲家の劇団に入団をもちかけられるが
若者の師はなぜか頑なに反対するのだった。
曰くありあり・・・

美しい踊り子(津島恵子)は男に斬りつけられ、
恋人(宇津井健)を追って行こうか悩む娘(野添ひとみ)は
貧しい家族のため恋をあきらめる。
いい男丸出しの
丹波哲郎はチンピラ役だし
ちょこっと出る東野英治郎と加東大介がほろりとさせつつ
くすりと笑わせてくれる。
おっと、
忘れちゃいけないのは多々良純のへべれけ親父。

「お富さん」、「カルメン」「夢見る君」・・
クラッシックから軍歌、歌謡曲まで多岐に渡る
音楽監修は芥川也寸志。
音楽の効果が最高にドラマを盛り上げ、哀愁を誘う。

戦争の傷跡まだ癒えない時代背景、
混乱した世相の中、人々は集い歌い酔う。
人生の喜び哀しみすべてたそがれ酒場にある。
日本の音楽劇の大傑作である。

内田吐夢
音楽のセンスも抜群だということもわかってしまって参りました。

1955年 
監督:内田吐夢
脚本:灘 千造
撮影:西垣六郎 照明:傍士延雄
録音:中井喜八郎
美術:伊藤壽一
音楽:芥川也寸志

*映画の中のイイおんな 
津島恵子:可憐な・・慎ましい女性というイメージ一新!
驚くほど艶やかな踊り子っぷりに思わず身を乗り出すこと
必至!無名の青年を暖かく見守るお姉さん的な役柄が
似合ってますが、あの「七人の侍」での役柄とは大違い。
同じ人とは思えません!

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