邦画ブラボー

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「殺陣師段平」

2006年11月25日 | ★人生色々な映画
大正元年。
時代から遅れてしまった老殺陣師、
段平(中村鴈治郎)の
殺陣一筋、殺陣馬鹿な人生を描く。

全編にわたる関西弁の脚本を手がけているのは
なんと黒澤明
冒頭の世話女房(田中絹代)との掛け合い漫才のようなやり取りの中でも、
「青菜に塩」、「年寄りの冷や水」など
ことわざを使った気の利いた台詞が
テンポ良くポンポンと行き交い、
ファンなら大喜びの「挨拶代わりの黒澤節」が聞ける。

黒澤と橋本忍小国英雄の共作「七人の侍」や
黒澤プラス小国英雄・菊島隆三「椿三十郎」に出てくる「ことわざ使い」は
彼のアイディアによると確認した。

ひとつひとつの台詞も
ウィットに富んでおり
改めて脚本家黒澤明の才能に感嘆した。

段平は新国劇、沢村正二郎(市川雷蔵)一座の頭取だ。
頭取とは楽屋世話役のようなもので
一線からひいた閑職であった。
昔は歌舞伎の殺陣師として鳴らしたということで
「中村鴈治郎を向こうに回したこともある」と、
鴈治郎に言わせて笑いも取る。

新しい殺陣、リアルな殺陣を芝居に取り入れたいという沢村に
喰らいついていくような段平の執念は凄まじい。
とにかく鴈治郎がすごすぎて
いつも主役を喰う勢いの山茶花究もおとなしめ、霞んで見えた。
そういえば
上田吉二郎も出ているが、とってつけたような標準語を
喋っており、すごく似合わなくて可笑しい。

沢村との関係、女房や下働きの娘(高田美和)とのエピソードなど
はっきりいって面映いくらいコテコテの浪花節ではあるが
中村鴈治郎の舌を巻くような芸でこの上なく心地良く酔える。
市川雷蔵は一歩ひいて鴈治郎を立てている。

熱燗をちびちび飲みながら見たい今頃の時期にぴったりの映画。

監督  瑞穂春海

脚本   黒澤明
原作 長谷川幸延
撮影 今井ひろし
音楽   高橋半
美術 加藤茂

*映画の中のイイおんな*
高田美和:段平を思いやる心優しい娘。
まだ少女なのにしっかりしていて、そばにいてくれたらいいだろな~みたいな
芯が強くて気が利いて働き者で顔も可愛くて天使のように純真で
控えめで賢く、どこから見ても言うことなしのエエ娘を演じてます。

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