邦画ブラボー

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「剣」

2006年11月21日 | ★人生色々な映画
大学剣道部の主将国分(市川雷蔵)は
常に
正しく潔く完璧で体も心も
張り詰めている。

あまりにも純粋に理想を求めるがゆえに
汚濁に満ちた現実社会や人間たちに失望していく。

完全無欠の国分を地に堕とそうとするメフィスト的な
人間が川津祐介扮する副将の賀川で、
二人の対比が面白い。

市川雷蔵は国分の喜び、怒り、軽蔑、憤り、失望、
すべてを静かな表情で
演じきっている。
特に剣道部合宿で部員に檄を飛ばすシーンにはしびれた

「海があることを忘れろ。絶対に泳ぐな。
いいか、俺たちは苦しむために来たのだ。」

苦しみ抜いた後の喜び・・・
すごい世界がそこには開けていそうな・・・
すべて捨てて国分さんに魂を捧げたくなる
リーダーシップなんですけど・・・硬い。
堅くて強すぎる男なのであった!

そして女は要らないそうです!

彼の頭にあるのは試合に勝つことのみで
その他のものは一切排除するのであった。

しつこいようですが女は要らないみたいでした。

雷蔵はもちろんパーフェクトだけど
川津祐介の鋼のように締まった肉体、
美しい石を思わせるような瞳の中には
危険で激しい光が宿っているようで、スリリングだ。

この世に単純で純粋な世界は存在しうるのだろうか?
と、きたところで
やっぱり原作者を重ねてしまう。
複線としてエキセントリックなエピソードが
挿入され、複雑でデリケートな世界も覗くし。

厳しい練習風景、
熱気がこもった浴場での乱闘、
ストイックな男の世界が繰り広げられる。

国分の崇拝者であったはずの部員壬生(長谷川明男)が
最後の最後に心の弱さを露呈したり
誘惑者である女が意外と一番国分を理解していたりして
皮肉な結末もまた面白かった。
監督役の河野秋武も剣道家らしいたたずまいを見せていた。

それにしてもやっぱり
雷蔵天才!

監督 三隅研次 脚本   舟橋和郎
原作 三島由紀夫 撮影 牧浦地志
音楽 池野成 美術 内藤昭

*映画の中のイイおんな*
藤由紀子:国分を誘惑しようとする女を演じてます。
目鼻立ちがはっきりした現代的お嬢さん、娘さんです。
さっぱりしていて気性が激しそうで
スタイルもいいんですが爆発的な魅力に欠けるかもねえ。

角梨枝子:おっと!この人を忘れてはいけませんでした。国分の母親役で
ちらっとしか出ませんが強烈な印象を残します。
きちんとした奥様風なのですが、
若い男に囲まれてマージャンしていたり。
美人杉、色っぽ杉の梨枝子母に国分は眉をひそめるのです!

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