究極の覚りまでの5段階1:五位説(ごいせつ)について

2006年05月14日 | 心の教育



 唯識では、覚りたいと思ったところから究極の覚りを得たところまで、大まかにいうと5段階あるとし、段階のことを「位(い)」といいます。

 第1段階は、資糧位(しりょうい)です。

 これは、修行を凡夫の迷いの国から仏の覚りの国への旅に譬えると、旅のための資金や食糧を準備する段階です。

 凡夫の国から仏の国への旅は、長い長い旅ですから、行き当たりばったりで、準備もなくガイドもなしに出かけたのでは、途中で迷ってしまい、下手をすると遭難してしまうかもしれません。

 しっかりとしたガイドブックを入手してよく読み、目的地のすばらしさにわくわくすると同時に、目的地までの道筋や交通手段、途中で起こりうるトラブルや危険についても、予めしっかり頭に入れておく必要があります。

 具体的にいうと、まず、お経や唯識の理論書などガイドブックに当たる仏教の文献を学んで、よく理解することです。

 それから、もちろん教えについて理論的に学ぶだけでなく、修行の方法についても学んでおく必要があります(このブログでは、この後、お話しすることになります)。

 さらに重要なのは、経験豊かなリーダー・旅行ガイドさんに当たる、よい師を見つけることです。

 現地に行ったことがなく、自分もガイドブックを読んだだけというガイドさんは、当てになりませんから、気をつけたほうがいいと思います。

 一緒に迷い、ひどいと無理心中・共倒れということなりかねませんからね。

 それから、修行の旅というのは楽しいだけではなくそうとう厳しい場面もありますから、励ましあう仲間はぜひ欲しいですね。

 そういう善い先生、善い仲間のことを、仏教では「善知識(ぜんちしき)」といいます。

 善知識に出会うことができたら、修行の旅、そして人生という旅そのものが、たとえ厳しくても方向はしっかりわかっていて、努力は必ず報われる、みんなでがんばれる、やりがいのある旅になるでしょう。

 さてしかし、いくら準備をしっかりしても、歩き出さないかぎり、それは旅にはなりません。

 「旅行」というくらいで、歩行・実行しなければ旅にはならず、目的地には近づきませんね。

 覚りへの旅の歩行のことを「修行」というわけです。

 修行を実行する段階のことを「加行位(けぎょうい)」といいます。

 行を加える、行に参加する、実践にコミットする、というふうな意味です。

 具体的には、この後お話しする6つの修行方法・「六波羅蜜(ろくはらみつ)」を実践することです。

 ここで、渋い、シブーイことを言っておかなければなりませんが、「仏教を学ぶ」ということの本当の意味は、行を実践する、六波羅蜜を実修するということで、仏教の本を読むのは、あくまでもその準備にすぎない、ということです。

 「仏教の勉強をしています」とか「仏教の研究をしています」というのは、それ自体とても大切なことですが、資糧位にいることであって、加行位には踏み出していない段階なのです。

 仏教を自分のものにしたいのなら、加行位に入る、修行の実践にコミットすることが必須です。

 これは読者にはぜひ、心に留めておいていただきたいことです。

 「良薬は口に苦し」とか「諫言耳に逆らう(心からの忠告はしばしば聞きづらいものだという意味)」という言葉もあるとおり、もしかしたら嫌味に聞こえるかもしれませんが。

 もちろん、「教養仏教」でいいという方には、強要するつもりはありませんし、できもしませんね。

 しかし、そういう方も含めみなさんに、「旅行ガイドや旅行記を読むのも楽しいですが、ちょっと面倒でもきつくても、実際の旅に出たほうがはるかにすばらしい体験ができますよ」とお誘いしておきたいと思います。



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3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ガイドブックも好きですが・・・ (ひろ)
2006-05-14 23:52:01
やっぱり旅行は行くに限りますね。



ワークも行くに限りますね・・・・・。
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うまい (梅太郎)
2006-05-16 21:23:38
今回もたとえ話がとてもはまってて、面白かったです(笑)



「書を捨てよ街に出よう」と言ったのは寺山修司ですが、「書もいいけど旅に出よう」は岡野先生ですね(笑)

やっぱり旅は行くに限りますね。

ワークも・・・

あ~ワークは行きたいけど行けない・・・泣
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また行きましょう (おかの)
2006-05-19 09:44:59
>HIROさん、梅太郎さん



 残念ながら、ワークは行けそうにないですね?



 この季節の奥入瀬・八甲田山の新緑は最高なんですけどね……。
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