思惟石

懈怠石のパスワード忘れたので改めて開設しました。

堀江敏幸『雪沼とその周辺』すごく良い

2018-06-08 14:20:51 | 日記
堀江敏幸『雪沼とその周辺』を読みました。

雪沼という架空の街およびその周辺に住む人々を描いた
短編集です。

冒頭に収録されている『スタンス・ドット』で川端康成賞(2003年)、
連作短編集としての『雪沼とその周辺』で谷崎潤一郎賞を受賞。

解説の池澤夏樹氏が登場人物たちを
「篤実という資質を備えている」
と表現したことにとても共感を覚えました。

全体的に、人も、風景も、物語も、「篤実」だなあって感じなのです。
痛ましい事件もあるのですが、それらにも向き合って
粛々と生きている感じが好ましいです。

7つの物語のどの主人公も、
山あいに存在する寂れた街にふさわしく
ドラマチックな要素のない人々ですが、
それがまた味わい深いし、ちょっとだけ羨ましい。

ところで、すべての登場人物は「さん」づけで描かれているのですが
『スタンス・ドット』のボウリング場店主だけは
「彼」と表現されています。
これも何かの狙いがあるのかな。

なにはともあれ、良い小説です。
誰かにプレゼントしたい。
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【読書メモ】2008年10月~11月

2018-06-07 16:29:28 | 【読書メモ】2008年
<2008年10月~11月>
カッコ内は、2018年現在の補足コメントです。

『100年の孤独』ガルシア・マルケス
おもしろかった。ずっと読みたかったから、
今、読んでおけて良かった。
本当は大学生くらいで読むのがいいと思う。

(ホント、おもしろかったです。
 別に大人が読んでも良いと思います。いつ読もうがおもしろいと思う)


『吉原御免状』隆慶一郎
男のエンタメだと思う。
これ、本当におもしろいのだろうか?
人物描写できてるんだろうか?
都合良すぎないだろうか?疑問しかない。

(この人、苦手)


『パーカー・パイン登場』アガサ・クリスティ
(メモなし。
 あまり印象に残ってないなあ……。
 灰色の脳細胞の人(ポアロ)と曖昧になっていましたが、
 パイン氏は人生相談所の人でした)

『三銃士』アレクサンドル・デュマ(大デュマ)
アニメよりおもしろかった。当然か。
ミレディみたいな強烈なキャラクターは良いですね。

(アニメって!懐かしいな!!年齢がバレるな!!!
 ちなみに『アニメ三銃士』です。アラミスが女性になってます。
 原作を読んでいて、アラミスの性別が気になってしょうがなかったですが、
 もちろん男性でした)


『十二人の手紙』井上ひさし
(メモなし。
 手紙形式で綴られた短編集)


『陽気なギャングの日常と襲撃』伊坂幸太郎
『陽気なギャングが地球を回す』の続編。
短編をまとめなおしたものらしく、
途中で消えたエピソードもあるけど、おもしろかった。


『凍える牙』乃南アサ
(メモなし。
 第115回直木賞/1996年。
 乃南アサは『幸福な朝食』とこれしか読んだことない。
 『幸福な朝食』の記憶は『幸福な食卓』(瀬尾まいこ)の
 素晴らしさにかき消されており
 『凍える牙』は『RIKO-女神の永遠』(柴田よしき)と記憶が混同して
 白バイに乗って不倫している女刑事のイメージになっている。
 ちなみに『RIKO』はまったくおもしろくない)


『ベーコン』井上荒野(あれの)
井上光晴の長女。というが、井上光晴を寡聞にして知らない。


『体は全部知っている』吉本 ばなな
(メモなし)

『北方謙三 水滸伝』北方謙三
自分の名前をタイトルに冠するところがこの人らしい。
小説としてとてもおもしろいけど、全17巻中、まだ2巻。
読破できるか自信ない……。

(この後、3か月くらい、粛々と水滸伝月間。
 無事に読了したし、おもしろかった!
 しかし『楊令伝』までは行けなかった……)
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津原泰水『ルピナス探偵団の当惑』

2018-06-05 11:34:07 | 日記
津原泰水『ルピナス探偵団の当惑』を読みました。

猿渡シリーズ(怪異と怖い女ばかり寄ってくる猿渡くんというダメ男が
何かと酷い目に遭うという短編シリーズ)
が好きで、この作者の他の作品も読もうと思っていたのでした。

ルピナス探偵団シリーズは、元々は津原やすみ名義で
ティーンズ向けに書かれていたものだそうです。
だからというわけではないですが、
結構キャラが立っています。
それが、大人が読んでも魅力に感じられる造詣なのです。
テンポ良い会話も、この頃から作者らしさが出ていて良い感じ。
あっという間に読了しました。

ルピナス探偵団こと、主要メンバーは、
聖ルピナス学園に通う彩子(さいこ)、キリエ、麻耶、
プラス、彩子の憧れの人である祀島(しじま)くん。

彩子の姉であり、刑事でもある不二子
(良い感じにハチャメチャなキャラである)とその上司に
事件に巻き込まれる(もしくは自ら顔を突っ込む)
という構成での、短編ミステリ3篇です。

『冷えたピザはいかが?』は、いきなり犯人の名前から始まります。
古畑任三郎形式、と言うと怒られたりするんでしょうか。
謎のメインは、犯人はなぜ、冷えたピザを食べたのか。
キャラ立ちしたメンバーの登場篇として、とても面白かったです。
祀島くんの博学な割にピントがずれてる感じが良いし、
不二子姐さんのフリーダム感も良い。
謎解きの部分は、理詰めすぎて、逆にわかりにくかったかも。

『ようこそ雪の館へ』で、祀島くんが探偵役に。
私的には、祀島くんにはぐいぐい前面に出るより
我が道を歩んでいてほしかった……。
青い薔薇のうんちくがふんだんに語られていて、
作者は青薔薇(もしくは『虚無への供物』)がホント好きだなあと
どうでもいいですがシミジミしました。

『大女優の右手』
完全に祀島くんが探偵です。
それはさておき、舞台で演じられているのは
尾崎翠の『琉璃玉の耳輪』です。
これ、後に原案・尾崎翠、小説・津原泰水の名義で
小説化されているようです。あとで読もう。
そして、完全に探偵になったと思った祀島くんでしたが
その裏には犯人の本当の動機を隠ぺいしようという
たくらみが……、
って、何?よくわからない?
ちょっと心の動きが複雑すぎない?
裏の裏まで上手に読み込めなかった感が……。
私の不徳の致すところである。

まあ、いいや。
ミステリとしての「スッキリ感!」はさておき。

彩子・キリエ・麻耶・祀島くんの関係性や
会話の小気味好さは、読んでいて気持ち良いです。

続編『ルピナス探偵団の憂愁』もあるらしいので
(どうでも良いですが、
どっちが先かわかりにくいタイトルである)
そちらも読む予定。

難癖つけてる感がありますが、
結構、おススメな良作です。
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【読書メモ】2008年9月

2018-06-03 09:52:59 | 【読書メモ】2008年
<2008年9月>
会社に入って初めての勢いで、一週間の休暇を取り
モルジブに行きました。
社畜が慣れないことをしたので、
前半は謎の腹痛に襲われていたのが良い思い出。
今では堂々と休むし、さぼる。
カッコ内は、2018年現在の補足コメントです。


『ティファニーで朝食を』カポーティ
主人公のイメージがオードリーの映画と違ったなあ、
と思ったけど、小説としておもしろかった。
蓮っ葉なヒロインがかわいい。


『続巷説百物語』京極夏彦
分厚い。

(まったくもって同感である)


『名画で読み解くハプスブルク家12の物語』中野京子
光文社新書。モルジブで読んだ。
歴史がわかりやすく噛み砕かれていて面白い。


『お菓子と麦酒』モーム
『月と6ペンス』の作家。一人称に関する説が印象的。
ティファニーのヒロインよりこっちの方が魅力的だと思う。

(上記2冊は、バカンス用に成田空港で買った気が。
 モームはタイトルがバカンスっぽいよね!と短絡的に思った次第)


『ホテルアイリス』小川洋子
どう読み込んでも貧乏臭くて寂れた街が舞台なのだけど、
楽園ぽいタイトルと文章で、なんとなく魅力的に思える不思議。


『盤上の敵』北村薫
「読んで不愉快になったという人もいるので、万人にお薦めしません」
という最初にの挨拶がずるい。

(実際、不愉快になりました。
 北村薫らしさを求める人には、絶対おススメしない作品)


『明日の記憶』荻原浩
若年性アルツハイマーも恐いけど、うつ病も恐い。

(この小説は、49歳の働き盛りで若年性アルツハイマーにかかった
 営業マンのお話し。うつ病はまったく関係ありません。
 休暇明けで、私のテンションが低かったのであろう)


『父の詫び状』向田邦子
すごくいい!!

(最近読んだ『〆切本』というアンソロで向田邦子の
 酷い〆切破りエピソードが出ていて、まあ、作品は関係ないけど、
 なんか、あまり好ましい人とは思えなくなってしまった)


『文士と姦通』川西政明
身勝手な文士のエピソードがてんこ盛りで、
けっこう腹が立った。白樺派はやっぱりダメ男ばかりだ。

(どうでも良いけど、白樺派って、字面から華奢で清潔っぽい
 イメージないですか?どっちかというとワイルドで武闘派で
 ついでにご長寿でビックリしませんか。私はビックリしました。
 太宰治と志賀直也のバトルとか……)


『新釈 走れメロス』森見 登美彦
イマイチ。走れメロスだけかな。他は、特には。
これ読んで原作を読もうという人はいないと思う。

(我ながら、くされ京大生でない作品に厳しいなあ……)


『山椒魚・夜更けと梅の花』井伏鱒二
山椒魚の、狭い場所に閉じ込められる恐怖感がリアルで恐かった。
西郷隆盛の肖像画をモナリザと間違える
アイルランド人のエピソードがおもしろい。


『戯作者銘々伝』井上ひさし
(メモなし。
 為永春水、恋川春町、式亭三馬、山東京伝など、
 江戸時代の戯作者12名を描いた短編集。
 ぜんぜん記憶に無いし、すごく面白そうなので再読したいのだが、
 案の定、手元にない……)


『容疑者xの献身』東野圭吾
(メモなし。
 私が言うまでもないですが、おもしろかったです。
 第6回本格ミステリ大賞、第134回直木賞(2005年)。
 しかし、ガリレオシリーズ3冊目にして、
 なんというか、湯川先生が完全に福山雅治になったな……
 とも思いました。佐野史郎、好きなんだけど……。
 私は原作版の容疑者Xの心情に結構共感や理解を覚えたのですが、
 映画(観てない)では堤真一だったらしい……って……おーい……)
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多和田葉子『雲をつかむ話』

2018-06-01 13:45:36 | 日記
多和田葉子さん。
学生時代に『犬婿入り』を読んで以来です。
当時は院生で、時間だけはあったので
(その頃は生意気にも忙しいとか思ってたけど)、
芥川賞・直木賞の過去受賞作をちょこちょこ読んでいたのでした。

ちなみに『犬婿入り』は第108回芥川賞受賞作。1992年。
同時期に、
重松清『ビタミンF』(第124回直木賞/2000年)
松浦寿輝『花腐し』(第123回芥川賞/2000年)
を読んで、その三作の中では一番おもしろかったかな的な
メモが残ってました。

そもそも、なぜこの3冊を合わせて読んだのかが謎ですが。

それはさておき、それ以来の多和田葉子作品。
なんとなく見た書評ブログで取り上げられていて
なんとなく気になっていて、
なんとなく読み始めました。

主人公(作者を思わせるドイツ在住の日本人女性作家)が、
人生で出会った「犯人」にまつわる思い出たちを
回想したり、想った事や妄想を徒然に綴ってます。

ちょっと不思議な感じで、ストーリーが飛んだり入り組んだりして、
中盤まではペースを掴むのに難儀しました。

本音を言うと、「なんとなく」で読み始めたので、
途中で放り出すのではないかという危惧も大きく……。

と思ったら、中盤以降は意外にも良いペースで読めて
楽しく読了できました。
ラストも良かったです。

「犯人」に対するあれこれの話しなので、
もちろん「事件」も描かれるのですが、
それもなんだか不思議な感じで
あちこちで不思議なくらい話題になる牧師と妻の話しや、
少年時代までエピソードが遡りつつも
なんだか曖昧な「犯人」である双子のオスワルドやら、
誰が正しいことを言っているのかさっぱりわからない
マヤとベニータ(紅田)の話しやら。

なんだか雲をつかむようなエピソードが次々と
むくむくぽこぽこ湧いて出てきて、
雲というよりも煙にまかれてないだろうか
という気持ちにもなりつつ、
結構、楽しい読書時間になりました。


まあ、好みが分かれそうだから
人には薦めにくいですけど。
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