思惟石

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【読書メモ】2011年4月 ③おばちゃまミステリについて

2019-08-30 14:45:58 | 【読書メモ】2011年
<読書メモ 2011年4月 ③>
カッコ内は、2019年現在の補足コメントです。


『おばちゃまは飛び入りスパイ』ドロシー・ギルマン
スパイになりたいと勝手に言ってるおばあちゃん。
そんな人がどうなろうと知ったこっちゃない、と思ってしまって
読み進める意欲が湧かなかった。苦戦。
といいつつ、後半はちょっと楽しめたかも。
海外文学っておばあちゃんが頑張る話しが多い気がする。

(60代の未亡人、こどもは大人になって独立済み、
 やることは近所の病院でのボランティアとガーデンクラブの活動のみ、
 というアメリカの悠々自適な有閑マダム、ミセス・ポリファックスが
 CIAにおしかけるところから始まります。なんだそれ。

 ストレスにさらされながら日本でせこせこと受験したり就活したりして
 もろもろギリギリで会社員をやってる身として
 1ミリも共感できない設定です。
 というわけで、1ミリも共感できませんでした。
 じゃあ読むなよって話しですけどね。

 私の生き方はさておき、若い頃から、おばちゃまがぐいぐい来る小説
 なんか苦手だったんですよね。
 アガサ・クリスティのミス・マープルもストーリーとか謎解き以前に、
 うるさいおばさんだなって思ってしまう。
 じゃあ読むなって話しですけど。

 私が、コージーミステリーというジャンルに魅力を感じない性質なのとも
 関係があるように思います。
 個人的にコージーミステリーの定義も曖昧な感じで申し訳ないですが。
 海外系の、妙に料理の描写が細かいのと(レシピがついてるのもあるよね)、
 中年女性のおしゃべりと恋だのなんだのの語りが妙に長いやつ、苦手。
 じゃあ読むなって話しですね。全くその通りである。

 で、こちらの<おばちゃまはCIAシリーズ>、
 なんと14冊も出ているそうです。すごいな!

 いや、ホントに、すごいと思ってるんです。
 個人的に自分の好みが偏ってるというか安定してないのは自覚しているので、
 なんというか、マーケティングとか、世の中の大局を見る仕事は
 私はできなそうだなあ…と、ちょっとさみしい気もちになるんです。
 という自己分析は、まあ、どうでもいいか)
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【読書メモ】2011年4月 ②

2019-08-28 20:43:00 | 【読書メモ】2011年
<読書メモ 2011年4月 ②>
なんだかエッセイをせっせと読んでますね。
時間があったんだか無かったんだか、よくわからんラインナップです。
カッコ内は、2019年現在の補足コメントです。


『横道世之介』吉田修一
『悪人』とは違ったおもしろさ。なんか友人Sに似ている。

(吉田修一は『パーク・ライフ』で芥川賞(2002)を獲ったときに
 寄藤文平さんのイラストの表紙が目について読んでました。
 個人的には、受賞直後の旬のものを読むのって珍しい。
 その時は、なんか日常エンタメの人~って感じで
 それっきりになっていたので、
 『悪人』でヒットしたときに同一人物か?と驚きました。
 『横道世之介』はお人よしで流されやすい田舎出身の大学生
 世之介くんの壮大ではない日々を壮大に描いた物語。
 誰の友人にも、ひとりはいそうな、絶妙な男子である。
 おすすめ。
 鹿島田真希の『ゼロの王国』をちょっと連想しますよね。
 そうでもない?)


『春になったら苺を摘みに』梨木香歩
(メモなし。
 梨木さんの第一エッセイ集です。
 英国留学中の下宿先の大家さんや、異国で出会った人々のお話し。
 『家守綺譚』『村田エフェンディ滞土録』が好きな人には
 ぜひ読んでほしい一冊です。
 つまみ食いでも、集中して一気に読んでも良い、
 デスク置きのお菓子みたいな常備本です。
 第二エッセイの『ぐるりのこと』はまた違った味わいですが)


『ゆっくりさよならをとなえる』川上弘美
(メモなし。
 こちらもエッセイ集。
 川上弘美の川上弘美らしい日常のエッセイ。
 3ページ程度の短いエッセイ(どこかの連載だったらしい)で、
 近所の居酒屋やスーパーや生ガキやらへの思索と執着と妄想と。
 相変わらず、パーツはオッサンなのに、全体的にステキである。
 憧れる)


『柿の種』寺田寅彦
(メモなし。
 明治の偉大な物理学者であり、猫好きであり、
 夏目漱石の弟子というか友人であり
 (あの内田百閒が敬意をもって遇しております。なんと…)
 理系にあるまじきレベルの随筆の名手です。
 そんな寺田先生の短文集。
 “ゆっくりした余裕のある時に、一節ずつ間をおいて読んでもらいたい”
 とのことですので、ありがたく、ゆっくり読むべし)


『念力家族』笹公人
『抒情の奇妙な冒険』の歌人。
「中央線に揺られる少女の精神外傷(トラウマ)をバターのように溶かせ夕焼」
「シャンプーの髪をアトムにする弟 十万馬力で宿題は明日」
「落ちてくる黒板消しを宙に止め3年C組念力先生」

(笹公人の第一歌集。
 念力を持った家族の日常を詠んだ句集。
 って、何言ってんだって感じだと思いますが、
 本当にそういう内容の句集なんです。
 おもしろいですよ!
 まさかのドラマ化も実現したそうです。
 『抒情の奇妙な冒険』は第三歌集。
 昭和のノスタルジックな文化を多く詠んでいます)
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皆川博子『死の泉』 御大はすごい

2019-08-27 09:49:50 | 日記
幻想文学の巨人、皆川博子の『死の泉』です。
御大、すごいよ…。
執筆時はちょうど還暦くらい。すごいよ御大。

構成がちょっと変わっていて、
ドイツ人作家のギュンター・フォン・フュルステンベルクが書いた
原書を日本人翻訳家の野上昌が訳して1970年に出版した、
という体裁になっています。
古川日出男『アラビアの夜の種族』なんかと同じスタイルですね。
(こういう手法にネーミングってあるのかな)

舞台は第二次世界大戦末期のドイツ。
第一部は、未婚の妊婦となったマルガレーテの一人称で始まります。
ナチスが優勢種と言い張るアーリア系(金髪碧眼)のための
産院 兼 孤児院で、出産育児をするマルガレーテ。
時代も設定もハードモードすぎて、赤ちゃん大丈夫かなとか、
養子のフランツとエーリヒ大丈夫かなとか、
不安要素しかない。
戦争コワイ。
それでも読み進めずにいられない皆川マジック。
御大、すごいよ。

とはいえ、ずっとこの調子で進めるなら、
作中作というか、
入れ子構造にする必要はないわけです。
第二部は終戦後が舞台となり、怒涛の展開ですよ!

作中作の作者と同名のギュンターが登場し、
青年になったフランツとエーリヒが現れ、
マルガレーテのライバル(?)ブリギッテの息子ゲルトも登場。

なんというか、
乳飲み子を抱えて時代に翻弄されるしかなかった前半に比べて、
後半の登場人物はみんな良い大人なんだから、
謎も事件もトラブルも銃撃もどんと来いや!
という気分になります。
私だけですかね。

なんだかんだで一気に読んでしまいました。

読んでいる途中、先の展開というか展望というかが、
まったく読めないし、
ちゃんとお話しが畳まれるかもわからないのに、
中途半端な離脱は許されないというか
読み進めて損はないと確信させてくれる御大、
やっぱすごいと思います。

1997年の第32回吉川英治文学賞受賞。
週刊文春ミステリー第1位。

いや、これ、ミステリーではなくないかな…。
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【読書メモ】2011年4月 ①

2019-08-26 10:34:10 | 【読書メモ】2011年
<読書メモ 2011年4月 ①>
カッコ内は、2019年現在の補足コメントです。


『長安牡丹花異聞』森福 都
『琥珀枕』の方が良かった。
とはいえ良い短編集だと思う。

(この作者の初期短編集です。連作ではありませんが
 どれも古代中国を舞台とした奇譚ぽいお話し。
 表題作の『長安牡丹花異聞』が第3回松本清張賞受賞(1996)作品)


『石川くん』枡野浩一
すごく面白い。
石川啄木サイテーと思いつつ、石川くんのことが大好きになった。
でも枡野さんの愛にはかなわないからいいや。

(もともとは「ほぼ日」で連載されていました。
 現代歌人・枡野浩一による石川啄木ラブエッセーです。
 石川啄木のろくでなしエピソードも満載。
 知らなかった~。
 お前ね、何が「はたらけど/はたらけど猶わが生活(くらし)
 楽にならざり/ぢつと手を見る」だよ!働けよ!!
 と怒鳴りたくなること必至です。
 最高におもしろいです)


『僕たちは歩かない』古川 日出男
(メモなし。
 雪の夜の、東京のひずみの、ちょっと不思議なお話し。
 と、よそのサイトであらすじを見ましたが、
 まったくもって記憶にない。
 合わなかったのかな…。
 良くも悪くも、めちゃくちゃ薄い本らしいので
 機会があったら読み直してみようかな)


『所轄刑事・麻生龍太郎』柴田よしき
(メモなし。
 よくわかりませんが、シリーズもののようです。
 所轄刑事から本庁勤務になって私立探偵やって
 この作者の他シリーズにも出てくるのだとか。
 そんな、「ひと通り読むだろ?」前提の設定されても困る…。
 こちらは短編5話の構成。
 申し訳ないけど本庁まで追いかける気にはならなかった)


『エハイク』吉田戦車
挿絵で解説してる句が多いのはずるいと思うけど、
そういうのがエハイクということで。

(『石川くん』と同じく、ほぼ日での連載の、単行本化です。
 ほぼ日コンテンツ、すごいな…。
 と言いつつ私は出版物しか読んでおらず、
 本家サイトはほぼ見てないんですが。
 エハイク、イラスト抜きでも「春手錠」「怒涙祖父(どるいそふ)」とか
 ワーディングというか、言葉選びというか、ちょっと頭おかしい。
 (ほめてます))
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有栖川有栖『双頭の悪魔』楽しめた!

2019-08-23 14:41:36 | 日記
有栖川有栖という作家が描く、
有栖川有栖という名前のキャラクターがワトソン役の
有栖川有栖シリーズは2種類あります。

って、何言ってるのかわかりませんね。
私も何言ってるのかわかりません。
でも、ありのままを話してるんだぜ…。

それはさておき。
ありのままを話すとですね。

<作家アリスシリーズ>は、探偵役が火村英夫。
・有栖川有栖は作家、34歳前後の設定
・火村英夫は犯罪社会学の助教授(現在は准教授)
・何かとタイトルに国名がつく
 (エラリー・クイーンの国名シリーズのオマージュ)
・長編もあるが、短編も多い
・多作。

<学生アリスシリーズ>は、探偵役が江神二郎。
・有栖川有栖は英都大学の法学部学生(1~2年)
・江神さんは永遠の大学4回生。27歳くらいか。
・何かと「読者への挑戦状」がつく
 (エラリー・クイーンへのオマージュ。ホント好きなんだな)
・作家シリーズに比べると、青春臭い記述が多い。
 (とはいえ作家アリスも歳の割に乙女チックな感傷が多い)
・基本的に、長編。で、クローズドサークルもの。
 作者は何でこんなに辛い枷を自ら設けたのか。
・そのせいでしょうね、寡作。

という感じで分類できます。
個人的な感想が大半ですが。

で、『双頭の悪魔』です。
<学生アリスシリーズ>の3作目にして、
最も評判の良い作品です。

1作目『月光ゲーム』、2作目『孤島パズル』を読んだのは
8年ほど前ですかね。
当時は、あまり良いと思わなかったんですよね。
学生アリスの青春臭い語りの部分が私の好みに合わなくて、
肝心のミステリ部分に身が入らなかったというか。

というわけでだいぶ間が空いてしまいましたが、
なんとなく気が向いて3作目を読んだ次第です。

お、意外とイケるぞ。
むしろ学生の自分語りが、ちょっと、愛らしく感じちゃって、
温かい気もちで読んじゃうぞ!!

要するに、歳を取ったということである。
こんなとこで実感したくなかった…。

<学生アリスシリーズ>は
ごりごりの本格ミステリでありパズルミステリです。
気を散らさずにマジメに読んでいくと、
ちゃんとトリックや犯人への手がかりが書かれていて
「読者への挑戦状」に対して回答できる構成になっています。

と言いつつ私は謎解きしたくてミステリを読むタイプではないので、
そこで頭使わずに読み進めちゃうんですが。

『双頭の悪魔』は、アリスとマリア、二人の語り手がいて
ふたつのクローズドサークルがあって、
ふたつの事件が起きます。

そして、物語を通じて3つの「読者への挑戦状」が突き付けられます。
奮発したなあ!
ひとつめのトリックだけわかりました。
だから勝ちとか負けとかではないですけどね。
楽しく読めたので、大勝利ではなかろうか。
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