思惟石

懈怠石のパスワード忘れたので改めて開設しました。

『名画で読み解く イギリス王家12の物語』

2022-05-31 18:12:35 | 日記
『名画で読み解く イギリス王家12の物語』
中野京子さんの<名画で読み解く>シリーズ第4弾です。

<名画で読み解く>シリーズは(この前ハプスブルク家を読んだけれど)
他に「ブルボン王朝」「ロマノフ家」「プロイセン王家」があります。
ぜんぶ読みたい!
ぜんぶ読まなきゃ!!

ところで、
今回読んだ『名画で読み解く イギリス王家12の物語』は
表紙が「ジェーン・グレイの処刑」なんですね。
『もっと知りたい 怖い絵展』(既読)のムックと同じ絵画なので、
すでに読んだ気になっていました。
はい、読んでなかった〜!
読め!読む!!(なんかテンションおかしくなった)

イギリスは「君臨すれども統治せず」のお国柄もあって、
エリザベス1世以降の王様に関しては、全然印象になかったです。
ヘンリー8世のクズっぷりから始まる
メアリ1世からのエリザベス1世が有名すぎて、
そこでわたしのなかのイギリス王家が終わってましたね。
もうね、王様、いたんだ!!くらいのレベルで知らなかった。
いるよな、そりゃ。

ハノーヴァー家から改名してウィンザー家になり、
地続きで現在のエリザベス2世へと繋がってるのを読み、
歴史って現在進行形なんだなあ、と感動もしました。
続いているよな、そりゃ。

内容は、テューダー家、ステュアート家、ハノーヴァー家の
3王家の物語。

チャールズ1世がピューリタン革命(1642)で処刑されたのは
フランス革命(1789)より100年以上前なんですね!
王様が民衆によって処刑されるって
物凄い出来事だと思うのだけど、
フランス革命が有名すぎて霞んでいる…。

とはいえ、イギリス・ピューリタンの政治が全然「ピュア」にならず、
揺り戻しで再び王政に戻るのも、歴史の皮肉っぽい。

中野さんの本は、絵画が大きく綺麗に印刷されてるのも良いよね。
以下、収録作品。

第1部 テューダー家
ハンス・ホルバイン『大使たち』
アントニス・モル『メアリ一世像』
アイザック・オリヴァー『エリザベス一世の虹の肖像画』

第2部 ステュアート家
ジョン・ギルバート『ジェイムズ王の前のガイ・フォークス』
ポール・ドラローシュ『チャールズ一世の遺体を見るクロムウェル』
ジョン・マイケル・ライト『チャールズ二世』

第3部 ハノーヴァー家
ウィリアム・ホガース『南海泡沫事件』
ウィリアム・ビーチ-『ジョージ三世』
ウィリアム・ターナー『奴隷船』
フランツ・ヴィンターハルター『ヴィクトリアの家族』
フランツ・ヴィンターハルター『エドワード王子』
ジョン・ラヴェリ『バッキンガム宮殿のロイヤルファミリー』


名画で読み解く ハプスブルク家12の物語』中野京子
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【読書メモ】2016年4月 ⑤『阿蘭陀西鶴』

2022-05-27 11:51:34 | 【読書メモ】2016年
<読書メモ 2016年4月 ⑤>
カッコ内は、2022年現在の補足コメントです。


『阿蘭陀西鶴』朝井まかて

盲目の娘「おあい」から見た井原西鶴の物語。
前半はおあいの主観に感化されて、
西鶴ってやなヤツだなあ…という所感。
徐々に、西鶴には西鶴なりの考えがありそうだな、
おあいの見方はうがっているのかもなあ、という感じになって、
いつの間にか父と娘の間になんらかの相互理解が生まれている。

おあいの一人称ではないのだけど、おあいにリンクした三人称というか、
文体も、徐々に西鶴への理解を示す語り口調になっていて、
上手な作家さんなんだなあと思った。

どこからどこまでが作者の創作なのかと思ったけれど、
妻に先立たれて盲目の娘と暮らしたというのは、史実らしい。

(朝井まかてに関しては、
 直木賞の前後で作風が変わったというか
 小説から感じる熱量?重さ?が変わったというか、
 そんなような印象を抱いています。
 どんな印象だって感じの説明で、あれですが。

 『阿蘭陀西鶴』は直木賞受賞後の第一作にして、第25回織田作之助賞受賞作)
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愛に溢れてるけど!『愛なき世界』三浦しをん

2022-05-24 13:13:40 | 日記
『愛なき世界』三浦しをん

T大学理学部生物科学研究室の松田ゼミのメンバーと、
赤門近くの洋食屋・円福亭のコック見習い藤丸くんの物語。

植物学も、「学ぶ」ということも、日々の暮らしも、愛おしくなる。
良い世界!!良い読書時間!!

松田ゼミは植物の研究をしていて、
藤丸くんが恋する博士課程の本村さんは
「愛だの恋だのない」植物(シロイヌナズナ)の研究に
全てを捧げると決めている。
あ、『愛なき世界』って、そういうタイトルだったのか!
もっと不穏なお話しかと思って、身構えちゃった。
新聞小説=“昼ドラっぽい”という謎のイメージに引っ張られまして笑
不倫ばっかりの短編集とか連想してしまった。

ちなみにこの小説、元々は読売新聞の連載小説なのです。
突然脱線しますが、新聞小説といえば、新入社員の頃の同期女子が
毎朝、日経新聞を熱心に読んでいたのです。
勉強熱心だなあ偉いなあと思っていたところ、彼女曰く
「“あいるけ”の続きが気になっちゃってさ〜」と。
『愛の流刑地』を熱烈に読んでました。
ああ、それ、流行ってるよね…。
それ以来、新聞小説って昼ドラっぽいイメージだったんですよね。

(そんなわけないか。
『聖なる怠け者の冒険』『横道世之介』も新聞小説じゃないか)

それはさておき。

T大の理系人間の生態は、とても愛おしくておもしろい。
みんなマジメで、みんなどこか抜けていて、みんな愛に生きている。
サボテンが好きすぎるとか、芋が好きすぎるとか。
安田講堂前の植え込みが芋になっていても、まあ、
気づかないかもしれない。うらやましい。

松田ゼミが入っている理学部B号館(古い石造建築)は
東大理学部2号館のことだと思います。
東大建築を設計しまくった建築家・内田祥三による煉瓦造建築。
わたしは建築学科が入っている工学部界隈(1号館は登録有形文化財)に
お邪魔したことがあるけれど、
堅牢で荘厳な石造建築で夏でもひんやりしているような、
独特の雰囲気がある空間でした。憧れるよね!
ちなみに堅牢すぎて、携帯の電波が全然入らなかった。

植物学の研究内容や、T大の生活がすごく細やかに描かれていて、
どうやって取材したんだろうかと思ったら、
『舟を編む』を読んだ東大の先生から三浦氏に売り込みがあったのが
執筆のきっかけらしい。
それもまた、おもしろいな!!
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『アウグストゥス』もっと売れてもいいのになあ…

2022-05-23 14:37:05 | 日記
『アウグストゥス』
ジョン・ウィリアムズ
訳:布施由紀子


ユリウス・カエサルの後継者であり、
ローマ帝国初代皇帝となったアウグストゥスの物語。

青年期から76歳で亡くなるまでを描いてますが、
“書簡小説”という体裁です。
なので、様々な人物の視点から物語が描かれ、
点描のように少しずつ出来事が浮かび上がっていきます。

部下や友人、敵の書簡から、噂好きの詩人や街中の戯言などなど。
ちょっと引いた視点と切れ端を繋ぐような構成が、
歴史小説としては良い感じにリアルというか。

第一部はアウグストゥスの権力が安定するまでなのだけど、
決定的な政変や出来事はなく、じわじわと権力のトップに立つ
(しかも不安定!)様子がわかりやすかった。
18歳でカエサルが暗殺された後も、
順調に帝政に移行したわけではなかったんだな。

第二部はひとり娘ユリアの回顧録がベース。
スキャンダラスというか、ローマ市民に格好の話題を振りまくタイプの
娘がいたんですね。知らなかった。
彼女の存在が、作者がこの小説を書こうと思ったきっかけだったらしい。

第3部は最晩年のアウグストゥスによる、人生の振り返り。
しんみり。

ローマ帝国は最初の4皇帝の時代が最も安定していたとか、
実はそれ以前の共和制時代こそが真のローマだったとか、
色々諸説あるけど、大帝国の節目をつくった人だと思います。
アレクサンドロスは偉大だけど、事業継承できなかったしね!

そういえば地図を見ていて気づいたけど、
アレクサンドリアという都市が複数あるのは知っていたけど、
カエサレアも複数あるんか〜い!となった。
紛らわしいけど、しょうがない、のか?

備忘録的メモですが、
アウグストゥスは称号。
本名はガイウス・ユリウス・カエサル・オクタウィアヌス、
通称オクタウィアヌスと書かれることが多いが、
この小説ではオクタウィウスで通している。
紛らわしいがしょうがない。

娘のユリアは、「ユリウス氏族の娘=ユリア」である。
ローマ女性の名前はぜんぶそんな感じ。
オクタウィヌスの姉はオクタウィア=オクタウィヌス氏族の娘、
である。
雑〜!!と思ったけど、日本の平安貴族も「藤原道綱の母」だもんなあ。

ちなみに作者のジョン・ウィリアムズは『ストーナー』の作家。
長編は4作しか刊行していないらしい。
寡作だったんだなあ、残念。
生前はあまり売れなかったらしいけど、
田中一郎みたいな名前で損してないかな。
余計なお世話か。

『アウグストゥス』は全米図書賞受賞。
『ストーナー』と合わせて、もっと売れて良いと思う。
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【読書メモ】2016年4月 ④『DIVE!』

2022-05-19 17:52:44 | 【読書メモ】2016年
<読書メモ 2016年4月 ④>
カッコ内は、2022年現在の補足コメントです。


『DIVE!』森絵都
直木賞受賞作『風に舞いあがるビニールシート』は読んだことある!
と思っていたけれど、よく考えたら読んでないな…。
というか、この作者の作品を読むの初めてかも…。
読んだと勘違いする系のポンコツ記憶。大丈夫か私。

児童文学から出てきた人らしく、10代の葛藤とか愛らしさとかが
生き生きと書かれていて、微笑ましかったです。
テンポも良く読みやすい。
でも、まあ、ちょっと、マンガっぽいなあとも思った。
別にそれで問題はないのだけど。

主人公のトモキを中心に物語が進むのかと思ったら、
飛沫と要一くんを主体にしたパートが続き、
さらに周囲の登場人物パートでラストの大会を盛り上げるという構成。

恭子を悩ますケンとの関係とか、幸也の小さな悩みとか、
あまりいらない気もしたけど、でも、そういうのがすべて効いて、
青春って愛おしいなあという感想になるのかもしれない。
愛おしいなあ。
20代の頃は、10代の青春モノなんて鳥肌が立って読めなかったけれど、
がんばれがんばれーと思って温かく見守りながら読んでしまった。
35歳だわ。

(もはや40代ですけどね。
 相変わらずジュブナイル(?)方面は好きじゃないけど、
 これはおもしろかった!
 やはり、作者の筆力だと思います。
 家族の三世代物語『みかづき』も良かったな)
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