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堀江敏幸『雪沼とその周辺』すごく良い

2018-06-08 14:20:51 | 日記
堀江敏幸『雪沼とその周辺』を読みました。

雪沼という架空の街およびその周辺に住む人々を描いた
短編集です。

冒頭に収録されている『スタンス・ドット』で川端康成賞(2003年)、
連作短編集としての『雪沼とその周辺』で谷崎潤一郎賞を受賞。

解説の池澤夏樹氏が登場人物たちを
「篤実という資質を備えている」
と表現したことにとても共感を覚えました。

全体的に、人も、風景も、物語も、「篤実」だなあって感じなのです。
痛ましい事件もあるのですが、それらにも向き合って
粛々と生きている感じが好ましいです。

7つの物語のどの主人公も、
山あいに存在する寂れた街にふさわしく
ドラマチックな要素のない人々ですが、
それがまた味わい深いし、ちょっとだけ羨ましい。

ところで、すべての登場人物は「さん」づけで描かれているのですが
『スタンス・ドット』のボウリング場店主だけは
「彼」と表現されています。
これも何かの狙いがあるのかな。

なにはともあれ、良い小説です。
誰かにプレゼントしたい。

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