思惟石

懈怠石のパスワード忘れたので改めて開設しました。

柚木麻子『本屋さんのダイアナ』

2019-07-31 15:02:28 | 日記
“読もうかなアンテナ”にひっかけたまま
しばらく放置してしまい、
どういう話しでなぜ読もうと思ったのかを失念し…
ということがしょっちゅうです。
大丈夫か私。

で、『本屋さんのダイアナ』です。
私の大丈夫じゃない脳みその適当な記憶から
なぜか「本屋さんをやってるダイアナさんの日常物語」と思って
読み始めました。

ちがうじゃん…。

母子家庭育ちのキラキラネームっ子・ダイアナと、
箱入り娘(故に色々と葛藤を抱える)・彩子ちゃん。
二人が出会い、それぞれが少女から大人になるまでの
成長物語です。

おお、私が苦手でついつい避けちゃう“少女小説”
思春期モノじゃないか…。

と、知っていたら読まなかったと思う。

が、読んで良かったと思う。

ふたりの主人公それぞれに、
共感できるところ、好感が持てるところがあって、
それぞれに良い成長物語でした。

ついでに言うと、
10代のどうでもいい(失礼)ドロドロや葛藤って
書き出したらキリが無いと思うのだけど、
そういうぐるぐるした部分は最小限に抑えられていて
いっそ潔いくらいにテンポよくお話しが進むのが、
とても良かったです。

ダイアナと彩子ちゃんの共通の趣味が読書ということで、
作中にもあちこちに“少女小説”の名作たちが登場します。
『赤毛のアン』『若草物語』『長くつ下のピッピ』…
これらの読書体験を経て大人になった人には
さらに美味しいお話しかもしれません。

私は少年ジャンプしか読まない子ども時代を送ったので
ことごとく未読ですけどね…。
まあ、そんな私でも楽しめたということです!

対照的な二人の少女の成長物語ではありますが、
「私はこっち派だな」という読み方ではなくて、
すべての女性に、二人の要素がそれぞれあるんじゃないかなと思います。
一言では定義できない多面的な自分(もしくは女というもの)を
なんとな~く認められるようになった大人に
沁みる一冊なのではないかと。

いや、10代が読んでもおもしろいと思いますけどね。
少年ジャンプしか読んでなかったあの頃の私には
さっぱりわからないとも思いますけどね…。

第12回本屋大賞(2015)で4位。
直木賞にもノミネートされました。
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【読書メモ】2011年3月 ③

2019-07-29 15:54:58 | 【読書メモ】2011年
<読書メモ 2011年3月 ③>
カッコ内は、2019年現在の補足コメントです。


『ぐるりのこと』梨木香歩
リリー・フランキーの映画とは関係無いらしい。
結構思考の深いところを書いている随筆。
軽く読む感じではないか。

(梨木香歩の第二エッセイ集『ぐるりのこと』は2007年初版。
 エッセイのタイトルは、京都に住む茸研究家の吉見昭一氏が
 「(最近の子どもたちに向けて)自分のぐるりのことに
 もっと目を向けてほしい」というような話しをし、
 身の回りのこと=「ぐるりのこと」という語感や表現から
 インスピレーションを得たとか。

 身近なことをテーマに扱いつつも、深く、まっすぐに、思索している印象。
 ちょっと難解に感じる部分もありますが、
 梨木香歩という人物のモノの考え方が
 誤魔化しも衒いも修飾も無く、伺えるようなエッセイです。
 こちらも、真正面から読んだ方がいいな、と思えるような。

 第一エッセイの『春になったら苺を摘みに』の
 軽くつまみ食いしたくなるような、
 何度もちょこちょこ読みたい感じとは
 だいぶ印象が異なると思います。
 
 ちなみに映画は『ぐるりのこと。』(2008)
 木村多江とリリー・フランキー演じる夫婦の物語。
 しつこいですが、梨木さんのエッセイとは、一切、1ミリも、
 関係ないようです。
 映画の内容は知らないけど)
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逢坂剛『百舌の叫ぶ夜』

2019-07-26 15:15:59 | 日記
逢坂 剛『百舌の叫ぶ夜』読みました。

数年前になりますが、
ドラマ化された『MOZU』がヒットした記憶があります。
続編とか映画化もされましたよね。
観てないけど。
(映像作品にホント興味がなくて…)

原作である小説『百舌の叫ぶ夜』は1986年の作品。
意外と古い。
インターネットなんて出てこないし、
GPSもケータイもなくて公衆電話です。

とはいえ原作も当時からヒットし、続編が続々出て、
現在までに「百舌シリーズ」と言われる作品は
7冊もあるようです。
この設定でずいぶん書きましたね…。

それはさておき、単品としての『百舌の叫ぶ夜』は
とてもおもしろかったです!

「百舌」を名乗る殺し屋がいて、
組織に尻尾切りされてしまうという側面と。
新宿での街中爆破テロ(?)を追う警察サイド。
その中心にいるのは妻が被害者として巻き込まれた
公安の倉木刑事。

章ごとに時間も前後して、
(途中でなんとなーくわかるし、
 そうすると章前の記号の意味もわかる、
 プチ親切設計になっています)
なかなかスリリングな展開で
ぐいぐい読ませてくれる一冊になっています。

現場のたたき上げ刑事の大杉の熱血漢っぷり
(大事な情報をよくわからない意趣返しに使っちゃうあたり、
 いいですね)と、
どういう生まれ育ちをしたらこんなにハードボイルドに
なるんだよと突っ込みたくなる公安刑事の倉木の
対象っぷりは絶妙なバランスでした。

百舌も良かった。
妹の謎も、おもしろかった。
映像化が難しいと言われていたのもわかります。

で、楽しく読みました!
一気に読みました!

読みながら、
これは一冊限りの作品じゃなかろうか
という感想を抱いた次第ですけど。

なんというか、ご好評につき、みたいに続編を書くと
倉木や百舌が無双状態になって
『グラーグ57』のレオなみに
無敵キャラゲシュタルト崩壊を起こすんじゃないかなあと。
(作者のデビュー作『チャイルド44』はまちがいなく傑作です!
 一作目が良すぎたってのもあるんですよね…
 でもまあ、『グラーグ57』はいまいちです。
 一番ひどいのは邦題だけど)

いらぬ心配をしたわけです。
まあ、続編は読んでないので、杞憂かどうかわからないけど。

それはさておき、単品としての『百舌の叫ぶ夜』は
とてもおもしろいですよ!!
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サイモン・シン『フェルマーの最終定理』数学ってすごい!

2019-07-23 15:33:28 | 日記
サイモン・シン『フェルマーの最終定理』です。
数学者ってすごい!
数学っておもしろい!

と、数学が苦手な人でも思えるはずの、
すごい一冊です。
本当にすごい!
何がすごいって、
数学者たちのファクトもすごいけど、
これだけ読みやすく書いた作者がすごいですよ!!!

と興奮気味ですが。

こちらは小説ではなく、
作者が関わった
イギリスのドキュメンタリー番組の取材内容を元に
構成されたノンフィクションです。

300年以上も証明がなされなかったことで有名な
「フェルマーの最終定理」を解いたのが、
数学者アンドリュー・ワイルズ。

で、この本は彼の物語かと思いきや、
序盤からピュタゴラス教団です。
そしてフェルマー、オイラー、女性数学者のジェルマン、
やんちゃなガロア、さらに谷山豊と志村五郎…。

数学の始まりの始まりから始まる、
壮大な数学叙事詩!!!
難しい数論も数式もわからないけれど、
なんというか、感動する。

個人的に驚いたのは、
有名な数学者って、本当に若いうちに
ものすごい功績を残しているということ。
しかも早逝する人も多い。

ガロア理論の研究はガロアが10代の頃には
理論構築されていたとか。
若い!
というか不本意な決闘により20歳で亡くなっています。
若すぎ!
私はそのころ居酒屋でバイトしてましたよ。

「谷山・志村予想」の原案を谷山豊が提示したのは
28歳だそうです。
若いな!
私はその頃毎晩泥酔してましたよ!

いやあ、何はともあれ、
高校の数学や物理で「ぐぬぬ…」と思っていた
公式や定理が、こんなにも人間ドラマに溢れていたとはね。

数世代に渡って数学者たちが
一歩ずつ、証明を進めていく過程なんかは
本当に感動を覚えます。
学問ってすごいなあと、素直に思います。

作者の文章も良いのだと思いますが、
訳文も良いんだと思います。
本当に、数学苦手でも楽しめる一冊!!


ここからはエセ理系による余談ですが、
完全数(6)とか、友愛数(220,284)とか、
自然数の不思議もおもしろかったです。
虚数の話しも学生の頃はピンとこなかったけど、
この本で改めて読んだらおもしろかったです。
証明は、今も昔も苦手だな…と思うけど
読むとやっぱりおもしろかったです。
というわけで、理系には間違いなくおもしろい一冊です!

必読!!!
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【読書メモ】2011年3月 ②

2019-07-18 15:20:01 | 【読書メモ】2011年
<読書メモ 2011年3月 ②>
カッコ内は、2019年現在の補足コメントです。

『エトロフ発緊急電』佐々木譲
導入部分、ちょっと話しが散漫だった気がする。
神父の南京エピソードは辛かった。

(1941年、第二次世界大戦勃発前後、エトロフ島に潜入した
 日系アメリカ人スパイの物語。
 第3回山本周五郎賞受賞。
 戦争に翻弄される人々の物語は国籍や人種を問わず読んでいて辛い)


『私たちがやったこと』レベッカ・ブラウン/柴田元幸
『若かった日々』の方が好き。

(ちょっと幻想的?というか不条理?な愛がテーマの短編集。
 『変愛小説集』に収録されそうなお話したちです)


『陰摩羅鬼の瑕』京極夏彦
相変わらず分厚いなーと思いつつ、
オチも見えるなーと思いつつ、結構楽しく読めた。

(<百鬼夜行シリーズ>の第8弾。
 白樺湖畔のお屋敷に住む元華族の由良氏は、過去4度に渡って
 新婚ほやほやの新婦を殺されている。
 って、相変わらずのトンデモ設定である。
 前半から登場するのは、ダメ人間小説家の関口くんと
 ダメ人間探偵の榎木津先生で、京極堂は後半に現れます。
 関口くんと由良元伯爵の会話は、
 「ほんとこいつらメンドクサイ思考してんな…」
 という相変わらずな感じ満載です。
 1200ページ超え!凶器!)


『シーセッド・ヒーセッド』柴田よしき
かるく読むのにちょうどいい長さと内容。
シリーズものらしいので他のも読もうと思う。

(新宿2丁目で24時間営業の無認可保育園を営んでいる
 お人よしな園長兼探偵のハナちゃんこと
 <花咲慎一郎シリーズ>の3冊目だそうです。
 3つの中篇がゆるゆると繋がっている構成。
 この作者はキャラが他シリーズにも横断して登場するタイプらしく、
 ハナちゃんに何かと絡むヤクザの山内氏がそれのようです)
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