思惟石

懈怠石のパスワード忘れたので改めて開設しました。

『ジャッカルの日』元祖!冒険小説

2021-04-28 17:30:12 | 日記
フレデリック・フォーサイス『ジャッカルの日』。
冒険・スパイ小説の金字塔と言われている作品です。

フランス大統領シャルル・ドゴール暗殺を巡るスリラー。
作者のフォーサイスは元々ジャーナリストで、
パリにロイターの特派員として駐在した経験と情報網を使って
この小説を書いたとのこと。
処女作です。

舞台は1960年代初頭のフランス。
反政府組織がドゴールの暗殺に数度の失敗を繰り返し
崩壊寸前に追い込まれるまでの冒頭は、まるごと史実らしい。
アルジェリア問題とか、すごく勉強になります。

物語は、反政府組織OASが外国の「金で動く」暗殺者
ジャッカルを雇うことから、展開します。

とはいえ、淡々と描かれる史実っぽいリアルな描写。
どこからがフィクションで
どこまでがノンフィクションかわからない…!
という点も、この小説の特徴であり面白さです。

フランス首脳部は暗殺者の存在を半信半疑ながら掴むものの
どこの誰を探したら良いものか、というところから、
老練刑事のルベルが動くことになり
地味に、地道に、糸を手繰っていく。

その裏では、暗殺者ジャッカルが武器を用意したり
偽の身分証を手に入れる様子が詳細に描かれます
(死亡届を無視して出生届を出せば死人のパスポートが
発行されるんだって。ほえ〜)。
偽の身分をつくるために自分に似た背格好の
外国人のパスポートをそっと盗むとか(紛失したと勘違いする)、
傷痍軍人の変装をするために勲章の勉強をする様子とか、
取材が細かいなあ〜と思う。

勉強になっちゃうけど、大丈夫か?
と思ったら、実際、実在の暗殺者たちも愛読していた小説らしい。

とはいえ、ケネディを暗殺した犯人の愛読書は
『ライ麦畑でつかまえて』だったらしいし、
犯罪者の愛読書を深追いしたいわけではないので閑話休題である。

ジャッカルという人間の
冷静で完璧主義な仕事人の姿を描く合間に、
ちょっと贅沢を楽しんじゃうって感じのシーンが入るのもいい。

ジャッカルは生まれながらのセレブではないし
紳士的振る舞いをする自分や美味しい食事や美人には
憧れに近い好意を持っていて、
暗殺が成功して大金を得たら優雅に引退したいと考えている感覚とか、
ちょっと感情移入してしまうんですよね。

作品そのものも人気が高いんですが、
ジャッカルという登場人物も人気らしいです。
完全同意。

1971年初版。
半世紀前に出版されたとは思えぬエンタメ感。
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【読書メモ】2015年3月 ⑤ボッシュ月間スタート

2021-04-27 17:32:51 | 【読書メモ】2015年
<読書メモ 2015年3月 ⑤>

この月はマイクル・コナリー大好きな先輩から
<ハリー・ボッシュ>シリーズをまとめ借りしまして。
ボッシュ月間がスタートしました。

ちなみにシリーズ第1作の『ナイトホークス』も借りたのですが、
2008年に読んでいたのですっとばしました。

とにかくこのシリーズ、売れてるからなのか作者の変化なのか、
新作が出るたびにページ数が増えていくんですよ。
当時で14作も出ていたから、シリーズ読了までに手こずったぜ…。
(半年かかりました)

それでは、ボッシュ月間、スターティン。


『ブラック・アイス』マイクル・コナリー
ボッシュシリーズ2作目。
まだ離婚どころか結婚もしておらん。
珍しく上下巻に別れていないのだけど、読み応えはヘビーだった。
もしかして性に合わないのだろうか。
先輩からまとめて借りたので、まだまだ読まなくちゃなのだけど。
ボッシュは30代後半くらいかな?
相変わらず短絡的だし、ピッキングで違法侵入し放題です。
大丈夫かこの人。


『ブラック・ハート』マイクル・コナリー
シリーズ3作目。
原題は「コンクリート・ブロンド」。
邦題の方がいいけど、前作とかぶって紛らわしいのが難点。
作者はチャンドラー崇拝者(チャンドリアンっていうらしい)で
ボッシュの強敵である女弁護士にその名前を付けるのですが、
大物作家の名前はイメージの主張が強いので
読むのに元祖チャンドラーが脳裡にちらついて邪魔である。
と言いつつ「ブラック・アイス」よりページ数はるかに多いのに
さくさくっと楽しく読めた。
私がボッシュに惹かれ始めてるのか?
(それはないな。ホントこのオッサン犯罪すれすれすぎる)
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『蜜蜂と遠雷』今更だけど読んだ!良かった!!

2021-04-26 17:45:36 | 日記
今更ですが、ようやく読みました。
いや〜、読んで良かった!
さすが恩田陸。
さすが本屋大賞。

芳ヶ江国際ピアノコンクールという架空のコンクールの
予選から本戦までの短い期間を濃密に描いた物語。

個性も生い立ちも異なる4人の主人公を、それぞれ丁寧に描く。
演奏も生活も野生児的な16歳の少年、風間塵。
元天才少女で一度ドロップアウトした20歳、栄伝亜夜。
ハイブリッド混血王子でスター性抜群の19歳、マサル・カルロス。
参加者最年長28歳会社員の再挑戦者、高島明石。

一人ひとりが自分の才能と向き合い、音楽と向き合い、
お互いに影響を受けながら成長していく様が、とてもまっすぐ。
まっすぐで、飾り気なくて、胸に迫る。

とにかく、4人が4人とも大切にしているのは、
自分がどのように成長できるか、何処へ向かうか。

こういう系でよくある「足を引っ張る」「ライバルを陥れる」
という発想は彼らにはない。
わかりやすい悪役がいないストーリーの純粋さが、
逆にヒリヒリするというか、結末まで読み手が油断できないというか。

こういう純度の高いストーリーを、
これだけ人の心を動かす熱量と表現で書き切るっていうのは、
やっぱり凄いことだと思う。
恩田陸は凄いんだなあと、今更ながら思いました。

これにて直木賞(ようやくだ!)。
『チョコレートコスモス』のピアノ版と言っても良い作品かも。
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【読書メモ】2015年3月 ④ 丸谷才一

2021-04-23 18:29:47 | 【読書メモ】2015年
<読書メモ 2015年3月 ④>
カッコ内は、2021年現在の補足コメントです。


『人間的なアルファベット』丸谷才一
「人間的」の意味は、「性的な」ということだそうです。
辞書風に項目立てしたエッセイ集。

月は男か女かという話が面白い。
ドイツ語では、月は男性名詞、太陽が女性名詞。
英語では、月は「彼女」と言うが斑点は「月の男」と言われる。
月が受胎させるという神話も多いらしく、
グリーンランドでは、女性は寝るとき用心のために
腹に唾を塗るというおまじないがあるそうな。

そういえば京極作品に「桂男(かつらおとこ)」という
あやかしの話しがあった。
月にはかぐや姫が住んでいるし、日本はどうなんだろう。


(A―Zでテーマを決めて話しが始まるんですが、
 相変わらずの丸谷節で話があちこちに繋がり飛びまくり
 とっても勉強になりますし、
 テーマはどこ行った?ともなります。
 名エッセイ。

 第一項目アクトレス(女優)は、山田五十鈴から始まり
 篠田鉱造『明治百話』シリーズ(幕末の彰義隊氏や武家屋敷の
 大奥女中の聞き語りって、なにそれ超おもしろそう!)、
 そのネタである幕末女役者(女団十郎と呼ばれた岩井粂八)
 から遡って江戸中期、まだ男役者しかいない時代の女役者の話しに…

 知識のスペクタクル!
 本当、超おもしろい。

 私的には上記の「月の性別」ネタ、特に好きです。
 外国の古い言い伝えとか風習とかおまじないとか、
 そういうの、好きなんですよねえ。
 フレイザー『金枝篇』とか、山本義隆『重力と磁力の発見』とか。

 桂男は、京極夏彦『西巷説百物語』の1話目ですね。
 月に追われた男(仙人という説も)で、
 古くは中国の伝説のようですが
 日本にも平安時代には伝わっていたようです。
 とはいえ「かぐや姫」の方が日本人好みなのかな、
 「桂男」は若干、影が薄いですね)
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【読書メモ】2015年3月 ③ 『Twelve Y. O.』+1

2021-04-22 12:39:08 | 【読書メモ】2015年
<読書メモ 2015年3月 ③>
カッコ内は、2021年現在の補足コメントです。


『Twelve Y. O.』福井晴敏
「亡国のイージス」面白かったなあ。と思ったら読書メモにない。
いつ読んだのだろうか…。
こちらは江戸川乱歩賞を獲ったデビュー作。
この作者は一環して、自衛隊を通じて日本のあり方を問う人なんだなあ。
あと映画好きの爆発好きな人なんだなあ。
デビュー作とは思えぬ筆致でびっくりした。
リサちゃんかわいい。

(第43回江戸川乱歩賞では『川の深さは』という作品で
 大沢在昌に絶賛されつつも受賞を逃し、
 次作である『Twelve Y. O.』で見事に第44回江戸川乱歩賞を受賞。
 という、背景もドラマチックなデビュー作。

 ちなみに解説は大沢在昌で、本編を上回りかねない熱量です笑
 
 落選作『川の深さは』(後に刊行された)と敢えて同じ世界線で
 書かれており(気概がすごい)、
 代表作『亡国のイージス』にも繋がっています。

 『Twelve Y. O.』の主人公というか狂言回し的なポジションで
 私的に福井作品で一番お気に入りのヘリおじさんは、
 『亡国のイージス』にもちょっとだけ出ています。
 運転できてんじゃん!やったねおじさん!!)


『マティーニに懺悔を』今野敏
武道家であり茶道の師範である男性が、バーで
牧師と美人とバーテンと飲んでる話し。
エンタメですね。ドラマとかにすると良いのでは。
面白くてサラッと読めたけど、ヒロインがちょっとなあ。
「いい女」と書かれるだけで、
他に言うことないのかって思えてしまうよね。残念。
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