思惟石

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津原泰水『ルピナス探偵団の当惑』

2018-06-05 11:34:07 | 日記
津原泰水『ルピナス探偵団の当惑』を読みました。

猿渡シリーズ(怪異と怖い女ばかり寄ってくる猿渡くんというダメ男が
何かと酷い目に遭うという短編シリーズ)
が好きで、この作者の他の作品も読もうと思っていたのでした。

ルピナス探偵団シリーズは、元々は津原やすみ名義で
ティーンズ向けに書かれていたものだそうです。
だからというわけではないですが、
結構キャラが立っています。
それが、大人が読んでも魅力に感じられる造詣なのです。
テンポ良い会話も、この頃から作者らしさが出ていて良い感じ。
あっという間に読了しました。

ルピナス探偵団こと、主要メンバーは、
聖ルピナス学園に通う彩子(さいこ)、キリエ、麻耶、
プラス、彩子の憧れの人である祀島(しじま)くん。

彩子の姉であり、刑事でもある不二子
(良い感じにハチャメチャなキャラである)とその上司に
事件に巻き込まれる(もしくは自ら顔を突っ込む)
という構成での、短編ミステリ3篇です。

『冷えたピザはいかが?』は、いきなり犯人の名前から始まります。
古畑任三郎形式、と言うと怒られたりするんでしょうか。
謎のメインは、犯人はなぜ、冷えたピザを食べたのか。
キャラ立ちしたメンバーの登場篇として、とても面白かったです。
祀島くんの博学な割にピントがずれてる感じが良いし、
不二子姐さんのフリーダム感も良い。
謎解きの部分は、理詰めすぎて、逆にわかりにくかったかも。

『ようこそ雪の館へ』で、祀島くんが探偵役に。
私的には、祀島くんにはぐいぐい前面に出るより
我が道を歩んでいてほしかった……。
青い薔薇のうんちくがふんだんに語られていて、
作者は青薔薇(もしくは『虚無への供物』)がホント好きだなあと
どうでもいいですがシミジミしました。

『大女優の右手』
完全に祀島くんが探偵です。
それはさておき、舞台で演じられているのは
尾崎翠の『琉璃玉の耳輪』です。
これ、後に原案・尾崎翠、小説・津原泰水の名義で
小説化されているようです。あとで読もう。
そして、完全に探偵になったと思った祀島くんでしたが
その裏には犯人の本当の動機を隠ぺいしようという
たくらみが……、
って、何?よくわからない?
ちょっと心の動きが複雑すぎない?
裏の裏まで上手に読み込めなかった感が……。
私の不徳の致すところである。

まあ、いいや。
ミステリとしての「スッキリ感!」はさておき。

彩子・キリエ・麻耶・祀島くんの関係性や
会話の小気味好さは、読んでいて気持ち良いです。

続編『ルピナス探偵団の憂愁』もあるらしいので
(どうでも良いですが、
どっちが先かわかりにくいタイトルである)
そちらも読む予定。

難癖つけてる感がありますが、
結構、おススメな良作です。
コメント
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