思惟石

懈怠石のパスワード忘れたので改めて開設しました。

アンディ・ウィアー『火星の人』すごい面白い!

2018-02-28 20:06:39 | 日記
きた!
今年ひとつめの当たりがきました!

アンディ・ウィアーのデビュー作『火星の人』です。
超おもしろい!
おすすめ!!

内容は、火星サバイバルです。
火星人や火星の女王や宇宙戦争や時空の歪みはありません。
人類の持てる技術(今よりちょっと未来のね)のみで、
本気の火星サバイバルです。
ファンタジーや形而上学的な現象や「少し不思議」は一切なし!

ジャンルとしてハードSFとか言われてますが、
とにかく語り部でもある主人公の性格がユーモラスで
ポジティブで、「ハード!」な感じは全然ありません。
ユーモア溢れる語りと、前向きな思考過程を読んでいると
こちらも勇気付けられるし、微笑ましくもある。
状況はハードだけど。

小手先のどんでん返しとかミスリードとか無く、
マジでサバイバルしてるだけなんですけど、
とにかく面白いのです。

もし、無人島に誰かを道連れにできるなら
私は絶対TOKIOを連れて行くと心に決めていますが
(先方の意見は無視するものとする)
火星に道連れするなら、断然、マーク・ワトニーです。
ワトニーかっこいい。
ワトニーとジャガイモ育てたい。
ワトニーとアメリカンコメディドラマ観たい。
ワトニーと宇宙船ぶっ壊したい。

どのページを読んでも、等しく愛しい。

とにかく面白いです。面白かったです。



どーでもいいけど、私、
結構SFが好きなんでしょうか。
自分でも知らなかった。
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仁木悦子『猫は知っていた』を知らなかった。

2018-02-20 15:20:13 | 日記
仁木悦子という作家さん、ご存知ですか?
私は寡聞にして知りませんでした。
で、先日『黒いハンカチ』という短編集を読んだ際、
そのあとがきで
「松本清張と同時代に推理小説ブームをつくった人」
的な文脈で紹介されていたのを読み、興味を持った次第です。

出版当時はベストセラーになったものの、
今では絶版のいわゆる「忘れられた作家」的な人かしらん。
と思ったら、ポプラ社からポップな表紙で再版されてるのですね。
ちなみにカバーイラストは『夜は短し歩けよ乙女』や
『謎解きはディナーのあとで』の中村祐介氏。
なんとなくマーケット戦略がわかるチョイスである。
(誉めてます)

というわけで『猫は知っていた』です。
主人公は、語り手である仁木悦子と、兄の仁木雄太郎の兄妹探偵。
この二人の会話が、なんというか明るくテンポ良く、
安心してすいすい読めます。
情景描写や、背景の説明なども、すっきりした品があって
健やかな感じ。とにかく読みやすい。

読みやすいが、なんと、初版は昭和32年(1957年)です。
すごいなあ。
ちなみに松本清張の『点と線』がその翌年だそうです。

両親が疎開先を気に入って田舎に引っ込んだまま、
学生の兄妹だけで都内に残っている、という設定。
で、兄の友人のつてで、とある病院の建物内に
下宿させてもらうことになったものの、
不可解な事件が起きて…。
というのがあらすじです。

最初に洞察力を見せるのは妹の悦子なので、
おや?と思いましたが、徐々に、兄がそれを上回る探偵役で、
悦子も良い助手という構図が見えてきます。
ただのワトソンではないのね!偉いわ悦子!と
誉めたくなるくらいには察しの良い悦子です。

防空壕での事件の検証などは、
普通、兄妹でこんなにマジメにディスカッションするものか?
と思うくらいマジメに議論を重ねるのですが、
その会話も育ちと地頭の良い兄妹らしいというか、
共感というよりも羨望って感じですかね。
なんか、良い感じなのである。
(私と兄ではこんなエスタブリッシュで意義ある会話なぞできぬ)

ちょこちょこ事件に絡んでくる子猫のチミも良い味だしてますし、
兄の専攻が植物学ってのもマイナーで良いですね。
あまり難しいこと考えずにミステリー読みたい、という人に
進めやすいです。
あと、有名すぎない作家で、且つ、質が高い、
ってことで、女子に薦めるとポイントあがるかも。
(そうでもないか?)
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皆川博子『アルモニカ・ディアボリカ』

2018-02-09 11:38:34 | 日記
『開かせていただき光栄です』の続編、読みました。

『アルモニカ・ディアボリカ』は、前作の5年後が舞台。
当然のように、前作も読んでいるという前提で
書かれている作品なので、未読の方はご注意ください。

ついでに、ネタバレの感想ですので、
今作未読の方も気を付けてください。

今回は、アルや盲目の判事サー・ジョンが活躍します。
前回は人物的にうすーく描かれていたナイジェルの
背景や内面にも踏み込んでいます。

読んでみて、そうそう、と思い出しました。
前作は、エドの出自や鬱屈は描かれていたけれど、
ナイジェルは影が薄いなあと思っていたのでした。

この子、何考えてるんだろ、と。

今回はナイジェルの出自やら心理やらがひとつの軸で、
なかなか面白かったです。
こいつ、ホントにダメなヤツ…と呆れもしました。
まあ、いいけど。

スキニー・アルがすごくしっかり者で大活躍なのは良しとして。
サー・ジョンは働きすぎではなかろうか。
だいぶおじいちゃんのイメージだったんだけど。
大丈夫か。

読んでいて二転三転したり新展開したりと、
久しぶりに一気読み読書というものを楽しみました。

最後の畳み方はどうかなとは思うけど、
一冊まるごとどのページも楽しく読めたので、
良かったです。

ジャガイモ先生には幸せになってほしいです。
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フェルディナント・フォン・シーラッハ『犯罪』おもしろい

2018-02-07 22:16:43 | 日記
タイトル通り「犯罪」をテーマにした短編集なんですが、
これ、おもしろいです。すごいです。

作者はベルリンで刑事事件弁護士として
働いていた人物。

とはいえ、こちらは実際の事件をモチーフにした
ものではありません。
「元FBI捜査官の事件簿」みたいな
血生臭さや怖いもの見たさのものではありません。

ついでに言うとミステリーという感じでもない。

じゃあ、なんなんだ、というと、
人間の物語、なんでしょうかね。

ストーリーの核は、人が罪を犯したお話しです。

でもそこには、罪があって、法があって、人がいて、
それらが絡み合って、とても複雑で不思議で
人間というものの本質的な不可解さがある物語です。

文庫化の際に序文が加えられたらしいのですが、
「私たちは、生涯薄氷の上で踊っているのです」
から始まる一説が、すごく良いです。
文学的なような、妙に真理を突いた写実感があるような。

どの短編も、人の「業」みたいなものや
一概に説明できない複雑さを捕まえていて、
不思議な読後感を味わえます。

そして、それ以上に味わい深い
秀逸なストーリーテリング。

『タナタ氏の茶盌』では、
非行少年の写実から物語が始まります。
これ、どう展開して茶盌に行くんだろう、って
思わず引き込まれます。
全編そんな感じで、本のどのページを開いても、
続きが読みたくなる巧みな構成です。

序文の上手さからもわかりますが、
文章や表現も端的で上手で、
個人的には、短編集では珍しく一気読みしました。
(大抵、波があって中断したりするんですよね)

この、人の心の襞を見つめる作者の視点、
すごいな、怖いな、と思いながら
一気読みしてしまいました。
すごいな。
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木内 昇『漂砂のうたう』明治初期の暗澹!

2018-02-01 15:50:43 | 日記
平成22年度下期の直木賞受賞作です。

舞台は根津遊郭。
時は明治10年前後、西南戦争の頃。
明治維新後の、時代の変革と混乱とよるべなさが、
すごくリアルに描かれています。
主人公は元・武家の次男坊だった定九郎。
とにかく鬱々として腐っていて、何者でもない男です。

表紙が着物を着た女の子の画だし、
ざっくり「時代物」というイメージで手に取ったので
なんとなーく江戸後期の平和な感じや、
遊郭の煌びやかさ、元武家であることを筋が通った人物像などを
心のどこかで期待してしまいました。
読んでみると、ストーリーに予想したような華がない…。

文章は整っているし、定九郎の葛藤や鬱屈、
遊郭のなかの人間模様などけっこうおもしろく読みましたけど。

よくよく考えたら松井今朝子の『銀座開化おもかげ草紙』と
同じ頃なんですね。
世情が混沌としていて、人それぞれに悩み迷う時代の物語ですね。
歴史の授業では、こんな時代の空気感までは教われないから、
こういう小説が読めるのは良いことだと思います。

しかし、定九郎はホントにダメ男であった。
頭で冷やかに考えつつ、体が動いてしまう、
みたいなことも度々あって、こんなんでよく生き残れたな、と。

主人公らしい煌めきもないのだけど、
ポン太や小野菊は、なんであんなに度々、
定九郎にヒントをあげるような構い方をしたのだろう。

まあ、でも、直木賞受賞ともなると、やっぱり面白いですね。
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