思惟石

懈怠石のパスワード忘れたので改めて開設しました。

『浮遊霊ブラジル 』高クオリティ短編集!

2022-07-29 11:34:51 | 日記
『浮遊霊ブラジル 』

津村記久子さんの津村節たっぷりの、
超高クオリティ短編集です。
ぜんぶ素晴らしい。

津村さんには珍しい、
オジサンの一人称がいくつかあります。
それも新鮮でおもしろかった。

ヘンテコ地獄がたくさん出てくる『地獄』が好きだな。
鬼も人間臭くて、夫婦喧嘩したり鼻毛を気にしたりしてて
おもしろ津村ワールド全開です。

あと『個性』がすごく良かった。
不器用な友人と、あっけらかんとしすぎな友人の
すれ違いっぷりを、ちょっと見当違いな感覚で見守る主人公。
登場人物の立ち位置が、最高に良い。

そして。
アマゾンの収録作の説明が端的で文学だった笑
そのままコピペ

【収録作】
「給水塔と亀」…定年を迎え製麺所と海のある故郷に帰った男。静謐で新しい人生が始まる。〈2013年川端康成文学賞受賞作〉
「うどん屋のジェンダー、またはコルネさん」…静けさのないうどん屋での、とある光景。
「アイトール・ベラスコの新しい妻」…ウルグアイ人サッカー選手の再婚の思わぬ波紋。
「地獄」…「物語消費しすぎ地獄」に落ちた女性小説家を待つ、世にも恐ろしい試練とは。
「運命」…どんなに落ち込んでいても外国でも、必ず道を尋ねられてしまうのはなぜ?
「個性」…もの静かな友人が突然、ドクロ侍のパーカーやトラ柄で夏期講習に現われて…
「浮遊霊ブラジル」…海外旅行を前に急逝した私。幽霊となって念願の地をめざすが。
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【読書メモ】2016年6月 ③

2022-07-27 14:02:01 | 【読書メモ】2016年
<読書メモ 2016年6月 ③>
カッコ内は、2022年現在の補足コメントです。


『桐畑家の縁談』中島京子
だいぶ前(7年前)に「エンジン」を読んでいて、
悪くはない、悪くはないんだけどなあと思っていた。
(要するにピンと来てなかった)
なので、2010年に直木賞をとったときは、失礼ながらビックリした。
そして今作、とても良かった。
電車の中で太った親子連れが「相似」と「平行」を思わせるカタチで
寝ていた、とか。
ちょっとした「つづく」的な一行が気が利いてたり。

(中島京子さんの魅力にようやく気づいた私。
 おそいよ!!!
 グーでぶん殴ってやりたいですね笑)


『ペーパー・マネー』ケン・フォレット
イギリスの小説家。
主人公が設定されておらず、様々な人物の視点を通じて
ある一日の出来事(事件)が語られている。
ギャングや詐欺師や下っ端の人物像と、
様々な階級のイギリスの生活が描かれていて、おもしろかった。
アマゾンの評価は低いな〜。
逆に、他作品の平均点が高い作家なんじゃなかろうか。

(あれ?
 ケン・フォレットじゃん。
 「アマゾンやブクログでそこそこ評価高いが、
 私は1ミリも評価しない」小説(長い)の代表作、
 『大聖堂』の作者じゃん。
 他にも読んでいたのか…。
 そして、好印象だったのか…。
 知らなかったな〜、自分のことなのに(脳みそがアレだから)。
 この『ペーパー・マネー』は、ロンドンを舞台に、
 新聞記者、金融詐欺師、ギャングの3つのストーリーが交互に描かれます。
 結構、エンタメ感多めの、初期作品らしい。
 そして笑えるくらいアマゾンや読書メーターの評価が低い笑
 私の読書センス、大丈夫か、と不安になる笑)


『悪徳の都』スティーブン・ハンター
どうも男臭くて、読むのがめんどくなってしまった。途中で放り出す。
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『たとえ天が堕ちようとも』めちゃうま!法廷ミステリ

2022-07-26 16:26:14 | 日記
『たとえ天が堕ちようとも』
アレン・エスケンス
務台夏子:訳

いわゆる法廷ミステリです。
めちゃくちゃうまいです!

プロローグ、アメリカの陪審員裁判で
弁護側が勝ちそうな雰囲気。
刑事マックスは直感的に「被告は有罪」と確信しているが敗色濃厚、
おまけに被告側弁護士は親友じゃないか。
ダブルショックで打ちのめされる描写から始まります。

ということは、逆転裁判モノじゃん!
と思っちゃいますよね〜。
でも読んでいるうちに、あれ?違うかも?じゃあ、どうなるの?となる。

めちゃめちゃおもしろいじゃないですか。

読んでるうちに、刑事マックスを差し置いて
親友である弁護士ボーディがすごく良い味を出してきます。
主人公、お前だったんかい!となる。
とある事件がきっかけに弁護士を引退していたけれど、
被告プルイット(弁護士で、元々はボーディの相棒)の依頼を断れず、
という葛藤も丁寧に描かれていて、すごく良い。

主人公はボーディだな!と。

被告のプルイットも、心情があまり描かれないけれど
挙動を見ると有罪とは思えないんだよなあ。
子どもへの接し方を見ても、これは無罪じゃないのか…と思うし、
もしかしてお前が主人公なのか?とも思う。

一方で、有能なはずの刑事マックスが
なかなかポンコツな挙動をとるので、そちらも疑わしくなるし。


読みながら、この先どうなるの?と先が読めない。
楽しいです!

これが作者の二作目らしいので、
デビュー作『償いの雪が降る』も読むしかない!となります。

マイクル・コナリーの<リンカーン弁護士>シリーズ
大岡昇平『事件』
などの法廷ミステリが好きな人には、ぜひ!
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『恋するソマリア』無政府状態の国の、おもしろ紀行

2022-07-25 17:23:31 | 日記
『恋するソマリア』
高野秀行

ソマリ人文化に恋しちゃったノンフィクションライターである作者の、
ソマリアルポ。
『謎の独立国家 ソマリランド』の続編でもあります。

「世界一危険な国」と言われているソマリアは、
アフリカ東部にある国(?)。
なにしろ20年以上、無政府状態が続いているらしい。
現在は、
北部の民主国家ソマリランド(世界的には未承認)、
中部のプントランド、
そして内戦が続く危険地帯である南部ソマリアに分かれています。

そこに住むソマリ人は、言語学的にも難易度が高いソマリ語を話し、
氏族に異常にこだわり、ツンデレ(?)性質。

で、高野氏は、せっせと日本で貯金をためて、
自費で護衛を雇わにゃ行けない国に何度も行く。
あちらの居場所を確保するために、出入りしている広告代理店にも
出資しちゃう。
ソマリ語を教えてくれた留学生の実家(めちゃくちゃ危険地帯)に
駄菓子を届けるおつかいもしちゃう。
その恋、大丈夫か?!

でも惹かれるんだろうなあ、というのが読んでいてよくわかる。
勉強になるし、ちょっとわらっちゃうし、うらやましくなる。

比較的平和なソマリランドで「お家に招かれたい!」
「家庭料理を習いたい!」というのも切実な願いだとわかるし、
危険しかない南部ソマリアで「田舎(危険地域)を見たい!」
という思いも同じく切実なのだな。

ソマリアで嗜好品として噛まれるカートという葉っぱのせいで
やばい便秘になるところは、お腹を抱えて笑えたけど
恐怖も感じました。
旅先では、お腹のご機嫌に振り回される体質なので。

ちなみにカートは覚醒植物で、噛むとご機嫌になるらしい
(噛むだけで飲み込まない)。
ソマリ人は厳格なイスラム教徒が多いので、
お酒を嗜まないかわりにカートをむしゃむしゃやるし、
カートばっかりやってると「ダメ人間」と怒られたりもするし、
二日酔いで迎えカートもあるらしい。
お酒だね。
ちょっと調べると、お酒というよりコーヒーに近い説もあるとか。
とはいえ副作用で便秘が言われているのは、
コカインやモルヒネに近いような。
麻薬の副作用で最も怖いのは便秘だ、と、高野氏の金言である。
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村上ジャズ

2022-07-22 18:15:44 | 日記
先週の話しですが、村上春樹によるジャズイベントに行ってきました。
正式なタイトルは
「村上春樹 presents 山下洋輔トリオ 再乱入ライブ」
東京FMと早稲田大学が主催。

なんで早稲田かと言うと、
村上春樹ライブラリー設立記念イベントの一環だからですね。

そして一定以上の年齢の方はタイトルでピンと来るのですが、
「山下洋輔乱入ライブ」というのは
1969年、学生運動真っ只中、バリケート封鎖絶賛実施中の
早稲田大学4号舘でゲリラ的に行われた
山下洋輔トリオの伝説的ジャズライブのことです。

(と知った風に書きましたが、私はその世代ではない)

ちなみに4号舘跡地に現在建っているのが、
村上春樹ライブラリーです。
こぢんまりとしてオシャレな建物だったな。

生演奏を聴くのも、なんらかのイベントにおでかけするのも、
本当に久しぶりで。
いや〜、良かった。楽しかったです。

山下洋輔トリオのオリジナルメンバーで、
みなさん80歳とかですよ。
音もキレッキレだし、元気だったな〜。
肘ピアノを見れたのには感動しました。

トークショーもたっぷり、サービス満点でした。
まず都築響一(東京するめクラブ!)が登壇。
なぜか八代亜紀の銀座時代の話しをしていた笑
続いて菊地成孔が登壇。
さらに山下洋輔氏のトークタイムも。
御大自らが69年のゲリラライブについて語ると、
客席から仕掛け人の田原総一朗も登場。
リッチ!

大隈講堂のグランドピアノを旧4号館まで担いだのも
伝説となっているのですが、
「あの時、オレもピアノ担いでいた」という人が
意外と多い説。
超おもしろい。
なんだそれ。

中上健次は実際にいたみたい。
立松和平は居合わせられなかったのが悔しくて
短編を書いたらしい。
伊集院静もいたと自称してたとかしてないとか、いなかったとか。
おもしろい話しでした笑

山下洋輔トリオの演奏2曲目は「木喰(もくじき)」。
山尾三省の長編詩『木喰上人』をモチーフに
中村誠一が即興でつくったという曲なのだそうです。
(山下家のリビングで、本当に即興で吹いたとか)
最後、客席にいた山極寿一(やまぎわじゅいち)教授が登場して、
山尾三省についてちょっと語るというオマケつき。
山極教授は、ゴリラ学の権威にして元・京大総長。

情報量が多すぎてお腹壊しそうである。

気持ち的に、満腹な夜でした。
万年ひきこもりの私ですが、
勇気を出してチケット買って良かった〜


ちなみに、ちょっと高めのチケットを買うと
村上さんのサイン本がもらえるのだ。
私は翻訳書の『恋しくて』だった。
まだ読んでないやつだ。らっきー!!
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