思惟石

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【読書メモ】2016年7月 ④カズオ・イシグロその2

2022-08-31 17:05:27 | 【読書メモ】2016年
<読書メモ 2016年7月 ④>
カッコ内は、2022年現在の補足コメントです。


『遠い山なみの光』カズオ・イシグロ
小野寺健:訳。
この作品がデビュー作だそうです。
日本語の会話が絶妙なのだけれど、
原文の英語はどんな感じなのだったのだろう。
もちろん、英文がすばらしいからこそ
イギリスで最初に評価されたのだろうけど、
日本語訳も良いと思う。
作者よりもひと世代上の訳者らしい。
とはいえ、原作とはストーリー転換が異なるという書評もあった。
ちょっと気になるな。
足にからまっていた縄におびえる万里子と、
それを淡々と眺めていた悦子、の部分は
なんだか茫漠としていてよくわからなくて、怖い。
もう少し深読みもできるシーンなのかもしれない。
一拍おいて、再読したい。

(イギリスに住んでいる悦子が、
 故郷である戦後長崎の少女時代を回想するお話し。
 ぽつり、ぽつりと、断片的なシーンが積み重なる。
 なんだか不思議なお話しだ。
 そろそろ再読せにゃ)
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『砂糖の世界史』岩波ジュニア新書は素晴らしい

2022-08-30 10:15:42 | 日記
『砂糖の世界史』川北稔

近代世界史の流れを
「世界商品」である砂糖を中心に、わかりやすく語る。
超絶良書!!

岩波ジュニア新書がすばらしいのか、
作者がすばらしいのか、その両方なのか。

コロンブスに始まる大航海時代に、
探検船が様々な「苗」を輸送していたとは、知らなかった。
各地で植民地植物園をつくったり。
確かに、植民地で何を栽培するか、というのは
各国の輸出入での大きなポイントだよな。

そんなヨーロパ人の手(船)で、
サトウキビはカナリア諸島から西インド諸島(カリブ海)へ。
じゃがいも・トマト・とうもろこし・タバコは
アメリカからヨーロッパ。
キャッサバはブラジルからアフリカ・コンゴ。
苗が世界を駆け巡っている。

そして、何よりも
「砂糖のあるところに奴隷あり」(エリック・ウィリアムズ)
という言葉が、この本の骨子でもある。

植民地をプランテーション化して生活必需品すら輸入する
「モノカルチャー」という概念も知らなかった。
不勉強である。反省&学習。

モノカルチャーの事例としては、
アメリカ南部の綿花、南アメリカのコーヒー豆、
セイロン(スリランカ)の茶葉、等。

言われてみれば、お茶の木も、どこでも栽培できる植物では
ないのでした。忘れてた。
イギリスではお茶も砂糖キビも育たないんだよね。

イギリスで紅茶が劇的に流行った際、
まだまだ庶民には手に入りにくい状況下で
「イギリス産の紅茶(お買い得だよ〜)」
という謎商品が出回ったのは、なかなかである。
令和では
「これ、仮想通過の実物なんですよ〜」
と言ってコインを売りつける詐欺があるらしいんですが、
それと似た味わい深さがあるな…。

以下、おもしろティップス

トマス・アクィナス『神学大全』で砂糖は薬と書かれているので、
17世期ヨーロッパでコーヒーやタバコ、チョコレートが
宗教的「堕落」と言われても砂糖はOK!だった。

ボイコットはアイルランドのイギリス人地主ボイコット大佐
(小作人に排斥される)のエポニム。

夏目漱石がイギリスのポリッジ(まずい)のことを
ジョンソン博士の『英語辞典』(ポリッジの項に
「イングランドでは馬が食べ、スコットランドでは人が食べる」と
書いてある)を引き合いに出して
「イギリス人がすべて馬になったらしい」と手紙に書いたとか。

細部も含めて、ぜんぶおもしろい良書!
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『プロジェクト・ヘイル・メアリー』ほげあ〜〜〜〜!!!

2022-08-29 16:43:52 | 日記
『プロジェクト・ヘイル・メアリー』
アンディ・ウィアー
小野田和子:訳

ほげあ〜〜〜〜〜〜!!!!

読了してしまった!!!
二日で!!!!
もったいない〜〜〜〜!!!!


もはや絶叫しか出ないレベルの超良作SF。

また、しばらくは次作を待つ時間か…。

なにはともあれ、
1ページ目から最終ページまで、
どこを読んでもおもしろい。
(順番に読んでください)
全ページフルスロットルで夢中に読んでしまう。
ほげあ〜。

ああ〜
やっぱりもうちょっと取っておけば良かったかな。
いや、でも、おもしろかった!
仕事も落ち着いていたので気兼ねなく一気読みできたし。
ああ、でももったいなかったかな。
ほげあ。
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【読書メモ】2016年7月 ③あわさかつまお

2022-08-26 15:43:50 | 【読書メモ】2016年
<読書メモ 2016年7月 ③>
カッコ内は、2022年現在の補足コメントです。


『11枚のとらんぷ』泡坂妻夫
変わった名前だなあと思って、
「ほうさか」かしらと思ってたんですが、
そのまま「あわさかつまお」とな。
本名のアナグラムなんだそうだ。
奇術クラブに所属して、そちらでの受賞歴もあるらしい。
最初の長編小説とのことだけど、趣味も兼ねてか、
奇術にまつわる描写が多いなあと感じた。
あまり興味のない私としては、満腹です、と。
でもラストは良かった。
桂子がプロポーズを待ったするの、良い。

(奇術の途中で姿を消した女性が自宅で変死、
 その周辺には手がかりなのか何なのか
 思わせぶりに小道具が散乱しており…という
 奇術モチーフの殺人事件。
 第一部が事件篇、
 第二部が事件のモチーフになる作中作、
 第三部が解決篇、という感じで構成も凝ってます。
 こちらはノンシリーズでしたが、
 <亜愛一郎>シリーズは結構、好きです。
 代表作と言われる『乱れからくり』はまだ未読なので
 そろそろ読もうかな)
 
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『クロコダイル路地Ⅰ』フランス革命の生々しさが

2022-08-25 11:15:17 | 日記
『クロコダイル路地Ⅰ』
皆川博子

前半はフランス編。
フランス革命真っ只中の港湾都市ナントが舞台です。

「Ⅰ」とあるので、そこそこの長編シリーズなのかなと思ったけれど、
上下巻構成らしいです。

革命前夜の不穏な国情、革命派と半革命派の戦い、
共和制支配の息苦しさ。
なんとも生々しい、個人レベルで感じる「革命」が
様々な立場の登場人物視点で描かれています。
ブルジョワジーの視点、貧しい平民の視点、
どちらも細やかでわかりやすいし、ハラハラする。

一応、主人公は豪商の息子で、現状、最も魅力に欠ける
ブルジョワジー少年ロレンスです。
弱音と妄想ばっか吐いてんじゃねえ!
後半がんばれよ!

他に、貧しい出身の少年ジャン=マリ(応援したい)
貴族の従者ピエール(フランソワが生きてると良いね)、
そして後半、第四の視点となる、現状、嫌われ度ナンバーワンの
少女コレット。

御大の筆が冴え渡って、良い感じである。
不穏な時代の物語ですが、読んでいて気持ちが暗くなるわけではない。

あと、歴史の勉強をちょっとしたので、
ルイ16世がヴェルサイユからパリ市内に連行された
「ヴェルサイユ行進」は女性たちが中心だったという描写も
「勉強したところが出た〜!(コテンラジオで)」となって
嬉しかったです。
学生時代もこれくらい勉強しておれば(以下略)。

後半はイギリス篇だそうです。
がんばれロレンス(期待はしてない)。
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