思惟石

懈怠石のパスワード忘れたので改めて開設しました。

北森 鴻『凶笑面 -蓮丈那智フィールドファイル1-』

2018-06-29 15:25:23 | 日記
民俗学ミステリと言われているシリーズの第一作です。

「それってジャンルとしてあるの?」
という気がしないでもないですが、
多分、このシリーズのためのジャンル名なのでしょう。

“異端の民俗学者”蓮丈那智と、研究室助手の内藤くんが
フィールドワークに行くと、
もれなく殺人事件に巻き込まれる、
という構成の短編シリーズです。

こちらに収録されているのは、
『鬼封会(きふうえ)』
『凶笑面(きょうしょうめん)』
『不帰屋(かえらずのや)』
『双死神(そうししん)』
『邪宗仏(じゃしゅうぶつ)』
の、全5編です。

どれも面白かったですが、表題作と『不帰屋』が良かったかな。

方々で言われていますが、民俗学の知識がおもしろいですね。
そこの考察や解釈などに、現代の「殺人」事件へのブリッジが
しっかりあって、構成が凄い。
作者が「量産できない」と言うのも頷けます。

北森鴻作品はこれが初めてなのですが、
別作品とのリンクもあるらしいですね。
他シリーズも読んでみよう。

まだ一冊しか読んでいないけど、故人であることが惜しいです。
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【読書メモ】2009年3月

2018-06-28 10:16:36 | 【読書メモ】2009年
<2009年3月>
カッコ内は、2018年現在の補足コメントです。


『有頂天家族』森見 登美彦
超いい!!!たぬき!毛玉!ふはふは!!

(この本に出会えた当時の私が羨ましいです。というくらい好き。
 良かったね!おめでとう私!ふはふは!)


『魔術はささやく』宮部みゆき
(メモなし。
 途中まで読んで、すでに読んだことのある作品だと気づく。
 宮部みゆき作品は学生の頃にまとめて読んだので、
 こういうポカミスをよくやります……)


『幻色江戸ごよみ』宮部みゆき
江戸時代モノだし、ふつうにアヤカシが出てくるかと思ったら、
意外と人間モノでした。

(短編集。江戸時代らしい怪異譚でもあるのですが、
 そういう超常的な話しよりも、人の心の機微や複雑さがメイン。
 人情モノではなく、人間モノ)


『ねじの回転』恩田陸
二・二六事件をモチーフにしてる話。
宮部みゆきも書いてたなあ。(『蒲生邸事件』)
歴史を修復するという仕組みが難しくてわかりにくかったけど、
独創的でおもしろいと思った。

(余談ですけど、日本史って明治維新以降
 授業内容が極端に薄くなりませんか?
 というか私はがちがちの理系進学志望だったので
 日本史は江戸時代になった辺りで授業が終わったような気が……
 個人的にさぼっていただけかもしれませんが)


『新・水滸伝』吉川英治
まだ一巻。→5月に4巻まで読了。
とはいえ、未完なので読み終わった感じがしない。

(北方謙三の『水滸伝』に触発されて読んだのでした。
 吉川英治版はテンポが良くて好みだったのですが、
 連載中にお亡くなりになり、第四巻で絶筆なのです。残念……)


『おとぎ話の忘れ物』小川洋子
画家・樋上公実子のイラストをモチーフに書かれた短編集。


『覆面作家の愛の歌』北村薫
(メモなし。
 ミステリの覆面作家をしているお嬢様が主人公のシリーズ二作目。
 このシリーズはですね。何が凄いって、イラストが高野文子さんなのです!
 円紫さんシリーズと違って、表紙だけじゃない!収録イラストがッ!!!
 あの寡作の!制作時間が異様に長い!高野さんが!!!
 出版日も決まっている小説のイラストなぞを描くなんて!!!
 という、まったく本編に関係ない感動と衝撃を受けたシリーズなのです。
 内容は、誠に北村薫らしく純真無垢なお嬢様が日常の謎を解く短編集です。
 安定感のある面白さですが、やはり見どころは高野さん以下略!
 ちなみにシリーズ第一作は『覆面作家は二人いる』です)


『蟹工船』小林多喜二
(メモなし。
 2008年に謎のブームが起きましたね。
 内容はほとんど記憶に残ってないのですが、
 甲板で寒風に煽られながらの鼻水の描写が、
 花粉症の身にグッときました。鼻の下が荒れると痛いよねって)
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『〆切本』作家って大変ですね……

2018-06-27 15:15:03 | 日記
90人もの作家による
〆切についてのアンソロジーです。

まあ、〆切や納期のない仕事なんて存在しませんし、
終わりのない仕事ほど恐ろしいものは無いですが。

夏目漱石、江戸川乱歩、谷崎潤一郎、星新一、村上春樹……
様々な作家の、それぞれの〆切話し。
面白くないわけがありません。

お約束通りの「書けぬ」「明日こそ書く」的な苦悶から
風邪ひいただの〆切延ばせだのカレー食べちゃっただの
言い訳なのか謝罪なのか居直りなのかって感じの
独特且つ味わい深いお話しがてんこ盛りです。

読後感としては、
「編集者ってすごいな……!」
ですね。
作家ではなく。

ちなみに
作家名のラインナップで勘の良い人は気づくかもしれませんが、
村上春樹や吉村昭のような「〆切を破ったことがない」作家さんのお話しも
きちんと収録されています。
って、レアケースみたいな扱いですが
仕事として当然のはずなんですが……。
散々「拝啓、〆切に間に合いません」とかの作家の言い訳を読みまくった後、
彼らの、なんとなくマイノリティ側にいますけどねって感じのエッセーは
とても味わい深く、逆説的な感じがして面白いです。

もうね、この本は企画も素晴らしいですが、
編集も素晴らしいのです。
(つくってて楽しかっただろうな〜)
最初は好きな作家のものだけをつまみ食いで読んだのですが、
改めて構成順に読んだら、そちらの方が断然楽しめました。
やっぱり編集の力ってすごい。

余談ですが、私は、
ドラえもんの「もしもボックス」があったら、
大作家の仕事場の隣の部屋で正座しながら凄い圧をかける
編集さんをやってみたいです。
「先生!寝てませんよねっ!」
「先生!何枚書けましたかっ?!」
「先生!あ!!逃げた!!!!」
って一晩中騒いでる感じのやつ。
イメージが相当に古いけど。
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ディミトリ・フェルフルスト『残念な日々』下品なのにノスタルジック

2018-06-26 12:19:13 | 日記
ベルギーの作家による自伝的短編集です。

フランダース地方・オランダ語圏の貧しい村に住む
貧しくも愉快な家庭で暮らした少年時代の思い出話しです。

まず、フランダース地方と言われても
ハウス名作劇場ぽい牧歌的なものは何一つありません。
主人公の家は、巷で有名な飲んだくれ一家フルフェルスト家。
良い歳して実家暮らしの飲んだくれ叔父3人と、
妻に逃げられ出戻った飲んだくれ実父、
10代の半ばから夫と息子の世話に追われ続けた祖母と、
12歳の僕の「残念な日々」。

残念なのはさておき、飲みすぎですよ……!!

ついでに、清々しいくらい汚物まみれで下品です。

それでも愛しい思い出の数々として、
前半は様々なエピソードが語られます。

個人的には主人公に歳の近い叔父が
「大酒のみコンテスト」をツール・ド・フランスに見立てて
生き生きと飲んだくれた挙句に昏睡するお話しが好きです。
(その前段で、やっぱり飲んだくれた兄叔父が
 カーラジオから流れるロイ・オービソンを聴きながら
 強盗のクルマに突っ込んで昏睡するとこも好き)

回想録ですので、もちろん現在があります。
現在の「僕」は、文筆家としてそこそこ成功していて
村からも一家からも離れています。
その、今も相変わらずの叔父たちとのぎこちない会話や
かつて暮らした場へのうしろめたさみたいなものが
後半になるにつれて表面化してきて、
なんだか色々考えさせられます。

自分は今でも故郷を愛しているというスタンスを表明しつつ、
まったく望まずに生まれたと言ってはばからない5歳の息子に
叔父がアルコールを与えようとすると断固否定したり。
(自分は5歳くらいから喜んで飲んでいたし、
そういった環境で育ったことを誇らしく思うと言っているのに!)

私はこの本を読んで、貧乏で愉快だった「あの頃」への
ノスタルジックな愛しさだけでない、
過去への愛憎みたいなものが感じられました。
全肯定も全否定もできないジレンマというか。

味わい深い小説だと思います。

とはいえ、前半の飲んだくれっぷりが強烈だけどね!
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【読書メモ】2009年1月~2月

2018-06-25 09:59:24 | 【読書メモ】2009年
<2009年1月~2月>
『北方謙三 水滸伝』(全17巻)キャンペーンは年末年始で無事終了。
カッコ内は、2018年現在の補足コメントです。

『ドミノ』恩田陸
(メモなし。
 まったく記憶に残っていないのだけど、、、
 大量の登場人物がそれぞれの章ごとにメインとなり、
 ドミノのように絡み合い、最後にはクライマックスもある
 ドタバタコメディ、だそうです。
 これ、恩田陸の作品のあらすじですか……?伊坂幸太郎じゃないの?
 めちゃくちゃ気になるので、読み返したい)


『漱石、ジャムを舐める』河内一郎
『文人悪食』嵐山光三郎
(メモなし。
 仕事の関係で、作家にまつわる「食」の話しを調べてました。
 前者は、漱石研究者による「漱石と食」のお話し。
 当時の食文化年表や物価なども収録されています。
 後者は、有名編集者でもある作家による37人もの文士の食の物語。
 こちらはめちゃくちゃ面白いです。文士とのエピソードも豊富だし
 それぞれ破天荒な食ゴシップがあったりしますが、
 それがなんとも愛しく書かれています。ホントおもしろい)


『チョコレートコスモス』恩田陸
恩田的世界を期待していたら、演劇の話でした。
これはこれでおもしろかったけど、
作者は演劇に精通しているそうで、読み応えがあったけど、
予想と違ってたので、最後まで「え、このまま終わり?」という感じです。

(当時の私、「恩田的世界」という言葉に何を期待していたんでしょうね。
 なぜか読んでしまう文章と、スッキリしない読後感という意味では、
 安定の「恩田的世界」だと思います。
 そろそろ『蜂蜜と遠雷』も読まねば)


『小春日和』金井 美恵子
一文が長いのなんの。
久しぶりに読み返したけど、おもしろかった。

『彼女(たち)について私が知っている二、三の事柄』金井 美恵子
小春日和の10年前の設定。
初期の作品なので一文がそんなに長くなくて読みやすい。

『文章教室』金井 美恵子
これは読了できず。イマイチ。

(学生の頃、目白の近くに住んでいたことがあり
 金井美恵子の目白4部作を読んだのでした。
 久しぶりに読み返そうと思ったのでしょうが、
 一気に3冊も読まなくても良い気が……)
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