思惟石

懈怠石のパスワード忘れたので改めて開設しました。

北村薫『鷺と雪』

2020-09-30 11:31:50 | 日記
<ベッキーさん>シリーズの最終巻です。
「え?読んだの、今さら?」の3冊目!
2009年に『街の灯』『玻璃の天』を続けて読んだのに、
その後10年以上、謎の間が空きましたが笑
足掛け11年でシリーズ読了!

そして『鷺と雪』といえば
「え?直木賞、今さら?」の第141回直木賞(2009)受賞作。
もはや審査員側の作家ではなかろうか笑!!!と。

シリーズの舞台は昭和初期の上流階級。
昭和7年の五・一五事件から始まり、
昭和11年の二・二六事件で終わりました。

そういった大きな歴史的事件はさておき。
当時のリアル&小さな事件・風物がわんさか盛り込まれていて、
さすがビブリオマニアの北村薫…っ!!という作品でもあります。

三越のライオンに誰にも見られずまたがると
念願が叶うという受験生向け流説。
(今も密かに語り継がれている合格ジンクスらしい)

昭和10年に東京の夜空に聞こえたブッポウソウの声
(正体はコノハズクだけど)。

芥川龍之介『鵠沼雑記』の腹巻の憂鬱なストーリーと、
その裏側にあるとぼけた事実。

細川家能楽堂にて、直面(ひためん、素顔)で演じるのが通例の
『鷺』を、何を思ったか面をつけて演じた梅若万三郎。

そして、二・二六事件当時の首相官邸にかかってきた
間違い電話のエピソード。

「服部時計店の番号と似ていたらしく、ハットリですか、
という間違いの電話がずいぶんかかってきた」
(石川元上等兵談)

この間違い電話のエピソードは『昭和史発掘』の中の一節で、
北村薫がこのシリーズを構想したきっかけだそうです。

小さな史実(というほどでもない、小さな事実)たちと
物語の絡み合いが、さすがです!

余談ですが、
気になっていた二・二六事件周辺が舞台の小説
だいたい読了しました。
歴史のお勉強という観点では、『蒲生邸事件』が一番詳しかったかと思います。
どれもこれも分厚い(ベッキーさんは分冊だけど刊行順に読んだ方が良い)ので、
受験生時代に戻っても読む暇なかったと思うけど。
まあ、いくつになって読んでも良いものですから!!
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東山彰良『流』70年代台湾の青春!新鮮!

2020-09-24 09:50:02 | 日記
台北生まれの主人公が語る、青春期と一族の物語。

物語の土台に存在するのは、
大陸で国民党として戦い、一族を連れて台湾に渡った
祖父の存在。
だいぶエッジーなおじいちゃんです。

おじいちゃん世代の、
国民党対共産党、身内を殺され、殺し返す、
なんともいいようのない歴史的背景がありまして。

さらに、移り住んだ台湾では、
本省人(日本統治下を経験していて、抗日派もいれば親日派もいる)と
外省人(主人公含む、大陸で抗日戦争を経た後、共産軍に追われて台湾に渡った人々)
との複雑な関係性もありまして。

ついでに時代は、大陸との行き来が禁じられている「戒厳令下」である。

それでも10代はケンカしてヤンチャして恋をする。
元気があって良し!
70年代の台湾で暮らす主人公がアメ車に乗って
ビートルズ聴いてディスコでデートするの、
そういう時代だよなあと思いつつ、意外というか新鮮というか。
私が台湾のことを何も知らないってことなんですが
ある種の目ウロコでとっても面白かったです!!

なかなかシリアスな時代背景と、
タフで危うい10代の日々と、
濃ゆい「家族」「兄弟分」などの人間関係が描かれていますが、
文章が軽快で、すごく読みやすいのも良い。

内容が「軽い」わけじゃないけど、
飽きさせないというか、カラフルというか、
良い意味で雑多感がある笑

冒頭で祖父が殺されて、ちょっとミステリっぽいのか?と思いきや、
幽霊が出て、ゴキブリも出て、お狐様も出る。
色々出るなあ笑
大学行くかと思えばヤクザにカチコミ行ったり兵役に行ったり
いろんな出来事がワヤワヤしているけれど、
その騒がしい感じが、良い。
すごく良い!!!

主人公の語りも良いし、図太い性格も良い。
というか文章が良い(作者はガルシア・マルケスが好きだそうで、
納得である)。

私、10年前くらいに台湾旅行して、
小籠包と魯肉飯をたらふく食べて
故宮博物院で角煮と白菜のヒスイに感動したんですが。
台湾の歴史や微妙な政治的立場、ぜんぜん知らなかったなあ、と。
反省と勉強もできます。
また行きたいな!台湾(屋台の肉まんもおいしかった)!

台湾旅行も良いんですが、それはさておき、
要するに『流』は良い。すごく良い。
第153回直木賞受賞(2015)。
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【読書メモ】2013年12月 ②

2020-09-18 10:07:39 | 【読書メモ】2013年
<読書メモ 2013年12月 ②>


『空飛ぶタイヤ』池井戸潤
まったく期待してなかったけど、すごく面白かった!
作者に申し訳ない!
銀行内部の人間関係やパワーバランスが超面白い。
ホープ自動車内部よりも描写がリアル!と思ったら、
作者、やはり銀行には勤務経験有とのこと。
勧善懲悪までの引っ張り方がうますぎて、
早く最後まで読まなくちゃ!と久しぶりに焦らされた本。
半沢直樹も読もう。


『絶叫城殺人事件』有栖川有栖



(以下、ネタバレの感想ですよ!)



絶叫城はどんな城かなーと思ったらゲームのタイトルでした。
というのはうまいと思う。
が、空き瓶投げたら自殺者に当たったよ、というのは
トリックでもなんでもないぞ。
と思ったら実際にそういう事故もあったらしいね!
だからと言って、やはりトリックではないな!


『猫は忘れない』東直己(あずまなおみ)
ススキノ探偵シリーズの12作目とのこと。
ホントは第一作から読みたかったが、
人気があるみたいで図書館ではお目にかかれない。
主人公の「俺」は50代のおっさん。
ハードボイルドっぽいけど、そんなにアクションに強くないし、
なんとなく事件に流されているし、特に推理を見せるわけでもない。
でも読みやすくておもしろい。
ただ、酒を飲み過ぎ。禁酒中なので胃にもたれる。


『旅うなぎ』和田はつ子
料理人季蔵捕物控の第5弾とのこと。
今までの流れを知らないが、「隠れ者」という裏の顔の割に
何もしないで事件が勝手に解決するなあ…という印象。
最後の黒幕の成敗のしかたも、もうちょっといい方法あるだろ。
気を失わせて濡れ布巾って、みみっちいな。


『影踏み』横山秀夫
ノビ師の主人公の頭の中には
無理心中で焼け死んだ双子の弟が棲みついていて…
という設定が横山作品ぽくなくて、まず予想外。
ついでに、短編集ってことも予想外。
思ってたんと違う、という感想。
いや、面白く読みましたけど。


『人格転移の殺人』西澤保彦
人格転移装置というトンデモ設定が大前提のミステリ。
という変わり種。
面白かった。
好感を持てる人物がひとりもいなかったが、
ほぼ全滅ものということで成る程。
当たり外れのある作家ぽいけど、
出世作と言われている「七回死んだ男」は読んでおこうと思う。
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中西智明『消失!』珍味ですな

2020-09-16 13:25:57 | 日記
こってり濃厚系読書からの
清涼系読書だったので、
珍味に手を出した笑

新本格ミステリブームの90年代、
大学在学中に書いた一冊だけを出版したという変わり種
中西智明『消失!』。

いくつかトリックというか仕掛けというか、
ひっくり返しというか、が仕込まれています。

そういう意味で、ラストは面白く読みました。
なるほど〜。と。
細かい伏線もあったね!と。
途中でぶん投げなくて良かった〜!!と。

が。
ひとつ目のトリックというか仕掛けというか、が
わかりやすすぎるんですよね。
困ったことに。
裕子さんは可哀想だと思うけど、
ちょっと、そのネタが序盤でわかりやすすぎるかなと。
そうなると、中盤を白けた気持ちで読まなくちゃなわけで。
何度かぶん投げようかと思った笑

衝撃(?)のラストのために
努力して中盤を読むという意味で
『イニシエーション・ラブ』を思い出しました。

まあ、珍味なんでいいんじゃないでしょうか。
『イニシエーション・ラブ』よりは美味しく頂けたし。
お酒のお供に良かったです。



でもまあ、以下でネタバレの感想を叫びたい。









犬はあんなに広範囲&定期的にうろちょろしない!
あと、誰かが、保護なり首輪なり、するよ!!!しなよ!!!
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【読書メモ】2013年12月 ①

2020-09-15 11:36:09 | 【読書メモ】2013年
<読書メモ 2013年12月 ①>



『ダリの繭』有栖川有栖
探偵と助手が相変わらず仲良いなあ、という感想。


『異邦の騎士』島田荘司



(以下、ネタバレの感想ですよ!)



石岡くんと御手洗の出会いの話。
こんなに簡単に人の記憶ってコントロールできるかなあ
という根本的な疑問は残るが、
壮大な仕掛けはおもしろかった。


『あんじゅう』宮部みゆき
変わり百物語の続編。
前作のような人の心の闇が魔物を生む、
という話ではなく、
ふつーにあやかし出てんじゃん!
というツッコミを入れたい。


『鎌倉河岸捕物控 道場破り』佐伯泰英
飽きてきた。


『おまえさん』宮部みゆき
ぼんくら、日暮らしの続編というか、同シリーズ。
美男美女が出すぎだなあ。
容姿至上主義なのかと勘繰ってしまうほど描写がしつこい。
慎之助や淳三郎など味のあるキャラクターも続々と出てきたので、
このシリーズさらに続くのかなという印象もある。
人と人との関わりが面白く読めた。


『シリウスの道』藤原伊織
マーケの白石部長は、たぶん、白土さんじゃないかな。


『ロマンス小説の七日間』三浦しをん
三浦しをんの書く恋愛モノって、
なんとなく読みにくい…。
でも初期作品の軽いトーンは嫌いじゃない。


『とにかくうちに帰ります』津村記久子
OLが主人公の「職場の作法」と、
豪雨の日に歩いて帰る「とにかくうちに帰ります」。
「職場の作法」のシリーズがすごく良い。
ペリカーノジュニアがいつの間にか紛失してるとか、
誰も注目しないスポーツ選手について滔々と語るとか、
ネタの細かさが絶妙に良い。
浄之内さんおもしろい。
「帰ります」の方は、バツイチサラリーマンと少年のコンビは
いらなかったのではなかろうか。
OLとオニキリくんとコンビニでいいと思う。
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