思惟石

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『皇帝フリードリッヒ二世の生涯』塩野七生

2022-02-25 13:44:41 | 日記
『皇帝フリードリッヒ二世の生涯』塩野七生

ルネッサンスが始まる前、中世後期のキリスト教圏生まれ。
なのに、めちゃくちゃ開明的だったという
皇帝フリードリッヒ二世の物語。

かわいそうなくらい時代に合わなかった天才である。
かわいそう…。
あと法王は絶対に許さない。ぶっとばす。

文庫版で上下巻のボリュームなのですが、
ちょっと時代が早すぎたね…というエピソードだらけで、
なんというか、ずーっと歯痒い気持ちになります笑

そして法王は絶許。
インノケンティウスには生卵を投げてやりたいと思います!

あとフランス王も、好きになれないんだよなあ。どいつもこいつも。
高校時代にベルバラを読んで
「海外旅行に行くならフランス!パリ!」
と夢見ていた自分に耳打ちしたいです。
「フランス王はどいつもこいつもだぜ!!」と。

こちらの、13世紀初頭に活躍したフリードリヒ二世は、
神聖ローマ皇帝(ドイツ周辺、父系領土)であり、
シチリア王国国王(南イタリア、母系領土)を兼任した人物です。
要するに、ローマ法王の領土(中部イタリア)を
サンドイッチしてるんですね。
だから法王に目の敵にされたとも言える。

そして世界史的に「フリードリッヒ2世」と言うと
18世期のプロイセン王の方が、実は有名です。
こちらは、DV気味の父親に親友を目の前で惨殺されつつ
マリア・テレジアにめっちゃ嫌われつつ
フルート吹きつつ頑張った人です。

最終的に塩野先生のフリードリッヒ二世(神聖ローマ皇帝)は
本人が先進的且つ巨大すぎて、子孫が生き残れなかったんですよね。
(法王絶許!)
一方で、プロイセンのフリードリッヒ2世は、
プロイセンの強国化に成功して
一族での王位継承もスムーズに移行してるわけです。

個人的にはどちらも偉人だと思うけれど、
「国(もしくは一族)を継続させた」ってことが
後世に「フリードリッヒ大王といえば」としての差になるんだなあ、と。



で、1250年にフリードリッヒ二世が没した後に、
神聖ローマ皇帝の大空位時代を経て、
ハプスブルク家がライジングとなるわけですね。
歴史って勉強したピースが繋がると楽しい。
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『コルシア書店の仲間たち』須賀敦子

2022-02-24 16:44:24 | 日記
『コルシア書店の仲間たち』須賀敦子

イタリア文学者である作者がミラノに住んだ
30歳からの10年あまりの間のエッセイ。
コルシア・デイ・セルヴィ書店を中心に知り合った
人々にまつわる回想記です。

コルシア書店は、思想を持った書店というか。
1960年代ミラノでの「カトリック左派」とか
「学生が集まって気炎を吐いている様」とか、
戦後の思想活動的な背景があるようなのだけれど、
作者はそういう政治的なことはあまり表明しないんですね。

なので、読んでいる私たちも、
作者の友人知人たちとの交流を、作者の眼を通して眺めている感じ。

いろいろあるかもしれないけど、ステキな人だね!みたいな。

ちなみに塩野七生『皇帝フリードリッヒ2世の生涯』を併読しているので、
「ロンバルディア気質」「ミラノ人あるある」
「ミラノの壁の内側外側の違い(神戸は山側が金持ちエリア、みたいな)」
の方が「最近、それ読んだ!」というおもしろさが感じられました。

個人的には、
ドイツの若者と結婚したイタリア人の女の子のエピソードが
印象的でした。
彼女の母はシチリア人でローマ育ちなのだけど。
一方で、父はハンガリー系ユダヤ人。
父の両親は強制収容所で亡くなっていたことを
娘さんは高校生まで知らなかったという。

戦後が文字通り「戦争の直後」で
今を生きている人の人生につながっている話だと思って
強く心に残りました。

ちなみにカトリック左派はアッシジのフランチェスコまで
さかのぼる思想らしいです。
それもフリードリッヒに出てたね!読んだよ!!
(よくわかってはいない)
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『名画で読み解く ハプスブルク家12の物語』中野京子

2022-02-22 10:38:27 | 日記
まず最初に講談社現代新書の
『ハプスブルク帝国』岩崎周一
を読むわけです。

あ〜〜〜新書って苦手!!!!

と思いながら、がんばって読む。

ハプスブルク家の歴史が、
スペインやオーストリア、ハンガリー、チェコ周辺の
歴史とともに描かれています。
18世期の「啓蒙主義」なんぞは、
そういう本ではないので大した説明無しで突然ぶっこまれます。
急に流行った!!なにそれ!!??ヨーゼフ!!
(コテンラジオのおかげでちょっとだけわかった)

情緒も解説も無く、ファクト(というか聴き慣れない固有名詞)が
続くので、めちゃくちゃに読みづらい。
まあ、それが新書というものですが。

つらい。
つらいけど、読了します。

で、満を辞して
『名画で読み解く ハプスブルク家12の物語』中野京子
を読むわけです。

はわあ〜〜〜〜〜〜おもしろいっ!!!!!

やっぱり中野さんの文章は読みやすいしおもしろい〜
と、有り難く読むわけです。

とはいえ、それぞれのエピソードは、ハプスブルク家の点描なのです。
それだけで楽しんでいても良いのだけれど。
やはり、背後に流れる「歴史の線」みたいなものは、
文句を言いながらも新書で読んだからこそ感じられるもので。
併読すると本当に勉強になります。
点と線!

スペイン王フェリペ2世も、アルチンボルドでおなじみ皇帝ルドルフ2世も、
それぞれ知っていたけれど
どちらもハプスブルク家だったのかあ、と
改めて学びました。

(フェリペ2世は、コテンラジオでの語られ方と比べるのも、
おもしろかった(エリザベス1世の回))

(レオ・ペルッツ『夜毎に石の橋の下で』の舞台は1589年秋のプラハ。
ルドルフ2世の治世下ですね)

マリア・テレジアの宿敵フリードリヒ2世(大王)も印象的だった。
プロイセンの2代目。
父親が過激で、目の前で親友を殺されるというエピソード、
高校の世界史で聞いたのを覚えてるなあ…。

収録絵画は以下。

デューラー『マクシミリアン一世』
プラディーリャ『狂女フアナ』
ティツィアーノ『カール五世騎馬像』
ティツィアーノ『軍服姿のフェリペ皇太子』
エル・グレコ『オルガス伯の埋葬』
ベラスケス『ラス・メニーナス』
アルチンボルド『ウェルトゥムヌスとしてのルドルフ二世』
メンツェル『フリードリヒ大王のフルート・コンサート』
ヴィジェ=ルブラン『マリー・アントワネットと子どもたち』
ローレンス『ローマ王(ライヒシュタット公)』
ヴィンターハルター『エリザベート皇后』
マネ『マクシミリアンの処刑』

新書も、つらいつらいと文句ばっかりだったものの、
意外と数日で読了はできたんですよね。
他の小説や本を読む際に、歴史の流れの中での事象や人物として
俯瞰できるようになるのは、やはりありがたい。
新書って、役に立つんだな…。
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【読書メモ】2015年12月 ③ 他2冊

2022-02-21 17:00:56 | 【読書メモ】2015年
<読書メモ 2015年12月 ③>
カッコ内は、2022年現在の補足コメントです。


『獣たちの庭園』ジェフリー・ディーヴァー
<リンカーン・ライム>シリーズの作者が書いた歴史サスペンス。
ナチスが台頭し始めた1936年のドイツ。
ライムシリーズはそんなに評価してないけど、これは面白い。
訳文もいい。
ポール・シューマンがかっこいい。
こういうタフで職人気質な主人公の物語は、
バッドエンド/グッドエンドどちらも良い感じになるから、
そういう意味でオチが読めなくて、さらにおもしろかった。
遠く離れたアメリカでお金を確保してくれたゴードンは
いい上司である。うらやましい。
ヴィリ・コールとその家族が無事出国できるといいな。
本当に、戦争こわい。


(ナチスが台頭しているドイツ。
 しかもベルリンオリンピックが舞台。
 で、ナチス高官を暗殺するためにアメリカから送り込まれた
 殺し屋が主人公です。
 そりゃハラハラしっぱなしだわ!という設定で、
 おまけにディーヴァーなんだから期待通りハラハラしっぱなしです。
 週刊文春ミステリーベスト10、 このミステリーがすごい!
 どちらも第5位に入った作品(2005))



『大盗禅師』司馬遼太郎
大阪落城から三十年後、
徳川家の転覆を目指す軍学師・由比正雪と
明帝国の復興を目指す鄭成功。
この二人の企てを、浪人・浦安仙八を中心に据えて描いた幻想小説。
本人が全集に入れることを拒否し、長らく刊行されていなかったらしい。
主人公の仙八がまた、茫洋とした人なんだけど、
中国にいる間だけ生き生きと活躍している。
そして大盗禅師はあまり出てこない。活躍もしない。
なんか、変な小説だなあと思いつつ、意外と面白く読めた。
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世界史本の年表

2022-02-18 14:30:48 | 日記
ここしばらくで読んだ世界史系の本を年表にまとめてみた。








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