思惟石

懈怠石のパスワード忘れたので改めて開設しました。

『エディアカラ紀・カンブリア紀の生物』 図鑑かエッセイか博物本か

2023-04-26 15:18:39 | 日記
『エディアカラ紀・カンブリア紀の生物』
土屋健

古代生物の化石とイラストと解説がたっぷり詰まった
おもしろ生物本です。
ジャンルとしては図鑑かエッセイか博物本か?
何はともあれ読みやすい本。

生命の始まりとして有名なのが
カンブリア紀(5億4100万年前〜4億8500万年前)。
で、その前にも生物群がいたらしい。

というのが冒頭。
え?そうなの?!
って感じで、世の中に疎い私はガッツリつかまれましたね!
(えらそう)

新たに設定されたのが
エディアカラ紀(6億3500万年前〜5億4100万年前)。
初耳だ〜知らなかった〜。
オーストラリアのエディアカラ丘陵で発見されたので
その名前になったそうです。

続くカンブリア紀の生物群で有名なのは、
カナダのバージェス頁岩(けつがん)と、
中国の澄江(チェンジャン)。

三葉虫ってそういう生物の名前かと思っていたのだけど、
1万種類以上もバリエーションがある生物種の分類群の名称らしい。
ほええ。

こちらの本は<生物ミステリー>シリーズの一冊目。
化石写真やイラストがたっぷり。
文章も読みやすい。
このあともオルドビス紀シルル紀デボン紀石炭紀ペルム紀三畳紀
と続いて刊行されているらしい。

すごいシリーズだなあ。
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『名画の謎 ギリシャ神話篇』 ギリシャの神々どうかしてるぜ

2023-04-25 15:57:34 | 日記
『名画の謎 ギリシャ神話篇』
中野京子

<名画の謎>シリーズの文庫化第一弾。
雑誌『オール讀物』に連載していたものを再編集した本。
そういえば新約・旧約聖書篇も我が家のどこかにあったはず…。

それはさておき、ギリシャ神話は紀元前発祥なので、
当然、キリスト教以前が舞台だし
キリスト教的価値観(聖母的な女性像とか)は無い、
という中野先生の冒頭の説明。

めちゃくちゃ当然のことなのに、めちゃくちゃ目鱗だった。
さすが中野先生!!
ギリシャ神話でもリンゴのアイコンはよく登場するけれど、
エデンの園とごっちゃに考えるのは違うんだな。
とか。

ふわふわしたままだった知識が
キレイに磨かれる感じがする。
ありがたい。

以下メモ

・ゼウスのクズエピソードと好色エピソードはやばい。
 正妻ヘラの嫉妬エピソードもやばいし、
 愛欲の女神ヴィーナスや月の女神ディアナ(アルテミス)もやばい。
 ギリシャ神は全員やばい。

・アトリビュート:人物を特定するための小物
ゼウスは「鷲」「雷」「蠍(ギリシャ語のMが雷を表す)」
ヘラは「孔雀」

・トロイア戦争の発端は、3美神(ヘラ、ヴィーナス、ミネルヴァ=アテナ)
 が「最も美しき者へ」リンゴ争奪戦が原因。やばい。
 トロイア王の息子パリスが有名な「パリスの審判」で
 人間界イチの美女ヘレネを約束したヴィーナスにリンゴを手渡したせいで
トロイアVSギリシャ戦争になる。なんだそれ。

・パンドラはゼウスが人類を罰するためにつくった
 人類最初の女。なんだそれ。
 鍛治の神ウルカヌスが泥でこねた女体にゼウスが生命を吹きこんだ。
 アダムの肋骨からイブがつくられた話しとごっちゃになりがち〜。

・ギリシャ神話の典拠のひとつは紀元前700年頃に
ヘシオドスが書いた『神統記』。
 ギリシャ人、この頃から物語を紡いでいたのか。やばい。

・ピグマリオンはキプロス島の王様で自分が彫った彫刻に恋した人。
 ピグマリオン効果は教育心理学の言葉で、教師の期待度が高ければ
 生徒もそれに応えるというもの。
 神話の内容とちがくない?

・ヘルメスは神々の伝令役(パシリ)。
 商業、蓄財の他に泥棒、詐欺師、博打の神でもある。
 高級ブランドのイメージの真逆だった。マジか。

・ギリシャ神話は不条理に死ぬし、なぜか花になりがち。
 ヴィーナスがベタ惚れした人間アドニスは軍神マルスに殺されて
 アネモネの花になる。
アポロンの恋人ヒュアキントスはスポーツ中の事故で亡くなり
 ヒヤシンスになる。
 ナルキッソスはナルシシズムの発露から水仙になる。
 (水辺で俯きがちに咲くのは水面の我が身を見るため)

・ギリシャ神話とギリシャの神々はどうかしてる。
 めちゃくちゃおもしろい。
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『聖の青春』 ムネアツだし胸が苦しくなるし読んだほうがいい

2023-04-24 15:49:27 | 日記
『聖の青春』
大崎善生

重病を抱え29歳の若さで亡くなった棋士・村山聖(さとし)の
一生を描いたノンフィクション。

ネフローゼという腎臓の病気で、
村山は小学校時代のほとんどを療養所の寮で暮らす。
こども時代に家族と離れて闘病し続けるのは
本当に大変だと思います。
考えると胸が苦しくなる。

その後、中学生になりプロ棋士を目指すと、
単身大阪に出て師匠・森信雄宅に居候する。

おお!
療養所からいきなり独身三十路男の家か?!
ずいぶんとハードな生活始めたな!!大丈夫か?!

私は勝手にハラハラしたけど
(毎食外食だし、麻雀のお供するし、師弟そろって風呂も歯磨きも嫌いだし)
仲睦まじい師弟関係が築かれていき
将棋を通じて交友範囲も世界も広がっている様子を見ると
また胸が苦しくなる。

一冊通じてずっと胸が苦しいんですけど。
というムネアツな本です。
みんな読んだ方がいい。

この作品の著者は将棋雑誌の編集者だったそうです。
将棋会館にも詰めていて日ごろから棋士と交流があるし、
村山や師匠の森信雄とも直接親交があった人物。
なので、奨励会からプロ棋士になった経緯や、
将棋を通じての人間模様などが生き生きと描かれています。

同期たちとの学びや遊び、喧嘩の様子。
そして病気を抱えながらの棋士生活のこと。
試合で負けたあとは熱を出して寝込むことが多いとか、
将棋会館まで歩いていけない状態でも、
数十時間に及ぶ勝負から離脱しない様子など。
読んでいて心を揺さぶられるシーンが多いこと多いこと!

とにかく将棋に対しての熱量がすごい。
文字通り命を削りながら取り組んでいる様は手に汗握るというか。
陳腐なこと言っちゃうけど、ドラマよりドラマチックです。

村山はいわゆる羽生世代。
阪神大震災直後の羽生対谷川戦(さすがに有名なので私でも知っている)
の描写もある。
涙なしには読めないし、めちゃくちゃ胸が熱くなる。
そしてずっと胸が苦しい。
読め!!

実はこの本、ずっと積読だったんですよ。
タイトルと表紙で、ちょっと、「泣かせにくる系」の
あざといヤツかな?と疑ってしまって。
数年間読まなかった自分に説教したいですね!
積むな!!

ちなみに、読み始めてすぐ画像検索してみたんですが。
検索後の第一声は「二階堂くん!」でした。
『3月のライオン』の熱い漢(おとこ)のモデルらしいんですね。
将棋好きの界隈では有名なのかな?

何はともあれ、読んだ方が良い。
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『中世シチリア王国』 特産品はフリードリッヒ2世とマフィア

2023-04-21 18:16:44 | 日記
『中世シチリア王国』
高山博
最近、読みまくっている講談社現代新書
(表紙と栞がかわいい)。

シチリアは、イタリアの先っちょの方、
地中海に浮かぶそこそこ大きい島ですね。
(ザ・地理に疎い人の説明だ!)

ヨーロッパ、ビザンツ、イスラムの交易点でもあり
文化的にも商業的にも独特の交わり方をしている島。

ゴッドファーザーの舞台としても有名らしい。
なんとなく、歴史も独特だけど
現代においてもイタリア内で独特の位置にいるイメージ。

塩野七生『皇帝フリードリッヒ二世の生涯』の
主人公フリードリッヒ2世は、
母系からシチリア王を継ぎました。
時代に対して開明的すぎた王を育んだ島ということで、
その成り立ちに興味を持ったのでした。

そもそもフランスの片田舎のノルマン人が
なぜにシチリア島に来て王様になったのよ?
という意味不明な歴史の挙動が
とてもとてもよくわかりました。
同時期にイギリスも征服してるし
(ノルマン・コンクエスト)、
ノルマン人つよつよ〜。

なかなか勉強になるし、読みやすい文章。

とはいえ、名前がラテン読みなのは、なぜ〜?
フレデリクって誰〜?
と思ったら、フリードリッヒ2世のことだった。
名前だけ、読みにくいっす〜
(しかし巻末の各国語表示一覧はありがたい!)。
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『美術品でたどる マリー・アントワネットの生涯』

2023-04-20 16:41:27 | 日記
『美術品でたどる マリー・アントワネットの生涯』
中野京子

文庫本なのに、絵画のみならず、
彫刻やアントワネットが愛用していた茶器等、
図版が多彩で楽しい一冊。

この本は、
ヴェルサイユ宮殿が企画・監修したという
『マリー・アントワネット展』開催記念出版本です。
NHK出版新書。

なるほど、展覧会に即して編集されたから
図版も豊富なのか。ありがたし。

私はベルバラ世代であり、
中野京子ファンでもあるので、
マリー・アントワネット界隈はすでに履修済みよ!
と思いつつ、
改めて当時のオーストリアとフランスの関係を踏まえながら
一通り読んでみると、やっぱりおもしろい。

とはいえラスト(特に王太子のかわいそうな扱い)は
すでに知っているがゆえに読むのツライなあ。

それはさておき、図版が多くて楽しい。
そしてお得な文庫である。
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